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乗り物

 無限収納の中には、明らかにゴミにしか見えない物も数多く入っている。

 鉄屑、腐った食べ物、何かの破片に謎の物体。

 どれが大事でどれが不必要なのか判別のつかないバルパは一応全部取っておいてはいるが、基本的に乱雑としている状態を好まない彼としては若干微妙には思っていたのである。

 思考によってある程度ソートがなされるために煩雑さのようなものはないのだが、どうせならばこの際に色々と見てみるのはありかもしれない。

 

 そう考えて色々なものを取り出しては、それがどんな物なのかを見極めていくことにする。

 まず腐った食べ物、これには一見するとなんの必要性もないように見える。

 試しに十個ほど取り出し、もしかしたらなんらかの魔力的な作用でもあるのかと思い検分を行った。だが彼の予想は外れ、皆すべてまごう事なき廃棄物でしかなかった。

 これはゴミだなと察し、適当に腐敗した食べ物は全て道端に捨てていった。その際に火の魔撃で焼くと、生物が嗅いではいけないような臭いがして少し戻しそうになったのはここだけの秘密である。

 もしかしたらスウィフトは、片付けができないタイプの人間だったのかもしれないな。

 バルパはまた無限収納の中の、要らなそうな物を取り出していく。

 食料以外に明らかにいらないと思ったのは、なんの効果もついていない装身具の数々だった。見た目だけきらびやかで宝石が使われていても、拳一つで壊れるものに興味が持てるはずもない。

 そういえばミーナ達が見た目がどうのこうの言っていたからこれは上げよう。

 適当に宝石や貴金属の類を収納箱に入れて、別個保管していく。

 それが終わると次は、今の自分には要らない装備を見ていった。

 一度どこか、出来れば魔物の領域の中で必要としている者達に売った方がいいかもしれない。

 そして装備を見終えてもまだまだ物資は大量である。

 小説から図鑑まで色々取り揃えてある本の数々はまだいいのだが、一見すると何に使うかわからないものが彼にとっての曲者だった。

 この世界には、魔物も人間も、信じられないほどの種類がある。本当に一つの大陸にこんなに多くの者達が存在していていいのだろうかと疑問に思うほどの数である。

 その中にはエルフやドワーフ達のような、一見すると価値のなさそうな物がなければ死んでしまうような物もいるのだ。

 そう考えるといくら無価値そうに見えても、捨てるのは躊躇われる。

 もう少し、なんとかしといてくれよ。バルパはそう思えずにはいられなかった。


 彼が色々と見ている中で、幾つか気になったものがあった。

 一度足音を立てずに外へ出て、魔力感知で人目のない場所を探してから腰を落ち着ける。

 

 無限収納には、実質的な積載量の上限がない。ドラゴンの死骸だろうといくらでも入るし、入れようと思えばもっと大きな物も入っている。

 バルパは大きい順に中身をソートして、幾つか取り出してみることにした。

 まず一つ目、なんなのかわかるものを取り出してみる。

 ズズゥンという地響きと共に、バルパの身体の何十倍もの体積のある船が出現した。

 帆があり、マストがあるが、それがなんのためのものなのかはわからない。

 

「これが海の上を行くために必要な物なのか」


 船というものの存在だけは知っていたバルパは、好奇心に駆られて中へと入っていった。


 基本的に大した物はなかったが、何十人という人間が漕ぐオールが至る所に配置されており、船を動かすのは大変なのだということがわかる。

 海を行くという経験をこれからすることになるかは甚だ疑問なところではある。

 海の向こうには新大陸が存在している、などという噂話を聞いたことはあるが、下手に戻ってこれなくなるほど陸から離れるつもりは、バルパにはなかった。

 

 まず一つ目に船の検分を終え、時間を確認する。日はまだ上っておらず、時計は午前二時を指していた。まだ時間がある、もう少しは大丈夫だろう。

 バルパは次のその船よりもでかい、謎の物体を取り出した。


「これは…………新種のドラゴン、か?」


 白い翼を持ち、鳥のような形を取る謎の物体。

 魔力感知には引っ掛からず、そもそも状態から鑑みるに生き物ですらない不可思議な物。


「飛行機……と言うのだったな」


 無限収納が示したその名を、バルパは小さく呟いた。

 もちろん彼の言葉に反応することもなく、その鉄の鳥は沈黙を貫く。

 周囲には静寂が満ち、バルパが飛行機の窓ガラスを凝視する時間が続く。

 

「……入ってみるか」


 物は試しだとばかりに、バルパはその謎の生き物を模した物体の内部へと入っていくことにした。

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