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界境の博物誌  作者: キミタン
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倫子の毎日

「俺のは界境の守護者のヌル。

で、君は、三宅倫子(みやけりんこ)だよね?」

銀の狼の質問に頷く。

「えっと。。。三宅倫子。39歳と11ヶ月と。。。39歳って若いの?」

「そんなこと、ないでしょ!」

戸惑いや混乱の中だったが、とっさに答えてしまった。


そう、そんなことない。

大学を卒業して、憧れだったシステム開発業界へ入った。

パソコンに前でスマートに仕事する。

横文字ばかりの素人には分からない単語を話しながら、最先端の業界の1人になるのが夢だった。

入ってみれば、残業・休日出勤・徹夜のカロリー消化のない肉体労働だった。

それでも最初は楽しかった。

プログラミングをしていたときは、ある種のもの作りをしている気分でコーディングをしていた。

よりシンプルで見易く汎用性のあるソースを作り上げることに熱中した。

その次に、システム設計を担当し、ますます仕事が面白くなった。

結婚や出産を理由にやめていく友達のなか、世間でいうSEをめざして頑張った。

いいユーザーと出会えたことあり、ある程度順調だった時期もあるが。

でも、いつからだろうか。

小規模のプロジェクトのリーダーを任させた時期は仕事を生き甲斐に頑張ろうと思っていた。

頑張れば頑張るだけ責任が増え、今では3プロジェクトのリーダー。

下に5人のサブリーダーがサポートしてくれているが、総勢200名の責任が肩にのしかかってくる。

おまけにメンバーから『姉御』と陰で呼ばれて煙たがられている。

40歳を目前に、いま後悔の毎日だ。

27歳の時の彼氏に、結婚をほのめかされてが、仕事が楽しいアピールをした。

彼氏は離れていき別の人と結婚し、今では二人の娘の父親だ。

32歳の時、出来心で妻帯者に手をだした。

思いがけず相手が本気になり、相手が離婚する準備を始めた。

急に良心の呵責を感じ、転職と引っ越しをして逃げた。

まぁ、転職は予定のうちだったが。

同窓会で子供と旦那や姑の話で盛り上がる友達は、キラキラして見える。

こっちは、徹夜とユーザーを相手にした接待の毎日。

リーダーとして管理業務が仕事のメインとなり、最近プログラミングや設計というもの作りから離れている。

あの時、彼の手をとっていたら。

いや、その前にこの業界に入らなかったら。

と、眠るまえに頭に浮かぶ。

将来に楽しさを感じられなくなっている。

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