21 幕間 モノローグ
二郎が邸に戻ると、帰りを待っていたみたいに、めぐみが玄関の階段の三段目に座り込んでいた。
「遅かったわね」めぐみが言った。
「衣装もちなもんで、手間取っちゃって」二郎が言う。
「のんきなものね」めぐみはいらついたように二郎を見た。「それで、あの刑事になにを聞かれたの?」
二郎が大まかにそのことを話すと、めぐみは辛辣に言った。
「あの刑事には用心したほうがいいわよ。世間話みたいに話しかけてきて、手がかりを引き出そうとするから」
「なんのことだい?」
「だからわたしは忠告してあげているの。あなたが一番よく知っているでしょう」
「さっぱりわかんないけど」
「もういいわ。とにかくあの刑事には用心して、見た目は埴輪の愛玩犬だけど、ほんとうはキツネ狩りの猟犬よ。下手したら穴に追いつめられてしまうわよ」
めぐみはそれだけ言うと、階段から立ち上がり、リビングのほうへ歩いていった。
同じころ。
亜紀代は、グラビアの一件をどうするか迷っていた。刑事の口から伝わるぐらいなら、自分から話したほうが、まだましなのではないだろうか。いや、その前に――あの刑事はわたしの話を信じただろうか。
一郎は椅子にもたれかかり、ひとり考え込んでいた。自分はミスを犯したのか。しかしああしなければ……。そうとも俺が間違えるはずがない。あれでよかったんだ。
優子は、写真立てを手に取って見ながら思った。あの刑事は気づいているのだろうか。それとも、ただわたしが気をまわしすぎているだけか。
犯人は思った。少しばかり、しゃべりすぎたのではないか……。




