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異世界英雄は帰りたい  作者: テト
一章:叛逆の英雄、異世界に飛ぶ
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十一話 便利な黒うさぎ

ギリギリセーフ?

しかも短いですね、すみません…

 






「おー…おっきいねぇ。」


 馬車で冒険者ギルドを出てからでてしばらく走ると、大きな建物の前で止まった。どうやらここがルード商会のようだ。おおよそ商店とは思えないほどの規模の建物で、アデリーナは珍しくあっけに取られている。


「俺様や従業員達の住居も兼ねているからな、全てが売り場というわけではないぞ。」

「それでもだよ、正直この規模の建物は見たことないなぁ。さすがはこの国を二分する商会ってことか。」

「そういうことだ。応接室まで案内させる、そこで少し待っていろ。ラディス、案内してやってくれ。」

「はいよ。んじゃ、ついてきてくれ。」


 表の入り口を通り過ぎて従業員用の入り口から入ると、ザルドはアデリーナ達とは別方向に歩いていった。ラディスはアデリーナ達の先頭に立ってすぐ近くの階段をのぼりはじめた。


「しかし、あんなに強いとは思わなかったな。あの、パッチーだったか?ギルドに怒られるの覚悟で炎剣使って特攻したのに、結局貸し出しの剣が溶けただけで終わっちまったよ。」

「まぁパッチーは特別製だから。私としては、最初から束縛魔術を使う気でいたから時間を稼げれば良しって思ってたし。」

「そうだよ、アレ、なんなんだ?込められた魔力が大したことなかったから最初は放置してたが、だんだん嫌な予感がしてきてだな…」

「あれは魔方陣だな。地面とかに直接書かなければならず、時間もかかることから実戦ではほとんど使われないものだが、なるほど。確実に時間を稼げれば運用もできるのか?」

「いや、普通は使わないよ。特にその場で書くなんてことはしないね。そんなことするくらいなら詠唱したほうが速いし。使うなら、使う魔術を決めておいて、身につけておくとかね。今回は魔力を温存したかったから使っただけ。魔方陣は詠唱より魔力消費少ないからね。」


 ラディスは魔方陣の存在を知らなかったが、支部長は知っていたようだ。支部長は運用方法を考えたが、魔方陣を使った本人であるアデリーナがその不便さを語る。


「はじめから書いておくにしても、複雑な魔術にはそれを書くのに充分な面積が必要なんだよね。図形も複雑で形を間違えちゃうと発動しないし、結構面倒臭いんだよ。まぁできて身体強化の魔術を盾の裏とかローブとかに書いておくくらいかな?」

「それではあまり意味がないな。身体強化の魔術は詠唱無しでも発動するからな…メリットがあるとしたら必要な魔力量を減らせることくらいか?」

「あとは慣れれば意識するだけで発動するから、インパクトの瞬間だけ使うとかね。あ、あと魔方陣は普通の金属と相性が悪いから、布に書くのがオススメだよ。」

「魔物の素材ならいけるか?でも破けたら効果なくなるんだろ?うぅむ、便利そうで微妙に使いづらいな…お、ここだよ。」


 応接室の扉は細かい金色の細工や彫刻が施されていてとても美しい。扉を開くと、部屋の中心に一目で値打ちものだとわかる大きなテーブルが置いてあるのが目に入る。その両脇には座り心地の良さそうなソファーが置いてあり、そこに座るように言われた。


「おぉふかふかだ。」

「あ、アデリーナさん、あんまり椅子で遊ばないでください、壊れたらどうするんですか…」


 ソファーをポンポンと叩いているアデリーナをセラが諌める。そのとき応接室の扉が開き、ザルドが入ってきた。


「その程度では壊れないから安心しろ。ん?タマモ殿は座らないのか?」

「私はお嬢様の従者ですので、万一の事態に備えて座るわけにはいかないのです。」

「なるほど、これは失礼した。おいラディス、お前も座ってないで見習ったらどうだ。」

「いやいや旦那、俺はさっきのアデリーナとの決闘で疲れたから座ってただけでな?旦那が来たら立とうと思ってたんだよ。」

「ふん、どうだかな。まぁ、それはともかくとして、早速契約の話をしようではないか。」


 ザルドはそう言って懐から畳んだ紙を取り出し、テーブルの上に広げた。


「これは魔導契約書だ。この契約書に書かれたことは絶対で、破ればそれに応じた呪いが契約者を襲う。呪いの強さによっては死ぬこともある。今回は契約書に正当性を持たせるためにも、この決闘の審判を受け持ってくれたジルベルト殿に来て頂いた。何かおかしな点があれば指摘してもらいたい。」

「謹んで引き受けよう。」

「では、話を詰めていこう。まずは支援金のことだがーーーー」








「出尽くしたか?」

「ま、こんなもんでしょ。契約書の期限はとりあえず1年になってるし、ダメそうだったらそのときに更新するか、支部長さんに言えばいいんでしょ?」

「ああ。この契約書の責任者は俺となっているから、何か一方のみに起こる重大な不都合があれば、協議次第で解約することもできる。」

「ではもう一度読み上げるぞ。


 ルード商会は冒険者アデリーナに以下の援助をする。


 ・当該冒険者に30日に一度、支援金として金貨を最大20枚を支給する。

 ・当該冒険者は、ルード商会で物を買うなど、ルード商会の系列店を利用する際、最大半額までの割引を受けることができる。

 ・当該冒険者はザルド・ルードからの指名依頼を優先的に受けることとする。なお、当該冒険者はこれを破棄することもできるが、その場合、支援を減少させることとする。

 ・当該冒険者はルード商会へ様々な素材を融通してもらうことができる。ただしこの場合、正規の価格を支払うこととする。

 ・当該冒険者はーーーー






 なお、上記の支援は当該冒険者のランクが上がるごとに上限を上げることとする。


 以上をもって契約書とする。この契約書の期限は世界歴2446年炎の月闇の週3日から、世界歴2447年炎の月闇の週2日までとする。この契約書の責任者はイージア冒険者ギルド支部長・ジルベルトとし、有事の際の全責任を負う。



 以上だ。何か不審な点はあるか?」

「ないよー。」

「では、契約書の本体は俺が預かっておく。それぞれに写しを届けるので、届け先を指定しておいてくれ。」

「はーい。」


 契約書についての話が終わり、アデリーナはふと思いつく。


「そーだ。未来の会長さんにお近づきの印を上げるよ。」

「ほう?まぁ、貰っておこうか。」


 アデリーナはポーチの中(のグラちゃんの口の中)に手を入れ、黒い手袋と黒いウサギの人形を取り出した。


「これは手袋をつけている人が自由に動かせる人形だよ。さらに、使い慣れれば人形と感覚を同調させることもできる優れもの。小さいウサギの人形だから、色んなところに忍ばせられるしね。私はまだ持ってるし、一個あげるね。」

「…おい、《古代遺物アーティファクト》級の魔導具じゃないのか、これ。」

「まぁ詳しいことは気にしなーい!あ、これ、この場だけの秘密だからね。」

「恐ろしくて話せる訳ないだろう…」


 若干の不穏を残しつつも、無事契約についての協議は終了したのだった。





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