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異世界英雄は帰りたい  作者: テト
一章:叛逆の英雄、異世界に飛ぶ
1/84

プロローグ

 





「…準備は出来たか?なら作戦開始だ。私を除いた8番隊の全員は本隊に合流して戦線の維持。私は他の隊長陣と一緒にあのクソ神どもを叩いてくる。じゃ、解散だ。お前らも気張っていけよ。」


 全体的に白黒の服を着てフードを被った少女が、目の前にいる大勢の大人に命令するように喋っている。しかし、そのことについて疑問に思っている人は誰もいないようだ。



  神暦2877年、人間達と神々は戦争を起こしていた。いや、正確にはもう終わりかけているが。戦争が始まってから5年、主要な神々は大部分が打ち取られ、残すところは主神である創造神とその腹心の最上級神数柱、それに天使達だけである。


  いつの頃からか、神々は人間達のことをただ自分達が退屈を紛らわすためだけの道具と見做すようになった。そして、神託という形で人々を諭し、人間同士で争わせては、その勝敗を賭けの対象にして遊んでいたのだ。

  当然、そのことに気づく人もいた。しかし、そういった頭のいい人達は常に配下の天使達に見張られ、動こうとすると消されてきた。そのため、神々の暴挙は止められることなく長い時間続けられてきた。


「隊長も、どうかご武運を。」

「はっ、誰に向かってものを言ってるのよ。」


  しかし、遂に天使達の監視を掻い潜り、ばれたときも速やかに天使達を排除できるだけの実力を持った英雄が現れた。その人は50年という歳月をかけて仲間を集め、人々に真実を伝え、人間対神という構図を作り上げた。


 そしてその英雄、テトラを団長とし、その下に8人の隊長陣を敷いて神々に叛逆した対神戦闘集団、その名もーーー


「私は"英雄団ラグナ"の8番隊隊長、アデリーナよ。カミサマなんて速攻でボコボコにしてやるんだから、お前らも人のこと心配する前に自分のこと考えな。」


 "英雄団ラグナ"である。



 ーーーーーーーーーーー


 神域



「そらぁッ!タマモ、やれ!」

「照射します…!」

「ぐぉぉ…我、は、まだ」

「往生際が悪いんだよっ…と!」


 最後に何かをさせる隙もなくアデリーナは最上級神の一柱を倒した。だが、


「申し訳ございません、アデリーナ様。私どもは一度離脱させていただきます…」


 今の戦いで配下達は離脱を強いられるほどのダメージを負ってしまった。


「あぁそう…ま、仕方ない。もともとお前達に最上級神はちょっと荷が重かったしね。私は進んで団長と合流するから、今は回復に専念しときなよ。」

「回復が終わり次第、すぐに戻ります。」

「そんなに焦らなくてもいいよ。どうせ創造神との戦いでは、お前らなんて周りのザコどもを散らすくらいしかできないんだから…って、もういないし。」


 アデリーナが言い終わる前に、配下達は離脱したようだ。


 1人になったアデリーナは、すでに始まっているであろう団長と創造神の戦いに向かって、頭についたウサギ耳を揺らしながら飛んでいった。



 ーーーーーーーーーー



 創造神との戦いは熾烈を極めた。アデリーナが参戦したときには、既に隊長陣もほとんどが離脱しており、今も3番隊長がやられた。


「悪いね、アデリーナ…。あたしはここで一旦離脱するよ。」

「無駄口叩いてるヒマがあるならさっさと離脱して6番隊に回復して貰ってきな!」


 もうこれでこの場にいるラグナメンバーはアデリーナと団長しかいない。アデリーナも創造神に有効打を与えられるほどの力は残っていないので、周囲の大量に湧き出てくる天使達を、団長に近づけさせないように蹴散らしていく。


 しかし、もう大勢は決していた。創造神の、あらゆるものを創り出す能力に対し、団長のあらゆるものを消し去る能力は非常に相性がいい。まわりの天使達はアデリーナが相手をしていて邪魔をできない。団長もそろそろ限界が近いが、それは創造神とて同じことだ。


 そしてーーー


「これで、終わりだぁぁぁぁ!‼︎」

「ぐぁぁ…バ、カな、」

「私達の、勝ちだ!」


 団長の繰り出した黒い渦が、創造神の体を飲み込んだ。




 ーーーーーーーーーー


「長かったけど、これでようやく…」


 消えゆく創造神の体を見て、団長はアデリーナのほうに振り返った。


「うん…やっと平和になるのかな?」

「きっとなるさ。さて、これから忙しくなるぞ?」


 そう言って団長はニヤリと笑った。アデリーナも笑い返そうとし、






「キサマだけでも…道連れにしてくれるわ‼︎‼︎」






 命の欠片を燃やし尽くしてまでも、最後の攻撃をしようとする創造神を見た。


 このとき団長はもうギリギリの状態で、魔力や気力なんてものは欠片もなかったのだが、そんなことは後から気付いたことで。



「あぶないっ‼︎‼︎‼︎ 」



 アデリーナの体はほとんど反射的に動いて、団長を突き飛ばしていた。



「えっ…?」


 呆然としてされるがままに突き飛ばされる団長、そして攻撃の延長線上からいなくなった団長を見て、ホッとした顔のアデリーナは、






「バイバイ、テトラ」






 団長のかわりに、白い光の奔流の中に飲み込まれ、この世界から消滅した。





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