温度
表現できないものを表現してみよう。
それはたった今、僕の中で流れる感情のことである。
例えば、怒り?
いや違うね。
確かに怒りに似た疼きは僕に去来するけれど、きっと怒りではない。
だいいち、僕は何に怒ってるかわからないんだ。
怒る対象がないんじゃ、ね?
じゃ、喜び?
それも違うかな。
喜びは結果じゃないか。僕の感情はまだ過程なんだよ。
何をしたいんじゃないけど、何かしたい。
それが何かすらも表現できてないけどね。
それなら、悲しみ?
そんなバカな!
僕は悲しみなんて知らないよ。今の僕とは合致しないことはわかるけどね。
それにね、僕の気分が悪いなんてことはないんだ。
顔が引きつっちゃってしょうがないんだ。
もしかして、満足?
それも嘘かな。
表現できないんだけどね、満ち足りてないことも表現できるんだよ。
足りない、足りない。何が足りないんだろうね。
そう、何かが足りてないんだよ。
欲望? 渇望?
わからない、わからない。
そうさ、僕は、僕は、満ち足りてない。何が? 何?
知りたいっていうのも、欲望なんだろうね。わからない。
さあ、どうしたもんか?
教えてあげようか。
ああ、頼むよ。どうか、お願い。
消えそうなんだ。いや、もう消えてるのかもしれない。
こいつはね、表現できないくせにすぐいなくなっちゃうんだ。
そしてまた、忘れた頃に戻ってくる。
それはね