第14話 最強の妖怪フーライとの最後の戦い(4)
フーライは、柿五郎に対してとどめを刺すために必殺技を繰り出そうとします。そうはいっても、屋内であることから落雷の必殺技を使うことができません。そのため、フーライが使うことができる必殺技は、もう1つある別の必殺技となります。
「ぐふふふふ! おめえが死に場所を選んだのであれば、思い切り必殺技を食らわせることができるわ」
フーライは、閉じられた引戸の前にいる柿五郎に照準を合わせると、すぐさま両手で時計回りに回し始めました。一方、柿五郎のほうもフーライが使える必殺技は1つしかないことから、これを利用すれば閉まったままの引戸が開くかもしれないと考えています。
「食らえ! おれの凄まじい暴風でおめえはここでおだぶつだぜ! ぐふふふふ!」
「うわわっ! ものすごい風だが、ここで辛抱すれば……」
フーライは、柿五郎に向かって凄まじい暴風を繰り出しました。その暴風に真正面から命中した柿五郎ですが、本人にとってはこのほうがむしろ好都合です。
その判断が柿五郎にとって正しい選択であることが、間もなくこの場ではっきりと分かります。
「それそれそれっ! 暴風の威力がどんなものか、おめえの頭の中でもよく分かるだろ」
「ものすごい風が吹けば吹くほど、閉まったままの引戸だって開けることができるさ」
フーライが暴風を繰り出し続けても、柿五郎は背もたれしている引戸のおかげで後ろへ飛ばされずに済んでいます。
しかし、次の瞬間のことです。柿五郎が背にしている引戸があまりの暴風で、柿五郎もろとも後方へ飛ばされました。
「うわああああっ! うわああああっ!」
後方に飛ばされた柿五郎は、さらに外へ出るための引戸に激突しました。すると、柿五郎が暴風を受けたあおりで強くぶつかったおかげで、開けることが不可能だった引戸がそのまま倒れました。
「うわ~い! 引戸が倒れてそのまま外へ出ることができるぞ!」
柿五郎は、あえてフーライの暴風攻撃を自ら受けることで、二度と開けることができない引戸を次々となぎ倒すことができました。死と隣り合わせという覚悟で臨んだこの試みがうまくいったことに、柿五郎はとりあえずホッとしています。
そのとき、引戸をなぎ倒した先に座敷童子とヤマンバが立っていました。
「座敷童子、ヤマンバ、どうしてここまできたの?」
「柿五郎くん、本当に無事だったのね! 生きていてくれて本当にうれしいよ、ううううっ~」
座敷童子は、柿五郎が無事だったのがうれしくて思わず泣き出しました。柿五郎も、自分の体にへばりついた座敷童子にやさしく接しました。
「柿五郎くん、大丈夫だったの? 柿五郎くんが大きな穴の中に連れて行かれたから心配だったのよ」
座敷童子とヤマンバは、フーライたちに見つからないように後ろからついて行きました。しかし、柿五郎たちがいる部屋へは引戸が全然開かなかったので、柿五郎がどうなっているのかとても心配していたそうです。




