第13話 おねしょで大失敗しちゃった柿五郎くんの受難(1)
「う、う~ん……。あれっ、あれあれっ?」
落雷に打たれてそのまま倒れ込んだ柿五郎が気づいたのは、周囲が暗闇に囲まれたところです。そこには、ろうそくで照らされて薄明るくなっていますが、それでも雷雲に覆われた魔の山の頂上と比べても明らかに暗いことに変わりありません。
「どうしてここにいるんだろう……」
柿五郎は、自分がお布団の中にいるのか不思議でなりませんでした。気絶した自分をここまで運んで布団に寝かせたのが誰なのかも当然ながら分かりません。
そのとき、柿五郎の耳元に何やら不気味な音が聞こえ始めました。
「ポタッ……。ポタッ……。ポタッ……」
「も、もしかして……。ぼくがいるのは洞窟の中ってこと?」
水滴が落ちる音が聞こえる度に、柿五郎は背中が凍りつくように震え出しました。それは、まるで人が立ち入らないであろう洞窟の深いところにいるような感じです。
柿五郎は、こんなところにたった1人だけいることに寂しさを感じたのか、普段よく使うあの言葉を口にしました。
「かあちゃ、かあちゃ……。どこにいるの……。寂しいよう……」
柿五郎は、魔の山へ入ってから一度も言わなかったお母さんがいないことへの寂しさを泣き声で言い出しました。
すると、柿五郎の後ろに、何やら見たことがある人影が現れました。そして、その人影が現れると同時に、今まで暗闇だった周囲も次第に明るくなってきました。
「ここはおれが普段使う部屋だぜ。あの場所で気絶していたおめえをここまでを運んできたんだから、もう少し感謝の言葉がないといけないんじゃないかなあ」
柿五郎の背後に現れたのは、特大の雷を柿五郎に放ったフーライです。フーライは気絶していた柿五郎を自分の部屋まで運んできたことをいいことに、右足を柿五郎の頭を強く押さえつけています。
「ぐふふふふ! どうだったかなあ、お布団でぐっすりと眠った感想は?」
「んぐぐぐぐ……。ぼくをこれからどうするつもりなんだ!」
柿五郎は、フーライの右足で頭を何度も押さえつけられてとても痛々しそうです。しかし、それはこれから始まる受難の序の口に過ぎません。
「どうするつもりって、決まっているだろ! おれがこれをめくればすぐに分かるぞ!」
「うわっ、いきなり何を……」
フーライは、柿五郎のお布団がどうなっているか確認するために、掛け布団を無理やりめくりました。すると、柿五郎は思わず恥ずかしそうな表情を見せています。
「あっ、お布団にでっかいおねしょの大失敗をしちゃった」
柿五郎は、お布団と腹掛けに見事なおねしょの大失敗をしてしまいました。これを見た柿五郎は、大失敗しちゃったことに顔を赤らめています。
「ぐふふふふ! こんな大失敗をおれの前でするとはなあ……。おねしょの大失敗をしたからには、これからおめえに過酷な拷問を加えないといけないなあ」
フーライは、柿五郎がやってしまったおねしょ布団を両手で持つと、柿五郎に対してこれまで以上の過酷な拷問を加えることを宣言しました。




