第12話 魔の山の頂上に待ち受ける最強の妖怪(10)
「今にも雨が降りそうだなあ……。空が急に暗くなってきたし……」
「ぐふふふふ! 暗い雲に覆われたらどうなると思うかな?」
フーライは空全体に暗い雲を引き寄せると、再び人差し指を真上へ指しました。すると、柿五郎の目の前に突如として雷が落とされました。雷が落とされたところは、黒焦げになって白い煙が立っています。
「わわわっ……。い、いきなり雷が落ちてきた……」
「どうだ、おれが空から放った雷の威力は! これはまだまだ序の口にすぎないぞ、ぐふふふふ!」
柿五郎は、いきなり目の前で雷を落とされたことへの恐怖で背筋が震えています。この様子を見たフーライは、自ら放った雷の恐ろしさを誇らしげに言い切りました。
「ぐふふふふ、おれの雷を見ただけでこんなにおびえるとは……。これなら、おめえを始末するのもたやすいものじゃ!」
「ぼ、ぼくは雷なんか恐くないぞ! 恐くないぞ!」
フーライは柿五郎のあまりにも恐がっている様子を見ながら、不気味な笑みを浮かべています。フーライに足元を見られた柿五郎は、雷が恐いのに恐くないと強がる様子で言い返しました。
「そんなに言うなら、おめえには特大の雷を落とさないといけないな! それっ!」
「わわっ! こんなところで雷に当たってたまるか!」
フーライは、特大の雷を柿五郎に向かって落としました。しかし、柿五郎も暗い雲からゴロゴロという雷の前触れというべき音が聞こえてきたので、落雷前に素早く身をかわしました。
そして、柿五郎はフーライに向かって走りながら飛び上がると、強烈な頭突きを何度もフーライの胸元に食らわせました。さらに、握りしめた両手の拳で次々とフーライの胴体に次々と命中しました。
「ぐえっ、ぐええっ……」
フーライはあまりにも凄まじい柿五郎の連続攻撃に、思わずひざをついてしまいました。これを見た柿五郎は、フーライをやっつけるためにさらなる攻撃を仕掛けようと試みようとします。
「ヤマンバから得た力があれば、どんなに恐ろしいお化けであっても平気で持ち上げられるぞ! えいっ! え~いっ!」
「うわわっ! よくもいい気になりやがって……。調子に乗っているのも今のうちだぞ……」
柿五郎はフーライを軽々と持ち上げると、そのまま勢いよく投げ飛ばしました。柿五郎によって投げ飛ばされたフーライですが、そのとき人差し指を暗い雲に向かって指しました。
そして、空に雷鳴が鳴り響いた次の瞬間のことです。
「ゴロゴロ、ピシャアアアアーンッ!」
「うわああああああっ!」
柿五郎は、フーライが放った特大の雷が直撃すると、身動きができないままそのまま倒れ込みました。その落雷の凄まじさは、柿五郎の周囲から白い煙が立っていることからもすぐに分かります。
「柿五郎くん! 柿五郎くん! ここで死ぬなんて……。うえええええ~ん!」
座敷童子はぐったりと倒れたままの柿五郎の姿を見て、大きな声で泣き出しました。しかし、座敷童子の鳴き声が響き渡っても、意識を失った柿五郎の耳に入ることはありません。




