第12話 魔の山の頂上に待ち受ける最強の妖怪(9)
柿五郎はフーライが地面に倒れ込んだのを見ると、急いで手足を縛られているヤマンバのところへ行きました。
「ヤマンバ、すぐに助けてあげるからね! ええ~いっ! えいっ! ええ~いっ!」
「柿五郎くん、私を助けるためにこんなに恐ろしい妖怪たちと戦っているんだね。本当にありがとうね」
柿五郎は、ヤマンバの手足を縛られていた縄を両手で引きちぎりました。ヤマンバは、小さい体で自分を助けてくれた敬太へ感謝の気持ちを伝えました。
そのとき、地面に倒れ込んだはずのフーライは自力で再び立ち上がりました。そして、フーライはすぐさまに反撃しようと、柿五郎が後ろ姿になっているのを見計らいました。
「ぐふふふふ! 間もなく、このおれがこの手でおめえを始末されるのを知らないようだな」
フーライは今のうちに両手で時計回りに回すことで、猛烈な暴風を柿五郎とヤマンバの2人を一気に始末しようとしています。しかし、その動きを柿五郎が察知すると、ヤマンバに大声でこう叫びました。
「ヤマンバ、すぐに逃げて! 大きな穴が開いているところへ早く逃げて!」
「柿五郎くんがそう言うなら、急いでそこへ逃げるわ」
ヤマンバは柿五郎が必死に叫んでいるのを聞くと、すぐに逃げることにしました。これを見たフーライは、柿五郎とヤマンバをまとめて倒すべく、両手からものすごい暴風を繰り出しました。
「わわっ、わわっ! もう同じ手は効かないぞ!」
柿五郎は、後ろから襲ってきたフーライの暴風攻撃を辛うじてかわすことができました。ヤマンバのほうも、巨大な岩石のところにある大きな穴のほうへ逃げることができました。
「よくも、おれの攻撃をかわしやがって……」
「そりゃ! えいっ! えいっ! えいえいっ! えいえ~いッ!」
フーライは、一撃で倒そうとした暴風攻撃をかわされたことに悔しさをにじませています。これを見た柿五郎は、フーライが攻撃しないうちに右足で強烈な飛び蹴りをフーライの胸元に食らわしました。そして、柿五郎は両足でフーライの胴体へ蹴り上げ続けています。
しかし、フーライは柿五郎の攻撃を何度も食らっても平然としています。柿五郎は、何度攻撃してもビクともしないフーライが信じられない様子で見ています。
「何度も蹴り上げてもビクともしない……。どうしてなの?」
「ぐふふふふ! おめえの攻撃はこれで終わりか? ならば、次はこっちから攻撃するぞ!」
フーライは、白い雲に覆われている空の上へ右手の人差し指を指しました。すると、今までの白い雲は次第に暗い雲へ変わって行きました。それは、フーライが放つもう1つの必殺技を柿五郎に食らわすための前触れといえるものです。




