第12話 魔の山の頂上に待ち受ける最強の妖怪(4)
「ヤマンバ、どうしてこんなことに……」
「柿五郎くん、こんな姿で再び会うことになって本当にごめんね。私の前に、いきなりあの白髪の老婆が現れて……」
柿五郎は、縄で縛られて動けないヤマンバの姿をみると、すぐにその場所へ駆け寄りました。これを見たヤマンバは、こんな姿で柿五郎と会うことになったことに思わず涙を流しました。
そして、ヤマンバはどうしてこういう状態になったのかを一部始終話そうとしました。すると、白髪の老婆であるもう1人のヤマンバがそれをさえぎるようにこう言い放ちました。
「そうよ! あたしがこの女を縛り付けたのよ! あたしとは姿が全然違うのに、よくもまあヤマンバと言う名前を名乗れるものだな」
「どうしてそういうことを言うの? 同じヤマンバと言う名前でも、私はあなたみたいな妖怪とは大違いよ! 私のところにやってきた子供は、愛情を持ってやさしく接するの」
同じヤマンバでも、白髪の老婆と若い女の人とでは考え方が180度異なっています。女性であろうと子供であろうと、人間を見つけたら食い殺すのが白髪の老婆の目的です。一方、若い女の人は山道に迷った子供を自分の家に連れて行くと、やさしい表情で愛情を持って接します。
「まあいいわ。それよりも、おめえにはあたしの顔におしっこ噴水を命中させたことを忘れてないだろうな」
「それって、ぼくが見た夢の中でのこと?」
「よく覚えているな。おめえはおっぱいをたくさん飲んだ挙げ句に、見事なまでにこのようなでっかいおねしょをしたそうだな」
白髪の老婆は、柿五郎に夜中に見た夢の内容について恐ろしい顔つきで迫るように言いました。柿五郎がその夢の内容にうなづくと、白髪の老婆はフーライが持っている柿五郎のおねしょ布団に描かれた証拠を右手の人差し指で指しました。
すると、柿五郎は白髪の老婆が恐ろしい顔つきでおねしょの証拠を突きつけられると、すぐさまに大きな声で反論しました。
「おねしょで大失敗したって、ぼくはそんなに気にしていないもん!」
「そんなことを言うなら、この場でおめえを頭から噛みついてやるぞ」
柿五郎は、おねしょを毎日のように大失敗しても気にすることはありません。すると、白髪の老婆は完全に怒り狂うと、いきなり柿五郎の頭から噛みつこうとしました。
「うわわっ、わわわっ! いきなり何をするんだ!」
「おめえが言わなくても、この大きな口でおめえを食いちぎってやるのさ、フォフォフォフォ……」




