第12話 魔の山の頂上に待ち受ける最強の妖怪(2)
「もうすぐ山のてっぺんだけど、周りが霧に覆われて不気味な感じがするなあ……」
「大丈夫だって! 柿五郎くんは、ヤマンバのおっぱいをいっぱい飲んで凄まじい力が出せるようになったんでしょ」
魔の山の頂上に近づくにつれて、柿五郎と座敷童子が歩いている山道にも霧が立ち込めてきました。それは、まるで妖怪の出現を予感させるかのような不気味さを漂わせています。
それでも、柿五郎にはヤマンバから得た凄まじい力を持っています。その凄まじい力があれば、強い力を持った妖怪相手であっても十分に倒すことができます。あとは、柿五郎が妖怪を恐がらずに勇気を持って立ち向かえるかどうかです。
そうするうちに、柿五郎たちは魔の山の頂上へたどり着きました。そこには、物凄く巨大な岩石に大きな穴を開けた入口らしきものがあります。
「ここには妖怪や幽霊がいないということは、あの入口の中に……」
柿五郎は頂上の周りに妖怪らしきものが見当たらないことから、すぐに入口らしきものがある大きな穴のところへ向かおうとしました。すると、座敷童子は何やら不気味な予感を感じたので、すぐさま柿五郎に注意喚起を行いました。
「柿五郎くん、気をつけて! 目の前、目の前に……」
「目の前にって……。も、もしかして……」
柿五郎が巨大な岩石の大きな穴へ入ろうとしたら、目の前に青白い人魂が次々と現れました。これを見た柿五郎は、ヤマンバの新たな力があることを忘れたのか、人魂から逃れようと頂上の周りを逃げ回っています。
すると、逃げ回っている柿五郎の前に、全身が赤い肌でトラ柄のふんどし1枚だけつけている妖怪が現れました。
「ぐふふふふ! おめえが柿五郎という名前なのか」
「ど、どうして……。ぼくの名前を……」
「おれの名前はフーライ。おめえのことはすでにお見通しだからさ。ぐふふふふ!」
フーライは、柿五郎に対して鋭い目つきでにらみつけています。その迫力に、柿五郎はあまりの恐ろしさに足が震えています。
しかし、フーライは心理的にさらに柿五郎を追い込もうとしています。それは、小さい子供にとって恥ずかしい証拠といえるものです。
「ぐふふふふ! これはだれがやったのか分かるかな?」
「も、もしかして、これって……」
「これは、おめえが見事にやってしまった大きなおねしょのお布団だぜ。これを見て、おめえはどう思うのかな? ぐふふふふ!」
フーライが右手を前に出すと、そこには突然お布団らしきものが現れました。フーライが右手でつかんでいるのは、柿五郎が今日の朝に見事なおねしょをしてしまったお布団です。
フーライは、元気いっぱいのおねしょをしちゃった柿五郎のお布団を見ながら不気味な笑い声を響かせています。それは、柿五郎を精神的に追い詰めようとするフーライの作戦です。




