第11話 お泊りする家の主はヤマンバ(11)
ヤマンバは、柿五郎たちを魔の山の坂道のところまで戻るのを案内するために、自分の家から出て草木の生い茂ったところを歩き始めました。柿五郎と座敷童子も、ヤマンバの後ろをついて行きました。
すると、ヤマンバは魔の山の頂上に現れる妖怪について柿五郎に話し出しました。
「柿五郎くん、魔の山のてっぺんには今までの妖怪と同じように考えたら大間違いだわ。そこには、とてつもなく恐ろしくて強い妖怪がいるのよ」
「とてつもなく恐ろしいって……。恐いよう……」
「大丈夫だって! 柿五郎くんならきっとやっつけることができるわ! だって、私のおっぱいをこんなにたくさん飲んでくれたんだもの」
柿五郎はかなり恐ろしい妖怪の話をヤマンバから聞くと、その恐ろしさから足が震えています。この様子を見たヤマンバは、柿五郎にやさしい言葉で話しかけながら励ましました。
「あれだけ重たそうな石を軽々と持ち上げたし、大きな石を一発で砕けることができるなら、どんなに恐ろしいお化けや幽霊であっても逃げないで戦うことができるよ!」
「柿五郎くん、その心意気があれば大丈夫だよ!」
柿五郎はヤマンバからの励ましを受けると、今まで以上に恐ろしい妖怪が相手であっても堂々と戦うことを決意しました。
そして、ヤマンバは柿五郎たちを魔の山の坂道のところまで連れてくることができました。そのとき、ヤマンバは柿五郎に与えた力について注意すべき点を伝えました。
「私のおっぱいをたくさん飲むことで得られた柿五郎くんの凄まじい力なんだけど、太陽が西に沈んだら効果が無くなるわ」
「えっ? それじゃあ、日が暮れたら元に戻っちゃうの……」
「そのように考えたりしないの! とにかく、自信を持って立ち向かって行けば大丈夫だから!」
柿五郎は、ヤマンバから得られた力に時間制限があることを知って不安になってきました。ヤマンバは、改めて柿五郎に自信を持ってと励ましました。
「ヤマンバ、今までありがとう! ぼくも魔の山のてっぺんにいる恐ろしいお化けをやっつけるよ! そして、かあちゃがどこにいるのか探すからね!」
「柿五郎くんからの知らせを楽しみに待っているからね」
柿五郎はヤマンバへの感謝を述べるとともに、これから向かう魔の山での妖怪と戦うことへの決意を重ねて表明しました。そして、自分のお母さんを探して早く会いたいということも忘れていません。
ヤマンバは柿五郎からの良い知らせを待ちながら、再び自分の家へ向かって戻って行きました。柿五郎は、自分に新しい力を与えてくれたヤマンバのためにも恐ろしい妖怪をやっつけようと、魔の山の頂上へ向かって歩き出しました。




