第11話 お泊りする家の主はヤマンバ(2)
女の人の後をついて行く柿五郎たちですが、今までと違って女の人が自分の家へ案内するということに違和感を感じているようです。
「どこまで行くんだろう……。周りが少しずつ暗くなってきたし、本当にお化けが出そう……」
「柿五郎くん、ぼくがついているから大丈夫だって」
女の人は、魔の山の坂道から分かれた細い道の中へ入って行きました。そこは、けもの道とさほど変わらない足元の悪い通り道です。柿五郎たちは、草木が生い茂っているその通り道を歩き続けながら、女の人の後について行きました。
そして、しばらくすると通り道の行き止まりのところに一軒の農家らしきものがありました。その家の外観は、柿五郎が住んでいる家とさほど変わりません。
「さあ、私の家へ入ってくださいね」
「えっ、家の中へ入ってもいいの?」
「こんなところで遠慮しなくてもいいのよ」
女の人が家の中へ入ってと言われて、柿五郎はちょっと戸惑っています。本来だったら、柿五郎のほうから先に言うのが普通です。しかし、女の人はそんなに遠慮しなくても大丈夫と柿五郎にやさしい声で言いました。
これを聞いた柿五郎たちは、すぐに引戸を開けて家の中へ入りました。そして、土間から囲炉裏のある板の間へ上がりました。
「晩ご飯を用意しますので、ちょっと待ってくださいね」
女の人は、すぐに柿五郎のために晩ご飯を台所から板の間へ持ってきました。それは、大好物であるおイモとスイカとあって、柿五郎は大はしゃぎしながら喜んでいます。
「さあ、遠慮なく食べてくださいね」
「うん! 出されたものは1つも残さずに食べるからね!」
柿五郎は、早速ホクホクのおイモを食べ始めました。柿五郎にとって、いつも主食としておイモを食べているときが一番の楽しみです。今日も、女の人が用意した5個のおイモをほおばるようにして食べることができました。
そして、大好物の1つであるスイカにもかぶりつくと、柿五郎はおいしそうに食べ続けています。女の人も、ご飯を食べ続けている柿五郎をやさしい眼差しで見ています。
柿五郎は、晩ご飯を1つも残さずに全部食べることができました。しかし、柿五郎はもう1つ忘れていないことがあります。
「ちょっとこっちへおいで」
女の人はやさしい声で呼ぶと、柿五郎もすぐに女の人の前へ行きました。すると、柿五郎はいつも習慣となっているあの言葉を言い出しました。
「おっぱい! おっぱい! おっぱい!」
「ふふふ、きみはどういう名前かな?」
「ぼくは柿五郎という名前で5歳だよ! いつも朝ご飯と晩ご飯のときにおっぱいをたくさん飲んでいるよ!」
女の人から自己紹介を求められると、柿五郎はすぐに自分の名前と年齢を言いました。そして、毎日のようにおっぱいを飲んでいることを女の人に言いました。
「ふふふ、柿五郎くんは腹掛け1枚だけの格好だし、赤ちゃんっぽいところがあるんだね。でも、おっぱいをいっぱい飲んでいるからいつも元気いっぱいなんだね」
女の人は、おっぱいをいつもたくさん飲む柿五郎の元気さに感心すると、すぐに着物の中からおっぱいを出しました。柿五郎は、それを見てすぐにおっぱいを飲み始めました。
「チュパチュパチュパチュパ! チュパチュパチュパチュパ!」
女の人は、柿五郎がおっぱいをおいしそうに飲んでいるのを見ながらやさしく見守っています。




