第11話 お泊りする家の主はヤマンバ(1)
柿五郎と座敷童子は、再び道標のある合流点から魔の山へ向かう坂道へ入って行きました。柿五郎は、何とか妖怪ヒダルマとカラスの大群を撃退することができたことに安堵しています。
「昨日から同じところばかり行ったりきたりしているから、すっかり遅くなったなあ」
「でも、柿五郎くんは自分から勇気を出して立ち向かってやっつけたでしょ」
「えへへ、ヒダルマをやっつけた後で尻餅をついておもらしの大失敗をしちゃったけどね」
2人は、目の前に現れたヒダルマと戦ったときのことを振り返りながら多くの木々が茂った坂道を歩き続けています。しかし、森の中からかすかに見える空は少し赤みを帯びてきました。
「もう夕方になってきたね。この近くに家があればいいけど……」
「でも、魔の山へ少しずつ近づくにつれて不気味になっているし」
柿五郎は、暗くなる前に泊まることができる家を探そうとしています。しかし、周りを見渡しても家らしきものは見当たりません。
「困ったなあ。このままでは夜中にお化けや幽霊が出る中を歩かないといけないかも……」
「柿五郎くん、そんなに恐がらなくても大丈夫だって!」
柿五郎は真夜中に山道を歩くことを想像すると、あまりの恐怖に体が震えています。勇気を出して妖怪たちに立ち向かって行く柿五郎ですが、妖怪や幽霊を見ただけで恐がってしまうのは相変わらずのことです。座敷童子は、そんな柿五郎の様子を見て改めて励ましています。
そのとき、目の前にやさしそうな女の人が立っていました。それは、まるで柿五郎のお母さんと同じような雰囲気に包まれている感じがしました。
そして、女の人は泊まるところがない柿五郎たちを呼び止めました。
「今晩泊まるところがないのであれば、私の家へ案内しますからぜひきてくださいね」
「それじゃあ、その家へ泊ってもいいの?」
とりあえず、柿五郎たちは泊まる場所が見つかったので一安心です。柿五郎たちは、女の人の案内に従ってついて行くことにしました。




