第9話 妖怪トウマワリ再び現わる(5)
「カァ~! カァ~! カァ~! バサバサバサバサッ!」
「わしの体を突くな! さっさと離れてくれ! いてててっ、いてててててっ……」
カラスの大群は、相変わらずトウマワリの体にくちばしで何度も突いています。トウマワリは、両手でカラスを追い返そうとしていますが、なかなかうまくいきません。
すると、柿五郎は思い切ってトウマワリに向かって走り出しました。柿五郎は、目の前の妖怪やカラスがどんなに恐くても逃げることなく立ち向かっていきます。
「えいっ! えいっ! えいえいっ!」
柿五郎は、トウマワリの体に何度も体当たりを繰り返しています。しかし、トウマワリは柿五郎の体当たり攻撃を食らってもびくともしまあせん。
「おめえごときがわしを倒せると思ったら……。わわわっ! カラスめ、何度も何度もくちばしで突くな!」
「うわわっ! いててててっ……」
トウマワリは、柿五郎の攻撃はこんなものかとたかをくくっていました。しかし、もう1つの敵であるカラスの大群はトウマワリへの突き攻撃をやめようとしません。
そして、カラスが襲いかかるのはトウマワリだけではありません。今度は、柿五郎のほうにもカラスが再び襲ってきました。
「カァ~! カァ~!」「カァカァ~! バサバサバサッ!」
「いててっ……。でも、こんなところで恐がっていたら魔の山へ向かう坂道へ戻れないし……」
柿五郎は、カラスからの攻撃に痛々しい表情を見せますが、ここで恐がっていたらいつまでたっても魔の山へ行くことができません。
「えいえいっ! えいえいっ! えいえいっ! えいえいっ!」
「まだ分からんのか、おめえごときに……。うわっ、うわっ、うわあああっ!」
柿五郎はカラスの大群に襲われながらも、トウマワリへの体当たり攻撃を何度も続けています。同じ攻撃を繰り返す柿五郎に、トウマワリは相変わらず薄ら笑いを浮かべながら見下していました。
しかし、トウマワリは柿五郎の強い体当たりを続けざまに食らったことで後ろのほうへ倒れそうになりました。トウマワリは後ろへ倒れるのを必死に食い止めようとしましたが、ついに支えきれずにそのまま後方へ倒れてしまいました。
「トウマワリのあの長い爪でとどめを刺すことができれば……」
柿五郎は、倒れ込んだトウマワリが気絶している隙にその右手を持ち上げようとします。まだ5歳児の柿五郎にとって、トウマワリの右手は持ち上げるのに少し重たそうです。それでも、何とか持ち上げた柿五郎は、トウマワリの胴体に右手の指先にある鋭い爪を強く押さえつけました。
「うわあああっ! いてててててっ、いてててててっ!」
トウマワリは、自らの鋭い爪を柿五郎によって押さえつけられたので、かなり痛々しい表情で大きな悲鳴を上げています。




