第1話 お布団に大失敗しちゃった(6)
「もうガマンができないよ……」
柿五郎は、お尻を押さえたままで便所までやってきました。しかし、柿五郎にとって、便所へ入るということはとても勇気のいることなのです。
「幽霊やお化けが便所に出てきたらいやだなあ……。でも、このままではおしっこやうんちをもらしてしまうし……」
柿五郎は、真夜中と同じように恐い幽霊や妖怪が出てくるかもしれないので、このまま便所に入るべきかどうか迷っているところです。しかし、便所の前で足をバタバタさせているように、柿五郎のおしっこやうんちのガマンは限界に達しています。
「ガマンができない、ガマンができないよ!」
柿五郎は思い切って便所の中に足を入れました。その便所には扉がないので、便所の中が外から丸見えになっています。
「よかった……。今日は幽霊がいないぞ」
柿五郎は、幽霊や妖怪が便所の中にいないことを確認すると、おしっことうんちをするためにすぐにしゃがみ込みました。しかし、柿五郎がお腹とお尻に力を入れ始めたそのときのことです。
「ぐふふふふ、便所に入って何をしているのかな……」
便所の中から不気味な声が聞こえると、柿五郎はあまりの恐さに体が震え始めました。そして、柿五郎がおしっことうんちをしようとした便所の穴から、青白い色をした妖怪らしき手が出てきました。
「うわああっ、うわああっ、お化けが出た! お化けが出た!」
柿五郎は妖怪の手を見た瞬間、思わず悲鳴を上げながら後ろ向きのままで便所の外へ出ようとしました。しかし、あまりの妖怪の恐さに、柿五郎は便所の外で思わず尻餅をついてしまいました。
そのころ、お母さんは柿五郎の悲鳴を聞くとすぐに便所のところへ行きました。お母さんの右手には、いつも畑仕事で使う木ぐわを持っています。
すると、便所の前で尻餅をついた柿五郎の姿を見つけました。柿五郎のそばへやってきたお母さんは、すぐに地面のところをチェックするように見ました。そして、お母さんはこれを見ながら笑顔で柿五郎にやさしく言いました。
「ふふふ、今日も便所で見事に大失敗しちゃったね」
「かあちゃ、お化けがいて恐くなったから便所ですることができなかったけど、こんなに元気なのがいっぱい出ちゃったよ」
柿五郎は、真夜中だけでなく昼間も便所でおしっこやうんちをすることができません。今日も、便所の前で尻餅をついた途端に、柿五郎は見事におしっことうんちを地面にもらしてしまいました。
それでも、柿五郎はとぐろ巻きの黄色いうんちを見ながら、少し照れた表情で笑顔でお母さんにおしっこやうんちをおもらししちゃったことを言いました。その様子を見たお母さんも、元気なおしっこやうんちが出た柿五郎の頭をなでなでしながら褒めました。
「これだけ元気なうんちなら、畑の肥やしとしても役立つね」
「かあちゃ、どうもありがとう」
お母さんは自分たちの畑で使う肥やしとして、柿五郎がおもらししちゃったうんちを木ぐわですくい上げました。