第9話 妖怪トウマワリ再び現わる(3)
「ぐふふふふ! おめえごときがこのわしを倒せるわけないだろ!」
「うわっ、うわわっ!」
勇気を出して立ち向かった柿五郎ですが、トウマワリは柿五郎を平手で思い切りはたきました。平手打ちを食らった柿五郎は、地面に尻餅がつくように倒れ込みました。
「いてててて……。いきなり何をするんだ!」
「まだ分からないのか! おめえは、昨日も今日もあれだけ大失敗を繰り返しているのになあ……」
トウマワリが柿五郎の顔に平手打ちをしたのは、おねしょやおもらしを繰り返す柿五郎に対する罰という意味合いがあります。しかし、それは柿五郎にとってあまりにも理不尽なことです。
「さあ、おめえにはもう一度これで赤ちゃんになってもらうぞ、ぐふふふふ!」
「うわっ、わわわっ! こっちにこないで! こないで!」
トウマワリは、自分の長くて鋭い爪を柿五郎に見せつけました。その鋭い爪で強く押しつけたら、柿五郎は再び赤ちゃんの姿になってしまいます。
もう赤ちゃんの姿に戻りたくない柿五郎ですが、目の前にいるトウマワリの不気味さに腰を抜かしたままです。先ほど勇気を出して立ち向かった柿五郎ですが、トウマワリの姿に両足を震えながら再びおびえています。それでも、柿五郎はトウマワリに捕まらないように、尻餅をつきながら後ろのほうへ下がっていきました。
「そんなにちょこまか逃げてもいいのかな。後ろのほうをよく見たほうがいいぞ」
「そんなこと言っても……」
トウマワリは、何としてでも鋭い爪で柿五郎を赤ちゃん姿にしようと迫ってきました。一方、柿五郎も迫りくるトウマワリから離れようと後ろへ下がり続けました。
そのとき、森の中で聞いたあの不気味な鳴き声が後ろから聞こえてきました。
「カァ~! カァ~! カァ~! バサバサバサバサッ!」
「うわっ! わわわっ! ぼくのほうへこないでよ! こないでよ!」
柿五郎は、後ろから襲来してきたカラスの大群を見てなかり恐がっています。カラスが近くを飛ぶたびに、柿五郎は右手で追い返すしぐさを見せています。
「ぐふふふふ! カラスの大群に耐えられることができるか、楽しみに見守ってやるとするかな。赤ちゃん姿にするのは、その後でもじっくりとできるからなあ」
トウマワリは不気味な笑い声で、カラスの大群に襲われている柿五郎のぶざまな姿を見つめています。そして、自分の鋭い爪を見ているトウマワリの表情からは不気味な雰囲気が漂っています。




