第9話 妖怪トウマワリ再び現わる(2)
「まあ、わしはおめえが赤ちゃんになった後の様子を知っておるぞ。おっぱいをたくさん飲んだり、夢の中での火事をおしっこしながら消したそうだな」
「わわわっ、どうして夢の中のことまで……」
トウマワリは、柿五郎を赤ちゃん姿にしたあとの様子を知っているかのような口ぶりで話し始めました。それを聞いた途端、柿五郎は顔を赤らめながらあわてふためきました。
でも、トウマワリは柿五郎の恥ずかしい出来事を話すことをやめようとはしません。
「そして、お布団におねしょをした上に、見事なおしっこ噴水もしたそうだな。さらに、元の姿に戻った後で妖怪が恐くて便所の前でうんちのおもらし大失敗もしていたわなあ、ぐふふふふ!」
「ぼくだって、本当は便所でしたいけど……。お化けが目の前にいるだけで恐いんだもん……」
トウマワリは、今日の朝に柿五郎が大失敗した出来事を不気味な笑い声で次々と言い放ちました。すると、柿五郎はトウマワリの不気味さに足元が再び震え始めました。
もちろん、柿五郎としても便所で大失敗したくないというのが本音です。でも、目の前にいる妖怪や幽霊を見ただけで恐がって便所から飛び出すという有り様では、おしっこやうんちの大失敗をしてしまうのも無理ない話です。
「と、とにかくこの道を通してよ! 通してよ!」
「おめえみたいなやつはここを通すわけにはいかないな。ここを無理やり通るのであれば、わしの鋭い爪で再び赤ちゃんにしてやるぞ、ぐふふふふ!」
柿五郎たちは、魔の山へ行く坂道のところまで戻るためにも、この道を早く通りたいところです。しかし、トウマワリは柿五郎を再び赤ちゃん姿にしてやろうと、両手の鋭い爪で引っかくようなしぐさで待ち構えています。
「とにかく、ぼくはかあちゃに早く会いたいよ! 会いたいよ!」
柿五郎は、昨日の二の舞になるかもしれないという覚悟で、目の前の妖怪に勇気を出して立ち向かっていきました。その姿は、今まで妖怪を恐がってばかりの柿五郎の姿とは違います。




