第7話 妖怪トウマワリと赤ちゃんになった柿五郎くん(3)
「わわわっ……。こっちにこないで、こないで!」
「おめえが恐がれば恐がるほど、わしはおめえを始末するのが楽しみになるさ! ぐふふふふ!」
トウマワリが近づいてくるのを見て、柿五郎は尻餅をついたまま後ろへ下がるように逃れようとしています。しかし、どんなに逃れようとも、トウマワリはそんな柿五郎の弱みをつけ込むように迫ってきます。
そのとき、柿五郎は急に苦しそうな表情になると同時に、思わず右手で腹掛けの下を押さえ始めました。
「お、おしっこが……。おしっこが……」
柿五郎は、おしっこがもれそうになったので必死にガマンしています。しかし、その状況をトウマワリは見逃すはずがありません。
「ぐふふふふ! さては、おめえはおしっこが出るのをガマンしているようだな」
「ど、どんなことがあっても……。おしっこは絶対にガマンできるもん!」
トウマワリは自分の顔を柿五郎に近づけながら、柿五郎がおもらしでの大失敗を誘い出そうとしています。柿五郎はトウマワリの恐い顔に足が震えていますが、ここでおしっこのガマンをやめるわけにはいきません。
すると、柿五郎は後ろを振り向くと、1本の大きな木があるのを見つけました。
「あっと、あの木へ行けば……」
柿五郎はすぐさま立ち上がると、後ろにある大きな木の方向へ駆け出しました。柿五郎は腹掛けの下を両手で押さえながら、おしっこをするためにその木へ向かいました。
「あれっ、恐いお化けが急にいなくなったけど」
柿五郎が後ろを見ると、さっきまでいたはずのトウマワリがいません。柿五郎は、恐い妖怪がいなくなったことにホッとした様子です。
しかし、そんな柿五郎の期待は大きな木の手前で覆されることになります。
「おめえがどういうことをしようとしているのか、わしは全てお見通しだぜ! ぐふふふふ、ぐふふふふ!」
「わわわっ! 何をするんだ! いてててっ、いてててててっ!」
柿五郎の目の前には、いなくなったはずのトウマワリが再び現れました。トウマワリはいきなり鋭い爪が伸びている両手で柿五郎を捕まえると、柿五郎の両肩に思い切り鋭い爪を強く押しつけました。
柿五郎は、トウマワリの鋭い爪で押さえつけられてかなり痛そうな表情を見せています。すると、柿五郎の姿が光に包まれるように突然変化し始めました。
「あれっ、あれれっ! 何でこんな姿になっているんだ」
柿五郎は心の中で自分の姿が変わっていることに驚きを隠せません。柿五郎の姿は、外見が数え年で2歳児ぐらいの赤ちゃんになってしまいました。




