第7話 妖怪トウマワリと赤ちゃんになった柿五郎くん(2)
右側の坂道に入って行った柿五郎と座敷童子ですが、そこは深い森の中でもさらに不気味な雰囲気が漂っています。
「なんかおかしいなあ。魔の山って、こんなに近いところなのかなあ?」
「魔の山がどこにあるかはわからないけど、これだけ不気味なところであれば間違いなく魔の山に近づいているのでは?」
2人が坂道を歩いている間、森の木々からはバサバサと鳥の飛び立つ羽音が聞こえてきました。柿五郎は、その羽音を聞くたびに体が震え出しました。
「うわわっ……。この先にはお化けがいるかもしれないよ……」
「柿五郎くん、ぼくがついているからいっしょに進もうよ」
柿五郎は、妖怪や幽霊が出るかもしれないこの坂道を歩くのをためらっている様子です。座敷童子はそんな柿五郎を励ますと、柿五郎は再び魔の山へ向かって歩き出しました。
しかし、その坂道は魔の山への坂道とは全く違うところへ向かっています。それにもかかわらず、柿五郎たちは間違った道標で示した坂道を魔の山へ向かう道であると勘違いしています。
そして、柿五郎たちは頂上らしきもの見つけると、急いでそこへ向かって駆け出しました。
「かあちゃ、柿五郎だよ! どこにいるの? どこにいるの?」
柿五郎は頂上へやってくると、早速お母さんがどこにいるのか探し始めました。そのとき、柿五郎の目の前に、突如として不気味な妖怪らしきものが現れました。
「この道を通ってきたのはお前か。こんなに簡単にだまされるとはなあ、ぐふふふふ!」
「わわっ、わわわっ! 恐いよ、恐いよ……。本当に恐いよ……」
柿五郎の前に現れたのは、般若のような顔とツノを持った妖怪です。その妖怪の恐そうな顔に、柿五郎は思わず尻餅をつきながら体を震えています。
「わしの名前はトウマワリという妖怪じゃ。おめえはもう5歳になったというのに、これだけおねしょやおもらしを何回も大失敗するようでは、まだまだ赤ちゃんと同じようにしないといけないなあ」
トウマワリは尻餅をついている柿五郎を見ながら、何度も繰り返しておねしょやおもらしの大失敗のことを不気味な声で指摘し始めました。




