第5話 トウセン坊の挟み撃ち(3)
「ぐふふふふ! お前さん、もしかしてうんちがしたいのでは……」
「う、うんちなんかまだ大丈夫だもん!」
トウセン坊からうんちをしたがっているのではと指摘された柿五郎ですが、必死にガマンしながらも大丈夫であると強がる様子で反論しました。
これを聞いた座敷童子は、トウセン坊に矛盾するようなことを言っていた柿五郎に聞いてみました。
「柿五郎くん、うんちが出そうなのにどうして大丈夫とか言うの?」
「だって、あのトウセン坊を見ただけで不気味だし恐いんだもん……」
柿五郎は、うんちが出るのをガマンするために左手でお尻を押さえ続けています。しかし、ここで弱みを出したら、目の前にいるトウセン坊の不気味な手足で襲われる可能性が大きくなります。柿五郎がトウセン坊の前で強がることを言うのも、相手に弱みを出さないようにするためです。
しかし、そんな小手先なことがトウセン坊に通用するはずがありません。
「そんなに大丈夫だったら、どうしてお尻を押さえているのかな。ぐふふふふ、ぐふふふふ!」
「わわわっ! わわわわっ! こっちにこないで! こないで!」
トウセン坊は、カエルみたいな不気味な手で柿五郎に迫ってきました。柿五郎は、あまりの不気味さと恐さで後ろに少しずつ下がりました。
これを見たトウセン坊は、柿五郎が恐がっている様子に不気味な笑い声を上げました。そして、トウセン坊は柿五郎へさらに迫ってきました。
「ぐふふふふ、ぐふふふふふふ!」
「うわああっ! わあああっ!」
柿五郎は、自分の体に迫ってくるトウセン坊から逃げようと座敷童子といっしょに坂道を下りました。それを見ているトウセン坊は、不気味な声でつぶやくように言い出しました。
「トウセン坊がわし1人だけと思ったら大間違いだぞ、ぐふふふふ!」
一方、柿五郎たちは昨日泊まったあばら家のところまで戻ろうと坂道を駆け下りようとしています。しかし、目の前にはさっきのトウセン坊と似たようなものが坂道を上りながらやってきました。
「ぐふふふふ! 逃げようたってそうはいかないぞ」
「わわっ! わわっ! こっちにもトウセン坊が出たあっ!」
柿五郎たちが目撃したのは、さっき見たトウセン坊と全く同じ格好の妖怪です。柿五郎はこれを見た途端に、その妖怪から逃げるように再び坂道を上がりました。しかし、その先にはもう1人のトウセン坊が待ち構えています。
「ぐふふふふ! トウセン坊は1人で行動するのはもちろん、2人がかりで挟み撃ちにすることだってできるのさ。ぐふふふふ!」
柿五郎たちが再び坂道を上ると、そこには最初に出くわしたトウセン坊が道を塞いでいます。しかも、坂道の下のほうからはもう1人のトウセン坊も迫ってきており、柿五郎にとって絶体絶命のピンチを迎えました。




