第5話 トウセン坊の挟み撃ち(1)
あばら家から出てきた柿五郎と座敷童子は、再び森の中を歩き始めました。森の中は時折木漏れ日が入ることがあるとはいえ、木々が生い茂っていることもあり薄暗いことに変わりはありません。
「柿五郎くん、これから奥のほうへ進んでいくけど恐くないかな?」
「ぼ、ぼくだって、座敷童子といっしょだったら恐くないもん……」
これから森の奥へ進めば進むほど、これまで見たことがない妖怪とかに出くわす可能性が十分にあり得ます。柿五郎は、自分のお母さんに会いたいという一心で歩き続けていますが、目の前に妖怪が出ることを恐れて歩みを進めるたびに足が震えています。
しかし、座敷童子からの励ましもあり、柿五郎は少しずつながらも森の奥へ歩き続けています。この先には、魔の山へ向かう坂道の入口があります。
「魔の山へ行くには、ここを通らないといけないけど……」
「柿五郎くん、ぼくがいるから大丈夫だよ」
「う、うん……。ギュルルル、ゴロゴロゴロッ……」
柿五郎はこれから上るであろう坂道を見た途端、妖怪や幽霊に出会うかもしれないという恐怖から歩き出さうことができません。座敷童子が大丈夫といっても、柿五郎は足が震えて坂道への第一歩が踏み出せません。
妖怪たちに対するあまりの恐怖と緊張から、柿五郎はお腹が痛くなり始めました。そして、柿五郎のお尻のほうも急にムズムズするようになりました。
「どうしたの?」
「う、うんちが……」
柿五郎は朝ご飯におイモとスイカをたくさん食べただけでなく、おしずのおっぱいもいっぱい飲みました。どうやら、柿五郎はそのときの食べすぎと飲みすぎでうんちがしたくなったのです。
「柿五郎くん、この坂道を上って行こうよ! そうすれば、どこかでうんちをする場所が見つかるかもしれないし」
「う、うん……。よ~し、勇気を出して上るぞ!」
座敷童子は、坂道を上ってうんちをする場所を探そうと柿五郎に呼びかけました。これを聞いた柿五郎も、ようやく勇気を出して坂道を上ることを決心しました。
こうして、柿五郎は座敷童子といっしょに魔の山へ通ずる坂道を上ることになりました。この先に、柿五郎にとって最も恐れている妖怪たちが待ち構えているとは知らずに……。




