第1話 お布団に大失敗しちゃった(3)
「柿五郎くん、柿五郎くん……」
おしっこをしてすっきりしたはずの柿五郎は、聞き覚えのある声に気がつきました。そこには、やさしそうなお母さんの姿がありました。
「もしかして、幽霊におしっこしたのは夢の中?」
敬太はお布団の上でずっと寝ていたので、今までの出来事がすべて夢の中であることに気づきました。それは、お母さんが掛け布団を持っていることですぐに分かりました。
「ふふふ、柿五郎くんは今日もお布団に見事なおねしょの大失敗をしちゃったね」
「かあちゃ、今日もおねしょをしちゃったよ。えへへ」
お母さんがやさしい声で言ったのを聞いた柿五郎は、すぐに自分がおねしょをしてしまったことを知りました。柿五郎は照れた表情を見せながら、今日もおねしょしちゃったことを笑顔で言いました。
「柿五郎くんは、妖怪や幽霊を見るだけでも恐いから、夜中に便所へ行ってもすぐにお布団の中にもぐりこんでしまうんだね」
「だって、本当に幽霊やお化けを見るのが本当に恐いんだもん……」
昨日の夜、柿五郎はおしっこがしたくなったので、便所のところまで暗い中を歩いて行きました。でも、柿五郎はそのまま便所へ入るのがとても不安でたまりません。
それでも、柿五郎はおしっこがもれそうになったので、勇気を振りしぼって便所の中へ入りました。すると、柿五郎の目の前にほのかに明るい人魂が見えてきました。それを見た柿五郎は、恐くなって体が震えるようになりました。
そして、人魂のほのかな明るさから浮かび上がったものを見た瞬間です。
「ぐふふふふ、真夜中におしっこしにきたのはだれかな……」
「出た出た、幽霊が本当に出た!」
柿五郎が目にしたのは、夢の中にも登場した白い着物をきた幽霊でした。柿五郎は、幽霊に捕まるのが恐くなったので、すぐさま家の中へ戻りました。そして、あまりの恐さに柿五郎はお布団の中で震えながらそのまま眠ってしまいました。