第4話 あばら家とおねしょ幽霊(5)
「お、おしっこ……」
柿五郎は、おしっこがしたくなって目を覚ましました。しかし、真夜中で板の間は真っ暗闇である状況に、柿五郎はいつものように不安がよぎってきました。
「どうか、どうか、お化けや幽霊が出ませんように……」
柿五郎は、暗闇の中をゆっくり歩きながら土間へ下りました。そして、ボロボロになっている引き戸を開けて外へ出ました。
「暑いなあ。便所はどこにあるかなあ」
季節はまだ夏真っ盛りです。夜中であっても、日中ほどではないけど蒸し暑いことに変わりありません。それでも、柿五郎は真夜中の暗闇の中で便所を探しています。
すると、柿五郎の目の前が薄明るくなってきました。しかし、こんな森の中で真夜中にもかかわらず薄明るいことに柿五郎は違和感を感じました。
「あばら家のほうが真っ暗闇なのに、ここだけ薄明るくなっているということはもしかして……」
柿五郎は、今まで自分の家の便所での出来事を思い出しました。真夜中におしっこをするために柿五郎が便所へ入ると、そこにはたいてい幽霊の周りに人魂が必ずと言っていいほど現れます。
思い出せば思い出すほど、柿五郎は余計に不安が増してきました。そして、柿五郎は目の前の薄明るいあるものを目撃しました。
「出たあっ! 人魂が出たあっ!」
目の前に現れた人魂を見て、柿五郎は大きな声を上げてあばら家のほうへ逃げようとします。しかし、今度はあばら家の方向にも別の人魂が現れました。
「出た出た出たあ!」
柿五郎は、人魂に挟まれてどうすることもできません。おしっこのほうも腹掛けの下を両手で押さえるようにガマンし続けていますが、そのガマンも限界が近づいてきました。
「おしっこ、おしっこ……。もうガマンができないよ……。ジョジョジョジョ~ッ」
柿五郎は、ガマンできなくなったおしっこを人魂にかけ始めました。柿五郎はおしずのおっぱいをいっぱい飲んでいるので、おしっこも相当な量が出ています。
「ジョパジョパジョパジョ~ッ、ジョジョジョジョジョ~ッ」
柿五郎の勢いよく出たおしっこのおかげで、周りにいた人魂は次第に姿を消すようになりました。柿五郎は恐かった人魂がいなくなったことにホッとするとともに、おしっこがいっぱい出てすっきりしました。




