第4話 あばら家とおねしょ幽霊(4)
「おっぱいをこれだけいっぱい飲んでいれば、柿五郎くんがいつも元気なのも分かる気がするわ」
おしずは、おっぱいをたくさん飲んで満足している柿五郎を見ながらやさしく接しています。すると、柿五郎が再び何か言いたげな表情を見せています。
「ねえねえ!」
「柿五郎くん、どうしたの?」
「えへへ、ぼくはいつも夜中におねしょの大失敗をしちゃうんだ」
おしずが尋ねると、柿五郎は毎日のようにお布団におねしょをしてしまうことを言いました。これを聞いたおしずは、やさしそうな笑顔で柿五郎に話しかけました。
「柿五郎くんはまだ5歳だし、おねしょで大失敗してもあたしは全然平気だよ。おねしょしたら、お庭の物干しにちゃんと干しておくから心配しなくてもいいよ」
おしずは、お母さんと同様に柿五郎がおねしょの大失敗をしてもやさしく接するそうです。そして、おしずはかわいい顔をしている柿五郎を見ながら話を続けました。
「あたしは自分の子供を何人も産んだけど、全員生まれてからすぐに亡くなってしまったの。だから、おっぱいを飲んでいる柿五郎くんを見ながら、大きな赤ちゃんがきてくれて本当にうれしかったわ」
柿五郎の存在は、おしずにとってすぐに亡くした自分の子供の代わりといっても過言ではありません。おしずは、まるで大きな赤ちゃんのようにかわいくて元気な柿五郎の姿を見守り続けています。
しかし、いくら元気な柿五郎もこんなに遅くまで起きることはありません。眠くなってあくびをしている柿五郎を見て、おしずは柿五郎をお布団の中に寝かしつけました。
「お布団が2つもあるけど、どうしてなの?」
「ふふふ、柿五郎くんがおねしょしちゃっても、もう1枚お布団があれば大丈夫と思って用意したのよ。あたしは隣の寝間のところで寝るから、心配しなくても大丈夫だよ」
おしずがお布団を2枚も用意したのは、柿五郎がおねしょで大失敗しても大丈夫なように用意したものです。これに安心したのか、柿五郎はぐっすりと眠りの中に入っていきました。
「柿五郎くんは、いったいどんな夢を見ているのかな」
おしずは柿五郎が見ている夢を想像しながら、隣の寝間のほうへ入っていきました。
ぐっすりと眠り続ける柿五郎ですが、この後で生まれてから一番恐ろしい出来事に出くわすことになることに、このときはまだ知る由もありませんでした。




