第4話 あばら家とおねしょ幽霊(2)
柿五郎は座敷童子といっしょに真っ暗闇の中を歩き続けると、森の中にある一軒の家にようやくたどり着きました。しかし、柿五郎がその家を見ると急に背筋が凍るほどの恐ろしさを感じました。
「この家に入ったら、お化けや幽霊がいるかも……。本当に恐いよ……」
その一軒の家は引き戸や障子がボロボロになっており、あばら家と言ってもいいくらいの外観となっています。しかも、真夜中でほのかに明るいこともあり、家の中が妖怪の巣窟なのではないかと柿五郎が思っても不思議ではありません。
すると、座敷童子は相変わらず妖怪を恐がっている様子の柿五郎にやさしく声をかけました。
「柿五郎くん、そんなに気にしなくてもいいのに……」
「気にしたくないけど……」
座敷童子に励まされた柿五郎ですが、それでも妖怪が現れることへの不安は消えていません。しかし、周りが真っ暗なので、柿五郎は不安を抱えたままで座敷童子といっしょにその家に入りました。
「す、すいません……。ここに泊まりたいけど……、よろしいですか……」
柿五郎はお泊りのお願いをするところですが、妖怪や幽霊に対する恐怖もあり、身震いしながら言っています。すると、家の中から大きな影が現れました。
「出たあっ! お化け! お化け!」
柿五郎は、大きな影を見ただけで妖怪が現れたと大声で叫びながらおびえています。すると、柿五郎の耳元にやさしい女の人の声が聞こえてきました。
「そんなに恐がらなくても大丈夫だよ。こっちを向いて」
柿五郎は不安を感じながら振り向くと、そこには自分のお母さんみたいなやさしい女の人が立っていました。これを見た柿五郎は、ひとまずホッとしました。
「どうしてこの家を見つけたの?」
「かあちゃを探しに森の中に入ったけど、もう夜中で暗くなったからお泊りをしようと探したら、ここを見つけたよ」
柿五郎は、この家を見つけてお泊りする理由を女の人に話しました。これを聞いた女の人は、やさしい顔つきで見つめていました。
「もう夜中で外は暗いでしょ。今日はここで泊まっていったほうがいいよ」
「本当にいいの? どうもありがとう!」
女の人が柿五郎にお泊りをするように勧めると、柿五郎も元気な声で感謝の気持ちを伝えました。
柿五郎と座敷童子は家の中に入ると、すぐに板の間に上がりました。板の間には、すでにお布団が2枚敷いています。
「先にあたしの名前を言うわ。あたしはおしずという名前なの」
「ぼくの名前は柿五郎。5歳児の男の子だよ!」
「ふふふ、着物をつけずに腹掛け1枚だけのかわいい男の子だね」
おしずと柿五郎が互いに自己紹介をすると、おしずは腹掛け1枚だけの格好である柿五郎の姿に目を細めています。それは、まるでわが子を見ているかのような愛しさを感じるものです。




