第2話 かあちゃを探しに魔の山へ(7)
「柿五郎くん、恐がらなくても大丈夫だよ。ぼくをよく見たら分かるよ」
「あれあれ? ぼくと同じ腹掛けをしている男の子なの?」
地面に尻餅をついた柿五郎の目の前には、腹掛け1枚だけでおかっぱ頭の小さい男の子の姿がありました。柿五郎は恐い妖怪や幽霊が現れたと思い込んでいたので、自分と同じようなかわいい子供だったことにホッとしています。
しかし、柿五郎は何で自分の名前を知っているのか不思議そうに感じました。
「何でぼくの名前を知っているの?」
「ぼくは、柿五郎くんの家に住みついている座敷童子だよ」
「座敷童子って、もしかしてお化け?」
昔から自分が住んでいる家に座敷童子がいるということを知って、柿五郎は再び身震いするように恐がっています。これを見た座敷童子は、柿五郎にかわいい声で言い始めました。
「ぼくはお化けでも何でもないよ。柿五郎くんの家の守り神だよ」
「守り神? それじゃあ、ぼくの家をずっと守っているの?」
「ぼくは、柿五郎くんやお母さんが入らない屋根裏でずっと見守っているんだよ」
柿五郎は、座敷童子が自分の家を守っていることを初めて知りました。座敷童子は屋根裏ですっと暮らしながら、柿五郎たちを影から見守っているのです。
それ故に、柿五郎は今まで座敷童子の存在を全く知りませんでした。それが、今になって柿五郎の前に現れたのには何か訳がありそうです。
「でも、どうしてぼくの前に現れたの?」
「ぼくはこの前の真夜中に、たまたま屋根裏から板の間に落ちちゃったんだ。そしたら、柿五郎くんが恐がった様子でお布団の中に入って震えているのを見たんだ」
座敷童子は今までずっと暮らしていた屋根裏から板の間に落ちてしまったが故に、柿五郎の存在を初めて知ることができたのです。初めて見た柿五郎の姿は、便所から恐がった様子でお布団の中で震えているところです。
「それじゃあ、まさか……」
「柿五郎くんがおばけを見ただけで恐がることも知っているし、お布団への大失敗や便所の前での大失敗もぼくは知っているよ」
「えへへ、今日もお布団に見事なおねしょの大失敗をしちゃったよ」
座敷童子は、柿五郎が妖怪や幽霊を恐がっていることや、お布団へのおねしょや便所でのおもらしが治っていないこともこの目ではっきりと見ています。座敷童子にばれてしまったのか、柿五郎は今日の朝もおねしょしちゃったことを照れた表情を見せながら言いました。
「でも、柿五郎くんはまだ小さい子供だから、おねしょやおもらしで何度も大失敗するのは当たり前だから、気にしなくても大丈夫だよ」
座敷童子は、何度もおねしょやおもらしの大失敗を繰り返しても、小さい子供なら当たり前と励ましました。これを聞いた柿五郎も、かわいい座敷童子の励ましを受けて普段通りの元気な笑顔に戻りました。




