第2話 かあちゃを探しに魔の山へ(5)
「かあちゃに早く会いたいよ……。早く会いたいよ……」
柿五郎は、「魔の山」といわれるあの山に向かって駆け足で走り続けています。まだ5歳児の小さい子供にとって、かなりの距離を要する道のりを1人で走るのは過酷なものです。
しかし、柿五郎は大好きなお母さんに早く会いたいという強い思いから、無我夢中であの山へ向かって行きました。
山道をしばらく走ると、不気味な森に覆われた山が目の前に広がっています。
「かあちゃが言っていたあの山って、ここなのかな?」
お母さんが山菜採りに行っているあの山がどこにあるのかは、柿五郎も全く知りません。しかし、山の入り口に広がる不気味な森は、子供が入ってはいけない「魔の山」にぴったりと当てはまります。
そのとき、不気味な森の中から怪しげな笑い声が聞こえてきました。
「ふひひひひ! 魔の山へようこそ」
「わわわっ……。も、もしかして……」
森の中から聞こえた不気味な笑い声に、柿五郎は体を震えながら恐がっています。
「性懲りもなく、魔の山へ小さい子供が1人でくるとはなあ……」
「ぼ、ぼくはかあちゃを探しにきただけだい!」
柿五郎は、目の前に妖怪がいるのではという不安と恐怖におびえながらも、お母さんを探すためにもここから逃げるわけにはいきません。しかし、そんな柿五郎をあざ笑うかのように、森の中から再び不気味な声が聞こえてきました。
「そういえば、わしの仲間からお前のことを聞いたことがあるぞ。お前は、夜中も昼間も妖怪が恐くて便所から逃げ出しているようだなあ……」
「だって、だって…。ぼくはお化けや幽霊が本当に恐くて恐くて……」
「お前がおねしょの大失敗や、便所の前でおしっことうんちの大失敗をいつもしてしまうのを、わしらの仲間は全員知っているぞ。ふひひひひ! ふひひひひ!」
森の中から聞こえる不気味な声は、どうやら妖怪や幽霊の仲間のようです。そして、柿五郎が妖怪たちを恐がって便所から逃げたりおねしょやおもらしの大失敗をすることは、すでに妖怪や幽霊の間で知れ渡っています。




