第2話 かあちゃを探しに魔の山へ(4)
それは、以前にお母さんが山菜採りに行こうとしたときのことです。
「かあちゃ、ぼくも山菜採りに行きたいよ! 行きたいよ!」
「いくら柿五郎くんが行きたいと言っても、あの山だけは絶対に行ってはいけない場所なのよ」
柿五郎は、山菜採りにいっしょにあの山に行きたいと何回もお願いしました。お母さんも、普段はそこへ行ったらいけないとか言うことはほとんどありません。
しかし、今回だけは柿五郎に絶対に行ってはいけないとお母さんは強い言葉で言いました。その言葉を聞いた柿五郎は、思わずびっくりしました。
「かあちゃ、どうしていけないの?」
「柿五郎くん、私の話をよく聞いてね」
お母さんは、柿五郎にあの山へ入ってはいけない理由を話し始めました。
「私は死んだお父さんから、あの山について聞いたことがあるの。そのときに、あの山は子供が絶対に立ち入ってはいけない魔の山として恐れられていると言ったわ」
それからは、お母さんが山菜採りに出かけるときであっても、いっしょに行きたいとは決して口に出すことはありません。それでも、夕暮れ空になってもお母さんが戻ってこない状況に、柿五郎はついに自ら行動に移す決心を固めました。
「かあちゃ、約束を破ってごめんね。これから、あの山へ入ってかあちゃを探すからね」
柿五郎はお母さんを探すために家から出ると、急いで山道を駆け足で下っていきました。お母さんが言うあの山は、柿五郎がいつも水汲みをしている場所よりもさらに遠い場所にあります。
柿五郎があの山まで行く道を通るのは初めてです。それは、柿五郎にとってまさに未知の世界といえるものです。




