第2話 かあちゃを探しに魔の山へ(3)
柿五郎はお母さんが帰ってくるまでの間、庭にある大きな木を使って逆立ちの練習をし始めました。
「えいっ! えいっ! え~いっ!」
柿五郎は逆立ちをするのが大好きですが、まだ完璧にできるわけではありません。それでも、自分の力で逆立ちができたときには無邪気な笑顔で喜んでいます。
「わ~い! できた! できた! えへへ、おちんちんが見えちゃった」
逆立ちができてうれしそうな柿五郎ですが、逆立ちのままなので腹掛けがめくれてしまいました。腹掛けがめくれておちんちんが見えてしまった柿五郎は、ちょっと照れながらも明るい笑顔を見せています。
その後も、自分たちの畑に行ってはお母さんの木ぐわで畑を耕したり、お庭に干していた洗濯物やお布団を家の中に入れたりしています。柿五郎はお母さんがいないときでも、お母さんがやっていること自分でできるようにしようとがんばっています。
そうするうちに、お母さんが戻ってくるであろう夕方が近づいてきました。しかし、いつもならお母さんが山菜を採って戻ってくるはずなのに、今日はまだ戻ってきません。
「かあちゃ、遅いなあ。どうしたのかな?」
柿五郎は少し遅くなって帰ってくるのではと思い、しばらく待つことにしました。でも、夕暮れ空になってもお母さんは一向に帰ってきません。
「かあちゃ、どうして帰ってこないの……」
さすがの柿五郎も、こんなに遅い時間になってもお母さんが帰ってこないことに寂しい思いをするようになりました。
「あの山に行ってかあちゃに会いたいよ! でも、かあちゃからあの山には行ってはいけないと言われているし……」
柿五郎は、どうしてもおかあさんがいるあの山へ行きたいと強く思うようになりました。そのとき、あの山へ絶対に行ってはいけないというお母さんの言葉を思い出しました。




