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第１話　お布団に大失敗しちゃった（１）

　ここは真夜中の便所の中です。便所といっても、家から離れたところにある板張りのポットン便所です。

　そのとき、小さい子供のわめき声と怪しげな笑い声が入り混じるように聞こえてきました。

　「恐いよ、恐いよ……。だれか助けて！」

　「ぐふふふふ、そんなに恐がってばかりで大丈夫かな」

　わめき声を出している子供は、腹掛け１枚だけつけている幼い男の子です。その男の子は、白い着物を着た足のない幽霊に捕まっています。

　男の子は幽霊やお化けがとても恐いので、いますぐにでも逃げたいところです。しかし、それができない事情が男の子にはあります。

　「おしっこがもれそう……。も、もうガマンできないよ……」

　男の子は、おしっこがしたくなったので、家から出てこの便所までやってきました。これを見た幽霊は、男の子に対して追い討ちをかけるような言葉を発しました。

　「わしは柿五郎のことをよく知っているんだぞ。お前は５歳になっても便所が恐くておしっこをせずに家へ戻るそうだな……」

　「ど、どうして知っているの……」

　「どうしてかと？　それは、お前のお布団が毎日のように干されているのを見ているからな、ぐふふふふ」

　幽霊は、まるで柿五郎の行動パターンを見透かすかのような口ぶりを見せています。これを聞いた柿五郎は、幽霊の言葉を聞くたびに震えが止まりません。その間にも、柿五郎のおしっこはガマンの限界に近づいてきました。