第一幕~アンティーク~
ヤツ、登場。
暗い部屋の中で、男が一人本を読んでいる。
モニターのようなものが照らす明かりだけで見ているようだ。
基本は暇つぶし、であるのか特に読みふけっている様子でもない。いかにも流し見、というのでもないが。
つまるところ彼からは本に対する興味が希薄に感じられた。なんとなく、その行為を行い、またなんとなく考えている。そんな様子だった。
「ゲームが、無事開始されました。」
と、若い女がどこからともなく現れる。最初にカードを引いた、ディーラー、と呼ばれた女だ。
「・・・・そうか・・・不具合はあるか?」
本を読むことをやめず、彼は答える。いかにも事務的な響きがする。
「今のところは。ただ、Bチームは『ブランク」が遭遇戦を仕掛けたためにスタートコールは行えませんでした。」
「賭けのページと機能が滞りなく動いていれば問題ない。勝手にオーディエンス側で始めるだろう。」
「すでに、そのような状況になった模様です。盛り上がりはいま一つですが。」
「・・・・・・」
無言ではあったが初めて男はディーラーの方に顔を向ける。ディーラーはグラスを取り出し、飲み物を注ぎながら続ける。
「能力の行使がまだあまり行われておりません。それに、クィーンがかなり消極的ですね。戦闘に参加していません。つまるところ、派手さに欠けるようです。」
スッと、男の前に茶色の液体を差し出す。どうやらアルコールを彼の為に作っていたようだ。
「オーディエンス側はあまり面白くないようです。」
「放っておけ、すぐにでも騒ぎ出す。前回はアイツのおかげで早くから盛り上がりはしただろうが・・そうだな、今回は差し詰めカウルあたりがやってくれるだろう。」
グラスに口をつけながら、彼はそうこぼす。
「カウル・ウェーバー、ご主人様のカードを持つ人物ですね。気になりますか?」
「どうかな・・俺には及ばない、といえるほど差はないだろうな。少し甘いヤツという程度だろ。」
ディーラーの口元には笑みが溢れる。年齢に見合う可愛らしい笑顔。男に対して確かな信頼がある、それを感じさせる笑顔といえた。
「フフッ。誠や私たち以外の名前を口にされるのは久しぶり、ですよ。」
「・・・そうか・・・」
「・・彼があなたの願いを叶えるのでしょうか?それとも・・別の誰か?」
「きっと、カウルは違う。が、俺の願いが叶うのなら、それはヤツにも・・・」
「・・似ている・・から?」
「俺に近いヤツだ。だから、違う。」
男が立ち上がり、
「いずれにせよ、まだ始まったばかりだ・・その中にいる・・と信じよう。」
本を投げ捨てながら言う。
本には『聖書』と書かれていた。