第一幕~ザッピングアクション1~
本編1幕。戦いながらストーリーが進行していく。いわゆる一回戦。
カン!!
異質な音が空間に響く。
少し遅れてバタバタと走る音、言い争う声がする。
「ロクな説明もなしにこれかよ!!」
若い男性が転がり、立ち上がりながら吐き捨てる。端正な顔というよりは、どこかワイルドな感がある男だ。だが、それを活かせる年齢には少し足りない。有り体に言えば少年が背伸びをしているようなギャップが強いのだ。服もそうだ。ウエスタンというか、どこか映画の賞金稼ぎを意識し見るからに寄せにいっているのだろう。
ただ、好感がトータルの印象になる、そんな若者だった。
彼の険しい視線の先にはこれまた男が一人いる。
こちらは明らかにビジネスマン、といった風態だ。スーツにワイシャツ、それにタイ。ただ足元だけがブーツのように見える。それ以外は特に特徴のある男ではない。いや、しかし印象には上層感がある。「エライ人」といったところだろうか。両手を軽く握るようにして歩いてくる。
「説明ならさっきあった。ようはゲームバトルだと。最後の一人が『秘宝』を得るためのな。」
「いや、それがわからないわけじゃねぇよ!その後、普通はさ、なんかこう・・・。」
「・・・ああ、確かに『さぁ、戦え』と言われて急に始まったな。」
「だろ!なんかあんだろ、普通。開会式的なさぁ・・心の準備の時間てか、ってあぶねえ!!おい!」
会話の最中に攻撃が飛ぶ。青年はギリギリのタイミングではあったがなんとか避けたようだ。
「まだ話してるだろうが!!」
「長い。それに、意味がない。」
言い終わるかどうかでまた仕掛けていく。今度は2・3撃打ち合い、組み合う形になる。お互いにその形は嫌うのかすぐにまた距離をとる。
「説明はどうあれ、やることに違いがあるわけではない。俺は自分と仲間のために『秘宝』が欲しい。そして得る。それだけだ。」
「それは俺だってそうだ。『秘宝』とかはよく知らないけど、賞金首は俺がいただく。でも、よくわからないまま争うのは嫌なんだよ。死なないって言われても、それを鵜呑みにするほどバカでもない。この状況を見極めて、納得して動く。それが本当だろ?」
「・・・こちらは納得している。この状況も理解している。」
「だから!そこを詳しく話せっての!」
「必要ない。やることは変わらん。」
「あぁ、くそ!!」
どうやら戦いあうことになったようだ。先とは違い、一進一退の攻防といった感じだ。っと、カウンター気味に青年が放った蹴りが男性の胸にまともに決まる。これはさすがに効いたのか、後ろに弾かれる。
「やるな・・・さすがはバウンティハンター。確か、バレット・・だったか?」
「・・なんで知ってるかは聞かないよ。・・・それで合ってる。」
体制を戻しながらバレットが答える。先ほどまでの油断、というか動揺がない。相手の四肢から視線を外さない。
「本当に何も知らないのだな。なら、作為的に資料を配った・・か。」
「あんたみたいに色々知ってる奴が他にもいるってことだろ?もうそこはいい。彼女も少し知ってる感じだったし。そっちに聞くことにする。」
「・・全ての情報を知っているのはマスターサイドだけだ。きっとバラバラに伝えられているな。・・俺もお前の『クラス』までは知らん。」
「またよくわからない単語が出たな。『クラス』・・・そうか『ジャック』・・カードに意味があるのか!」
「!意外と頭がいいようだな、詰めは甘い、がな。お前が『ジャック』か。彼女がわかっていたのなら、俺の欲しいネタを持っているようだ。」
カン!!
音が響く。
「ヤッッバ!!い!!」
時がスローに動意ていた。一瞬で距離を詰め、胸、腹、首と一撃ずつ打ち込まれていく。
「うわ!!・・・っとに、種がわからねぇな、この力」
バレットはタタラを踏むようにしてなんとか耐えるが、少し距離が空いてしまったようだ。
それは、隙であったのかもしれなかった、
「なら、やはり彼女が優先だな。」
『逃げる』という選択をするには。
カン!!
もう一度音が響き、もう目の前に男性の姿はない。
「マジかよ!!あぁ、ほんとにしんどいな、これ。」
ある意味袖にされたことを理解し、バレットは追いかけながら叫んだ。
いろいろとカットを繰り返して、戦闘から開始することにした。