第一幕〜開幕〜
舞台最初のシーン。
いわゆる説明台詞がいっぱい。長く感じるが大分端折ったセリフ回しに直すため、実際には5分くらいになる。
ブックメーカー、ディーラーが主催サイドであることが肝。
「放送をご覧の皆様!ヒアーイット?」
スーツを着た中年の男が画面に映し出されている。
おかしな男だ、普通の黒のスーツを着ているのに頭にはハット。手には英国紳士のようなステッキ。なのに足下はスニーカーである。何がしたいのか、まるでわからないような出で立ちである。
「さぁさぁ!今宵ついに始まりますは皆様方のおまちかね、『ゲーム』の開幕でございます‼︎いやー、めでたい!」
「ん?何がめでたいかって?・・そもそも『ゲーム』って?・・・ま、そこらはおいといて・・・」
いちいちオーバーなアクションが身振り手振りで入ってくる。明らかに、わざとである。
目障りであるし、単的に言ってもうるさい。
しかし、妙に手慣れた、そう`やりなれた`動きにも見えてくる。職業的な所作なのだろう。
「おお!コメントでツッコミがたくさん入っております!なるほど、なるほど。いやー、これは楽しい!実に面白いですなぁ〜。失礼、失礼。いやいや、インターネットの生中継というものが始めてでしてね。ついつい、遊んでしまいました。」
にまり、と笑いながら彼が喋っていく。
「なにはともあれ、まずはご挨拶を。私はブックメーカー、有り体に申しあげれば予想屋でございますな。今回の『ゲーム』を皆様にお楽しみ頂くために、オッズという形で各参加者の勝利期待度を折にふれ発表するのがお仕事でございます。」
ブックメーカーと名乗った彼がそう話すと、画面が切り替わり文章の説明書きが映し出される。どうやら秘宝の説明のようだ。
「まずは『ゲーム』の解説を致しましょうか。皆様はどうぞごゆるりとお聞きください。・・・では。
このゲームはとある『秘宝』の所有者を決める、知る人ぞ知る歴史の闇に埋もれた祭典であります。この『秘宝』正確な名前は伝わってはおりません。が、通り名を『アガルタの秘宝』と申しましてなんともまぁ、物騒な代物。」
「曰くつきも曰くつき、話だせばキリがありませんので後割愛!といっても調べてもでてはきませんでしょうから悪しからず。・・・ま、危ない代物、ということ。」
「しかし、しかしです。この世の物欲を全て満たせる、という恐るべき力を事実!持っておるのです‼︎我が主や、歴代の所有者達がそれを証明しております。ギルガメッシュ、ダビデ、ソロモン、アレキサンダー・・・『真なる王』を選ぶと言われてもおります。その『秘宝』が12年に一度自らの神秘の力で行うのがこの『VRゲーム』であります。」
画面が切り替わる。
今度はゲームの内容が書かれている。
「この『VRゲーム』テレビやマンガのような異能力を使えるヴァーチャルゲームだと思っていただければ結構。各参加者はこの小さな村の中で『秘宝』によって与えられた力を使い戦い合う。最後に残った者が所有者と戦い、勝てば新たな所有者になる、という単純な仕組みであります。」
「異能力によるダメージはあくまでヴァーチャル。精々、意識を無くすといった程度。ま、見た目が派手な力も中にはあるようですが。そのため、意識を失った時点で敗退、とさせていただきます。」
「少々長くなりましたな。いやいや失礼、失礼。ではでは以上を踏まえまして・・・」
画面に各参加者の詳細とオッズが映し出される。同時に賭けるための手順も表示されたようだ。もちろん、賭けの賞金も。
「さぁさぁ!皆様!ここからが本番‼︎見事に勝者をお当てになり1000万ドルを獲得されたいでしょうから、各オッズをよくご覧ください。私の一押しはなんといってもキング‼︎
本来ならば、我が主のカードを持つ彼でございます。当代最高の人物でなければ得ることのできないカード、それがキング‼︎要注意であります。」
「またこちらも過去幾人もの所有者を出したエースのカード。こちらは当代最高の能力を持つ者の証明です。我が主の前回のカードでありますし、やはり要注意です。」
「そして今回はイレギュラー戦であり、その理由ともなっているのは我が主のカードが不明ということ。歴代の例でキングが2枚もあったようですが、果たして?もしやエースが2枚ともなれば激戦必死であります‼︎」
ブックメーカーが矢継ぎ早に解説していく。どうやら盛り上がりもいいようだ。画面の各参加者への投票状況がどんどん上がっていく。やはり、一番人気はキングだろうか?
カードランクの上にはカウル・ウェーバー、と書かれていた。
確かに、カウル・ウェーバー本人であれば間違いないだろう。それは現在の経済王とも謳われる投資家の名であるからだ。まったくもって正常な判定であり、適正なオッズといえるだろう。
他に有名どころといえばクイーンだろうか?事前事業家としてメディアで話題のシスターの名があるようだ。地味にジャックがオッズよりも人気。バウンティハンターという職業がいいのかも知れない。
いずれにしろ、頃合いは良いようだった。
画面が最初に映し出されていた場所に戻る。ブックメーカーが移動すると、1人の女性が現れた。
手にカードの束が持たれている。
「ふむ、よいようですな。さっそく始めてまいりましょうか。・・・第1回戦は」
ブックメーカーに促され女性、ディーラーはカードを3枚引き、カメラの前に引いた3枚を見せる。選ばれたのはジャック、クイーン、そして10(テン)。
「おっと、これは高い数字同士の戦い。実に楽しみでございます‼︎今回の脱落者は一名。」
ディーラーが後ろに下がり、画面がブックメーカーによっていく。にまり、と彼が笑う。そして、
「ゲーム、スタートです‼︎」
謎の祭典の始まりは高らかに宣言された。
ディーラーを先に出すために、若干の変更があった。
サイドストーリーの展開のために、先に客前に出し印象付けをする必要があった。