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八話

 まずは氷華は自身が受けた依頼書を二人に見せる。




 人狼ウルフマン討伐


 ランク・・・・B


 報酬・・・・30,000ペター


 出没場所・・・・フォーラス草原、フォーラス山


 期間・・・・火の月の60日(肆曜日)まで




 この世界での一年は364日であり、四つの月から成り立っている。元の世界で言う春が風の月、夏が火の月、秋が土の月、冬が氷の月で、一月辺り91日。一週間七日で曜日は壱曜日、弐曜日、参曜日、肆曜日、伍曜日、陸曜日、漆曜日と表される。


 今日は確か‥‥火の月の38日。まだ二十日以上あるな。


 急でない事から少し安心する来栖。氷華はそんな来栖を横目で見ながら淡々と説明に入る。


「まず、対象のウルフマンは人型で体長二メートル程の人型。極めて高い知能を持つとされ、多くのワイルドウルフを従え、縄張りを作る。攻撃は単純でその素早さを活かした接近戦で爪を武器に戦うわ」


 なんかツインベアと似てるな。まぁ、あっちがパワー型とするならウルフマンはスピード型か。今のステータスなら反応出来ないって事はないだろう。


「レベルはわかるか?」


 頼葉は氷華に最も気になっていた質問をする。


「確か六十越えだったはずよ。それがどうかしたの?」


「いや、なんでもねえ」


 六十か、十分だな。本当ならもう少し高い方が嬉しかったんだけど、そうわがままも言ってられないか。


「報酬と経験値の割り振りとかはどうすんの?」


 報酬は三分割でいいとしても経験値はパーティー組まなきゃ総取りになるからな。かと言って、氷華がパーティーを組むかどうか。


 誰もいい答えが見つからず、その場が沈黙に包まれる。


「私が報酬を貰うから、代わりにあなた達は経験値でどう?」


 そりゃあ、願っても無い提案だが、氷華はそれでいいのか?


「俺とクルスはそれでいいが、お前はいいのか?」


 それなりに強けりゃお金はどうとでもなる。それよりも経験値の方がよっぽど大切だと思うんだが‥‥まぁ、そこは価値観の違いか。


「ええ」


「じゃあ、これで決める事は大体決めたな。後は‥‥作戦か」


 鬼門はここだよな。氷華とは今回だけの味方だし、いつ敵になるかはわからない。うかつに手の内を明かせないが、そうすると今度は作戦が立てられない。難儀なもんだな。


 来栖と頼葉は隠すほどのスキルを持っていなかったが、それすらも知られたくはなかった。多彩なスキルを使うであろう氷華も同じ気持ちだろう。


「まぁ、ここは無難に一部スキルだけを教え合わないか? それなら、最悪そのスキルが広まるだけだし、いいだろ?」


「‥‥それならいいわよ。ただし、提案したそちらからどうぞ」


 やっぱりそうなるか。別にいいけど。教えてとよさそうなの、っつたら‥‥


 来栖は適当に三本、ナイフを取り出すと片手で持つ。


「これはさっき見たと思うが‥‥」


 近くの木に狙いを定めると、三本とも勢いよく投げる。全てがきれいに木の幹に刺さると、来栖は氷華の表情を伺う。氷華は一切動こうとせず、来栖の次のアクションを待っていた。


 これだけじゃ、駄目ですよね〜。かと言って、あれを見せるのも難しいしな‥‥


 来栖が頭を悩ませていると、頼葉がその顔を覗き込む。


「クルス? どうかしたのか?」


 ちなみに来栖と頼葉は別々に修行していたため、お互いに成果は知らなかった。


「あぁ、対人向けのスキルなんだけど、危なかっしくて見せられないかな〜って」


 実際、ライに使っても普通に怪我する気がする。まぁ、無理かもしんないけど。


「ナイフ貸して」


 氷華は来栖に手を伸ばし、ナイフを要求する。


「いいけど‥‥何に、使うつもり?」


 氷華は無言のまま手を出し続ける。仕方がなくその手の平にナイフを一本置くと、魔力を集中させた。魔力はナイフを包み込む様に形を作ると、固まり始めた。


 これって‥‥凍ってる?


 氷華に返されたナイフの刃の部分は氷で固められ、殺傷能力は限りなくゼロだった。


「これなら、問題ないでしょ?」


 かなり精密な魔力コントロール。やっぱり強いな。


 来栖は追加で三本ナイフを取り出すと、氷華に手渡す。氷華は先程と同じ要領で凍らせ、返却する。


「ライ、ちょっと手伝って」


 頼葉はわざとらしくため息をつくと、来栖と相対する。その構えには隙がなく、頼葉もかなりの修行を積んだ事がわかった。


「ほら、さっさと来いよ」


 来栖は凍った四本のナイフの内、二本を腰に差して二本を手に持ち呼吸を整える。


 しょうがない、やりますか〜


 一気に頼葉との距離を詰めるとナイフを大振りして、斬りつけた。頼葉はそれをバックステップで軽々と躱そうとするが、来栖は手から力を抜いて超至近距離でナイフを投げ、不意を突かれた頼葉は腹に直撃する。


「クッ」


 来栖は同じ要領で左手のナイフを肩に直撃させると、頼葉が怯んでいる間に新たなナイフを二本取り出し、両手のナイフで鋭い突きを二連続で放つ。刃がなかったため怪我はしなかったが、頼葉は勢いよく後ろに飛ばされる。


「ふぅ」


 こなれた動作でナイフを仕舞うと、氷華の方に向き直る。


「どう、だった?」


 これはかなり練習したからなぁ。結構自信あるんだけど‥‥


「それなら問題なく使えると思うわ」


 お、おう。なんかもっと、かっこいい!! とかないの? いや、氷華が言うわけないか。


「その技はなんて言うんだ?」


 頼葉は体についた土を払いながら立ち上がる。


「‥‥四連流舞」


 来栖は目を逸らしながらボソッと呟く。


 いいスキルなんだけどさぁ‥‥これ名付けた人、厨二だよな。かっこいいんだけどさ‥‥確かにかっこいいよ。でも、後々の事も考えて欲しかったな。


 笑われるかと思っていた来栖だったが、予想していた様な反応はなかった。氷華は興味なさげに来栖を眺め、頼葉は深くため息をつく。


「えっ、なにその反応?」


 ライの奴、俺の事馬鹿にしたよな? くそ、これ名付けたの俺じゃねーよ。


「あぁ、悪い。クルスの気持ちに共感してた」


 えっ? って事は?


「今から、俺のスキルを見せる」


 そう言って頼葉は近くに生えていた五メートル程の木の前に立つと右腕を引いて構える。


 あの様子だと、パワー系のスキルか。でも、ライのステータスを考えるとなぁ‥‥


 頼葉が引いていた右手を強く握りしめると、僅かに光を放つ。


 なんだあれ?


「魔力操作‥‥」


 来栖の隣にいた氷華が誰に言うわけでもなく呟く。


「ふん!!」


 勢いよく光る拳を前に出すや否や、木の幹が消し飛び上端が頼葉に向かって倒れる。頼葉はそれを片手で難なく受け止めると、横に退かす。


 まじ、かよ‥‥俺の最大火力より威力あるじゃねえか。


「名前は?」


 氷華は来栖のスキルに比べ、幾らか興味を持ったのかスキル名を訊く。頼葉はそれを聞くと、息を吐き出してから目を瞑る。


「魔衝突」


 乙。これ、名前だけなら俺のより酷くね?


 口を開きかけた来栖だが、自分のスキルも人の事を言えない事を思い出し、口を閉じる。


「この世界にあるスキルの名前なんて、そんなものよ」


 氷華は大弓を片手に持つと、逆の手に腕の太さ程の氷の矢を作る。


「それならさっき散々見たぞ」


 文句を言う来栖の声は聞こえていなかったかの様な氷華は誰もいない草原のど真ん中を向きながら弓に矢をセットする。


 無視かよ。まぁ、きっとここからが違うんだろうな。


散氷矢アイスリード


 リード‥‥散弾、か?


 弓から放たれた矢は一直線に飛びながら分裂を始めた。一本、二本と次第に増えていき、最終的には八本の氷に分かれる。その全てが等速度で進み、形も同じ矢の形状をしていた。


 遠距離の範囲攻撃か。一度に倒せる数に限界はあるが、それでも一気に倒せるのは楽だな。


「これで、いいわね?」


「十分だ。だが、これだけスキルで細かい作戦は立てられない。大まかな役割だけ決めよう」


 流石にライでも作戦は立てられなかったか。まぁ、ざっくりとしてた方が気楽でいいんだけどな。ツインベアの時とか、緊張感やばかったし。


「まずはクルスはウルフマンの注意を引いてくれ」


「あぁ」


 俺のステータス的には妥当だが、嫌な役割だな。せっかくのスキルを使う機会がないとか、寂しすぎる。


 まだ四連流舞を実践で一度も使えていない来栖は肩を落とす。


「次に、氷華は周りにいるワイルドウルフを始末して、終わり次第クルスの援護に回って。俺はワイルドウルフの相手をする」


「わかったわ」


 作戦会議は大まかな役割を決める終わった。その後、三人は移動のリスクも考え、その場で野営をする事に決める。最初は女子である氷華がそんなんでいいのか、と思った来栖だったが全く気にしていない本人を見ると心配するのが阿呆らしくなり、結局口にしないままになった。




 火などの準備をし、夜食を食べ終えると頼葉が夜の見張りを時間で割って担当する事を提案する。


「じゃあ、見張りの順番は氷華、クルス、俺にする。一人当たりの時間は三時間程度、いいな?」


 頼葉が決めた順番に来栖は首を縦に振る。隣にいた氷華は無言だったが、沈黙は肯定と捉えた来栖と頼葉は氷華から少し離れた所まで移動すると、素っ気ない地面に横になる。


 あ、星空が‥‥きれいだな〜


 仰向けになって寝っ転がった来栖はその視界に何気なく満天の星空が映る。


「なぁ、ライ」


「ん? どうかしたか?」


「きれいな、星空だな‥‥」


 特に理由があった訳ではない。ただ、何となく。来栖は思うがままに呟いた。


「そうだな」


 やっぱり、ライはこう言うの興味ないか。


「元の世界でもこんなきれいな空は見た事がないな」


 無数の星々が真っ暗な空を光輝いている様子。限りのない星は空を飾っていた。


 何でかな? こういう時って、元の世界の事を‥‥思い出すんだよな。召喚された時、誰も聞いてなかったけど、元の世界に帰れるのかな? いや、帰れたとしたら俺は帰るのか?


 少し離れた位置から振動が伝わってくる。その振動は数十秒で収まり、無音が場を包み込む。


 氷華が、戦ったのか。そういや、何であいつってあんなに強いんだろう。ソロであそこまで強くなるって、相当だよな。一人でレベル上げか‥‥ま、不動峰達よりは好感持てるわな。明日も、戦闘か。今日は、早く寝よう‥‥


 来栖は意識を静かに手放した。

はい、テスト終わりましたので、再開します。少しテンションが高いので更新ペースが上がるかな〜、と思います。


申し訳ありませんがこれからはストーリー進行が少しゆっくりになる‥‥はず。

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