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五話

 アイザック王国城下町から歩いて半日程歩き、日が沈み始める。景色を遮るものはほとんどなく、草原がどこまでも広がっていた。来栖と頼葉が少し疲れを感じ始めた頃、本日二十七回目となる魔物の群れと遭遇する。


「クルス、オークは俺がやる。他を頼んだ」


 今回出現した魔物は豚の様な見かけのバイオレットピック三体、それとファンタジーの代名詞であるオークが二体とゴブリン三体だった。


 この中じゃオークが飛び抜けて強いからな。俺の相手は‥‥豚とゴブリンが三体ずつか。


 来栖は腰からミスリルナイフを抜くと、六体の魔物と相対する。


 バイオレットピックの攻撃方は基本的に突進だろ、ゴブリンの武器は‥‥棍棒二体に、ナイフが一体か。


 来栖がそうこう考えている内に一体のバイオレットピックが突進して来る。


「短気は損気、ってか」


 来栖は突進をギリギリで避けると、すれ違いざまに前足を片方切りつける。


 遅すぎだろ。


 ツインベアとの死闘を繰り広げた来栖にとって格下の雑魚との戦闘にはなんの恐怖も感じなかった。面倒になった来栖はゴブリンとの距離を一気に詰めると、振り下ろされた棍棒を受け止め、両腕を切り落とす。


 しかし、殺しちゃいけないってなると難易度高いよな〜


「おっ、と」


 後ろから迫っていたナイフを頭を下げて躱し、ゴブリンの腹に肘を入れ意識を奪う。


 後は‥‥三体か。


 今度は、仲間が一瞬でやられ困惑しているバイオレットピック二体に蹴り飛ばす。最後に残ったゴブリンは棍棒を振り回し懸命に来栖に攻撃するがその攻撃は全て空を切る。


「終わりだ」


 来栖はナイフを手の中で半回転させ、刃の付いていない背の部分でゴブリンの首を殴る。


「ふうー、終わった、終わった。さて、ライはどうなったかな?」


 頼葉はオークの力任せの攻撃を全て避け、素手で着実にダメージを与えていた。


 ライの奴、勉強したのか結構動きが様になってんだよな。まぁ、この分だとすぐに終わるか。


 手持ち無沙汰な来栖は何気なく辺りを見渡していると、倒れたゴブリンの持っているナイフが目に入る。


 あれって、奪えるよな。


 ミスリルナイフを血を拭き取ってからしまうと、ゴブリンの手からナイフを無理矢理奪うと観察を始める。


 手入れされてないせいか、刃がボロボロだな。全体的に汚いが‥‥どこかで使えるかもしれない。


 来栖はとりあえずゴブリンのナイフを袋に入れておく。


「クルス、終わったから行くぞ」


 頼葉の声に反応した来栖はすぐにその隣に並び、歩く。


「まだ着かねえのかよ」


「あと少しのはずだ。ところで一つ言い忘れてた事があった」


 頼葉は袋の中を漁ると元の世界にいた頃使っていたスマホを取り出す。


「それがどうかしたのか?」


 この世界じゃ、電波飛んでねえし使えねえよな〜


「昨日気付いんだが‥‥これ、魔法道具マジックアイテムになってるんだよ」


 マジックアイテム、文字通り魔力を込める事で魔法を使える道具の総称。魔法陣を刻む事で作られている。


「スマホが? どんな魔法が使えんの?」


 スマホは‥‥どこに入れてたかな。確か、制服のポッケに入れっぱだったような気が‥‥


 来栖はカバンから制服を取り出すと、その内ポケットからスマホを抜き取る。


「あった。で、どうすりゃいいんだ?」


 使い方のわからず、まずは電源ボタンを押してみる。


「あ、普通についた」


 スマホは問題なく起動し、光を放つ。


 電池が残り2%か。ここじゃ充電出来ないからな。じきに使えなくなるのか。


「大事なのはここからだ。スマホに魔力を込めてみろ」


 魔力を込める? 込めてどうすんの? まぁ、やればわかるか。


 言われた通り来栖はスマホに魔力を込める。レベルアップにより上昇した来栖の魔力はどんどん吸い込まれていく。


「おぉ、なんか奪われてく‥‥って、あれ?」


 来栖は画面に表示されている内容が先ほどと変わっている事に気づく。


 残り電池が10%になってる。


「気づいたか。このスマホ、どうやら魔力を込めるだけで充電出来るようだ。しかも、それだけじゃない」


 頼葉がそう言い終わると同時に来栖のスマホが振動する。


 ‥‥メール、か? えっ? この世界で‥‥


「使える、のか?」


 来栖の持つスマホに写っていたのは頼葉からのメールだった。


「あぁ、メール、電話、コンパス、電卓、ライト、この機能のみは使えるようだ」


 メールと電話はともかく、コンパスに電卓とか‥‥使い道なくね?


「メールと電話は持っているもの同士でしか出来ないよな?」


「多分な。これは俺らの中でだけ使える連絡手段みたいなもんだろ」


 まぁ、それなりに需要はありそうだな。ライとしか使わなそうだけど。


 本当に他の機能が使えるか気になった来栖はソーシャルゲームのページを開こうとするがエラーがでる。


 そもそも回線が繋がってないしな〜。ゲームは無理か。いや、待てよ‥‥


「ライ、これってオフラインなら遊べるんじゃないか?」


「試してみたが駄目だった。多分、この世界に来る時に少しいじられたんだと思うが」


 来栖はチェスのアプリを立ち上げようとするが画面が暗くなり、強制終了される。


「くっそ、駄目か。いじられるって誰に?」


 まぁ、異世界に来るだけでスマホの機能が変わるのはおかしいな。


「そんなの知るか。それより、今日泊まる村が見えて来たぞ」


「えっ? まじで!! どこどこ?」


 来栖は嬉々と顔で遠くを見る。すぐに村を見つけると、目を細めて村の様子を観察する。


「あれが、クレイ村か」




 クレイ村は塀に囲まれた王都と違いなんの境目もなく、どこからでも入る事が出来た。そんなに規模の大きな村ではなさそうで、辺りを歩いている人はおらず、農作業を終えた風な老人が歩いているだけだった。


 RPGで言うところの序盤の村か。寂れてて年寄りがやたら多く、イベントが起こる。‥‥本当に起こりそうで怖いな。


「すいません。この辺りに宿屋ありますか?」


 来栖が風景に気を取られてる間に頼葉が老人に声をかける。


「宿屋はこの道を真っ直ぐ進めばあるはずじゃ。ところでこんなとこに何の用じゃ?」


 あ、イベント臭がする。


「レイラック村に向かう途中に立ち寄っただけです」


「そいつは運がなかったの。レイラック村へ向かう道は山賊が出るから今は使わんほうがいいぞ」


 からの?


「じゃが、今朝になって王都から討伐隊が派遣されたようじゃ。じきに使えるようになるじゃろう」


 討伐隊‥‥少し、気になるな。


「お話ありがとうございます。それでは」


 頼葉は軽く礼をすると、真っ直ぐ歩き出す。




 二人が無言で道を進んでいると、周りの簡素な建物に比べると幾分か豪華に見える建物を見つける。


 あれが宿屋か?


 来栖は建物に目を通すが看板などはかかっていなかった。


「あれって宿屋なのか?」


「さぁな。入ってみれば、わかるだろ」


 そりゃ、そうだ。


 納得した来栖の耳が反響する金属音を捉える。


 これは‥‥剣と剣がぶつかり合う音? って事は、近くで戦闘があるのかよ。


 頼葉も来栖と同じ事を考え、二人は音がする建物の裏側に回り込む。色鮮やかな花が植えられている裏庭にたどり着くと、遠くに戦う五つの影を見つける。裏庭から少し外れた所にいる五人は剣や槍などを持ち戦っていた。


「あれが、討伐隊か?」


 思ったより少ないんだが‥‥


「まぁ、近寄っても攻撃されはしない」


 頼葉はそれだけ言うと、一直線に戦う影へと歩く。またしても来栖は頼葉の背中を追いかけ、五つの影に近づく。


 五人でバラバラに戦ってるのかと思ったけど、どうやら一対四みたいだな。


「ん、誰だ?」


 一人で四人の攻撃をさばいていた人物が来栖と頼葉に気づき、声を漏らす。その声を聞いた四人も振り返り、二人の姿に気づく。


「あれっ? もしかして来栖?」


 来栖は振り返った人物がクラスメイトである事がわかると、反応に困り果てる。頼葉は何を考えているのか、悠々と相手を見ていた。


「こんなとこで、会うなんてな‥‥古部」


 裏庭の外れで訓練していたのは古部を含めたクラスメイト四人と、三十代程の騎士だった。騎士は手入れの行き届いた金髪に青い眼をもっていた。


 おっと、思考が逸れた。今は、古部達だな。こいつらとは不動峰らと違って少しは仲良いし、問題ないだろ。


 クラスの地味系に属していた来栖と頼葉は、自然と古部達との仲は悪くないものになっていた。


「来栖達はどうしてこんな所に来たの?」


「うーん、ちょっとレイラック村に用があってな。立ち寄っただけだ。古部達が山賊討伐隊なのか?」


 パッと見た感じそこまで強い、という気はしないんだが‥‥大丈夫か? いや、仮にも勇者だ。それなりに強いはず。


「うん。あ、そうだ。この人を紹介するね。この人は王直属部隊の一人のブライアンさん。僕達の指導をしてくれているんだ」


 古部はそう言って金髪の騎士の紹介をする。


 あ〜、どおりで強そうなわけだ。勇者を任されるほどの実力者か。レベルが気になるな。


「お前達もこないだ召喚された者だな?」


 ブライアンは真っ直ぐと鋭い目つきで二人を見る。


「あぁ、そうだ」


 頼葉は来栖の前に出ると、物怖じせずに答える。


「随分レベルが上がっているんだな。何と戦った?」


 ブライアンは言葉を言い切ると同時に殺気を放つ。


「!?」


 来栖と頼葉は反射的にブライアンから離れ、来栖はナイフを抜き、頼葉は拳を構えていた。


 まずい、閲覧を使われてたか。閲覧の上位魔法とかでステータスを見られてたら厄介だ。


「えっ? ちょっと、何やってんの」


「この短期間で何をしたかは知らないが大したものだ」


 ブライアンは困惑する古部を尻目に、会話を続ける。


「何でそんなに戦る気なの? 特に戦う理由はないだろ?」


 極力平和的に収めたいな。正直、こいつとやりあっても勝てる自信がない。


「どうにも君達の強さが掴めなくてね。悪いが使わせてもらった。代わりと言っては何だが、私のレベルを教えようか?」


 ステータスまではバレてないか。とりあえずは助かった。


「そうか、なら勝手に見させてもらう。閲覧リサーチ


 頼葉がブライアンに向かって閲覧を使うと、目の前に結果が表示される。




 閲覧失敗エラー




 エラー、だと?


 ブライアンは結果を見て硬直する二人をあざ笑っていた。


「無駄だ。中級魔法、拒否ブロック。他者からの閲覧をある程度防ぐ事が出来るものだ。覚えておくといい」


 これは、早急に覚えたいな。


「で、結局何がしたいの?」


「‥‥明日の山賊討伐に君達も参加しないか?」


 やっぱり、そうなるか。何かそう言うフラグ立ってたからな。仕方がないか。


「メリットは?」


 頼葉がブライアンの質問に質問で返す。


「少しだが報酬を出そう。それに、対人戦のいい訓練になる。君達も経験しといた方がいいんじゃないか?」


 た、たしかに。


 その言葉に揺らいだ来栖は頼葉に助けを求めようと視界を移すと、お互いに目が合う。


「‥‥‥‥」


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