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2/22

一話

 昼休みに活気付く教室。普段と何一つ変わらない、光景だった。クラスの中心に立つ派手な男子達。その影に隠れる地味なメンツ。女子は三つのグループに分かれ、昼ご飯を食べている。残すのはクラスで孤立している人が数人。本当に、普通などこにでもありそうクラス。だが、その普通・・は一瞬で奪われる。




「なぁ、今週末に八人レイドの龍神王の攻略に行かね?」


 真風まかぜ来栖くるすはスマホゲームのクエストをプレイしながら、たちばな頼葉らいはに話しかける。座りながらスマホを弄っていた橘がその言葉を聞き前のめりになり、来栖に顔を近づけた。


「遂に、行くか!! でも、八人もメンバー集まるかな?」


 そこなんだよなぁ。流石に二人で行くわけにもいかねぇしな。


「知らね」


 スマホゲーに意識の大半を向けていた来栖は適当な返事を返すと、再びゲームに集中する。思いつきで言った来栖に対し、頼葉は真剣な表情をしていた。


 真風 来栖。前髪で目が隠れそうな程の長髪で、目つきが鋭い。誰とでもある程度は話すが、他者に対する関心が薄く、クラスでは基本的に頼葉としか話さない。重度のゲーマー。


 橘 頼葉。坊主を少し伸ばした程度の髪の長さで、低身長。静かそうな雰囲気を醸し出し、眼鏡をかけている。来栖よりクラスメイトとの会話が少なく、ほとんどの時間をゲームをして過ごす。ゲームの廃人。


 はぁー、パーティー集めとか面倒いな。何かいい方法ない──


 来栖の思考が突如、途切れる。


 周りの、景色が‥‥変わった!? 赤い絨毯に石造りの壁、それに石柱までって‥‥ゲームかよ。


 コアゲーマーの来栖は周りの景色と脳内にあるゲームでの城とのイメージが一致する。クラスメイトもいるようで突然の変化にざわめいていた。


 このシチュエーションは‥‥異世界召喚、か? だとすると‥‥


 来栖は何を考えたのか辺り全体を見渡し、赤い上等な服を着たおっさんを見て満足する。


 あぁ、やっぱり。国王が勇者を召喚するやつか。って事は、異世界チートか。やっべ、テンション上がってきた。


「ライ、この状況どう思う?」


 隣で落ち着いてる様子を見る限り、俺と同じ考えだろうな。それにしても他の奴らは騒ぎすぎだろ。


「ゲームだな」


 そっち系かよ。


「これはどう見ても異世界召喚だろ。そういや、お前ラノベ読まなかったっけ」


 ライトノベル等の異世界ものには二種類ある。一つは異世界転生、死んじゃったけど神様が生き返らせてあげる。的なノリのやつだ。もう一つが今の状況、異世界召喚。魔王が侵略してくる!! でも戦力が足りない‥‥よし、勇者を呼ぼう、で召喚されて戦わされるタイプ。


「俺はいつでもゲームで手一杯さ」


 ドヤ顔を決めて宣言する頼葉。来栖はそんな頼葉をスルーして王様? に視線を向ける。


 焦ってないし、この人数で召喚されるのは想定済みか。なら、巻き込まれ系はないな。


「静粛に!!」


 王様の隣にいた男が叫ぶ。男は腰に剣を差し、鎧を着込んでいた。


 あいつは騎士団の団長ってとこか。


「私はアイザック王国の国王だ。率直にて言おう、魔王討伐のために諸君らを異世界から召喚させてもらった」


 魔王とか、まじファンタジーを感じるわ。


 来栖と頼葉を含む数人を除き、再びざわめき始める。


「俺らを強制的に戦わせるのか?」


 不動峰ふどうみね 鋼夜こうや。ワックスで逆立たせた茶髪に、女子を虜にする甘いマスク。加えて人当たりも良く、スポーツ万能。モテない男子が欲しがる全てを持った男だ。


 鋼夜は混乱するクラスを落ち着かせるために、堂々とした声で質問する。その答えを聞こうとざわめいていたクラスメイトが鎮まっていく。


「戦うか戦わないかは自己判断してもらう。‥‥ただ一人を除いて」


 勇者、か。


「どう言う事だ?」


 鋼夜は周りの人の気持ちを代弁するかの様に王に問う。


「君達の中に一人だけ勇者がいるはずだ。その者には、魔王と戦ってもらう」


 王様の言葉でクラス全体が不安に包まれる。


「誰が、勇者なのですか?」


 浅野あさの 里穂りほは恐る恐る尋ねる。


 浅野 里穂。クラスの女子の中でも一位二位を争う程人気があり、その主な要因となっているのがその美貌である。赤みのかかった茶髪とその笑顔で男子から絶大な支持を得ていた。


 そこなんだよなぁ。俺、勇者って柄じゃないし、それなりに強けりゃいいや。


 騎士団長が王様の前に出て、代わりに答える。


「それは下級魔法の一つ、開示オープンでわかります。意識を目の前に集中させて、開示オープンと言えばステータスプレートが現れますので、まずはそれを見てください」


 なるほどね。ステータス系の異世界か。ライの言う通りゲームが少し混じってんな。


開示オープン


 


  真風まかぜ 来栖くるす


  年齢・・・・・・17歳

  ギルドランク・・・・G(G〜SS)

  職業・・・・・・盗賊シーフ


  レベル1

  力・・・・14

  耐久・・・8

  魔力・・・4

  精神力・・・5

  敏捷・・・23


  スキル 盗むスティール

 

  称号 異世界からの来訪者




 おぉー、すげぇなこりゃあ。職業はシーフか、結構好きだけどチートではないよな。ステータスも普通そうだし‥‥敏捷だけ飛び抜けてんな。スピード型確定コースっと。


「ライ、お前はどんなステータスだった?」


 来栖は真剣な顔つきをしている頼葉のステータスプレートを覗き込む。




 たちばな 頼葉らいは


 年齢・・・・・・17歳

 ギルドランク・・・・G

 職業・・・・・・魔法使いマジシャン

 

 レベル 1

 力・・・・4

 耐久・・・5

 魔力・・・22

 精神力・・・12

 敏捷・・・7


 スキル 炎弾ファイア


 称号 異世界からの来訪者




 ライは魔法職か。確かにライはゲームで攻撃系魔法職しかやらないもんな。あ、俺もスピード系ばっかだった。そう言うとこが反映されてんのか?


「あ!!」


 誰だよ、馬鹿でかい声出しやがって‥‥って、古部ふるべかよ。あいつ騒ぐキャラじゃなくね? もしかして、勇者か?


 古部ふるべ しゅん。クラスにいる地味グループの一人だが、地味ながらそれなりのイケメンで陰で人気がある。しかし、本人は男子としか話さず、女子とは全く喋らない。


「どうしよう‥‥僕が、勇者だ‥‥」


 御愁傷様でーす。でも俺の予想だと不動峰か浅野だと思ったんだけどな。そこまでテンプレじゃないって事か。古部のステータスはどんだけ高いんだ?


 来栖は背伸びをして、人だかりを斜め上から見下ろす。




 古部ふるべ しゅん



 年齢・・・・・・17歳

  ギルドランク・・・・G

  職業・・・・・・勇者ブレイバー


  レベル1

  力・・・・20

  耐久・・・20

  魔力・・・ 20

  精神力・・・ 20

  敏捷・・・ 20


 スキル


 称号 選ばれし者




 まぁ、高いちゃ高いけど‥‥ショボくね? 敏捷とか俺の方が上だし、魔力だってライの方が高いじゃん。これって、もしかして優遇悪いパターン?


「君が勇者か?」


 王様が困惑する古部の前に立ち、目を見つめる。古部はオドオドしながら、


「‥‥はい、そうです」


 小さな声で答える。


「そうか‥‥他の者は勇者の仲間になるかどうか、自由に決めてくれ」


 王様が奥の扉の向こうに消えて行くのをその場にいた全員が静かに見ていた。


 あれ? 今、落胆したよね? 王様、古部の顔見てテンション下がったよね?


「今からこの世界の事についての幾つか説明を始める。聞きたくない者は出て行っても構わない。自主的な参加だが、極力受ける事を勧める」


 まぁ、これは聞いといて損はないよな。


「クルス、古部のステータスどうだった?」


 ライは面倒くさがって動いてなかったっけ。


「全ての値が二十。以外と大したことないだろ?」


「成長補正がかかるタイプかな?」


「もしくはスキルがやたらいいの手に入るとかか」


 まっ、どうでもいいや。何人かここかは出て行ってんな。この話聞かないとか馬鹿すぎだろ。


「チュートリアル、聞くだろ?」


「一応ね」


 一応かよ。っと、話が始めるな。


「まず、君達が召喚された経緯について詳しく説明をさせてもらう。百年に一度の周期で魔物の中に飛び抜けた強さと知能を持つものが生まれる。我々はそれを魔王、と総称して呼んでいるがその強さは個体によって違う。三年前に誕生した魔王は絶大な力と優れた統率力で勢力を広げ、遂には人間の領土の半分が奪われた。よって、アイザック王国は古来より伝わる勇者召喚を行い、魔王との戦いの戦力とする事になった」


 やっぱり勇者は別格の強さっぽいな。


「俺らは戦力にならないってのか?」


 不満そうに訴え出る不動峰。


「そう言うわけではないんですが‥‥やはり勇者が特別なんですよ」


「ステータスの差は大した事なかったぜ」


 おぉ、ナイス質問。これで勇者の強さの秘密がわかる。


「失礼ですが勇者とあなた達はステータスの上がり方が桁違いなんです」


「それじゃあ、私達に戦う力はないのですか?」


 里穂は隣にいた女子から耳打ちをされると、すぐに質問をする。


「それについては、ステータスプレートの称号の部分に意識を集中させてみてください」


 何だ? まぁ、やってみるか。


開示オープン




  真風まかぜ 来栖くるす


  年齢・・・・・・17歳

  ギルドランク・・・・G

  職業・・・・・・盗賊


  レベル1

  力・・・・14

  耐久・・・8

  魔力・・・4

  精神力・・・5

  敏捷・・・23


  スキル |盗む

 

  称号 異世界からの来訪者



 


 で、この異世界からの来訪者に集中させればいいのか。




 異世界からの来訪者


 勇者召喚の儀により召喚された者。語学習得、経験値取得大幅補正、ステータス上昇値中アップ、




 へぇー、少しはチート貰えんだ。喋れるのもこれのおかげか。なら盗む、ってのにも説明あるかな?


 来栖は先程と同じ要領で盗むに意識を集中させる。




 盗む


 盗賊の基本スキル。対象が持っている物を攻撃と共に奪う。




 普通、だな。人相手に使ったらヤバい気がする。そういや、ライも一つスキル持ってたな。


「ライ、お前もスキルを──」


 来栖が頼葉に視線を向けると、すでに説明を開いていた。




 炎弾


 火属性下級魔法の一つ。炎の球体を作り出し、飛ばす事が出来る。




「スキルの説明が少なすぎる。試してみたい事が沢山あるや」


「‥‥言われてみればそうだな。これじゃあ、わからない部分が多過ぎる」


 全く気づかなかった。やっぱりライの洞察力は高いな。


「次に説明するのは‥‥‥‥」


 その後しばらくの間、来栖と頼葉は騎士団長の話を聞いていた。




 まぁ、要約すると魔物を倒せば経験値が手に入って、レベルが上がり、スキルを覚える。他にはギルドがあって、ランクに応じたクエストが出来ると。こんなもんか?




「最後に、パーティーについて説明します。ステータスプレートを出した状態で目の前にいる人と手を合わせるとパーティーを組む事が出来ます。パーティー内では経験値が分配される、生死がわかるなどの幾つかのメリットがあります。以上で説明は終わりなので王国に付く人は残ってそれ以外は解散して下さい」


 やっぱり扱い悪いな。まぁ、いいけど。


「ライ、申請するぞ。開示オープン


「あぁ、開示オープン


 来栖と頼葉が手を重ねると、二人の手が僅かに光を放つ。




  真風まかぜ 来栖くるす


  年齢・・・・・・17歳

  ギルドランク・・・・G(G〜SS)

  職業・・・・・・盗賊シーフ


  レベル1

  力・・・・14

  耐久・・・8

  魔力・・・4

  精神力・・・5

  敏捷・・・23


  スキル 盗むスティール

 

  称号 異世界からの来訪者


 パーティー 橘 頼葉




 これでいいな。ここにいつまでもいてもしょうがないし、そろそろ‥‥ん?


 来栖は自分の隣に人が立っている事に気付き、顔を向ける。


「えーと、浅野さん? どうしたの?」


 俯いている里穂は来栖に声をかけられ、ビクッとする。


「そのー、来栖。私達とパーティーを組まない?」


「私達?」


 来栖はせっかくなので、他の人のパーティー状況を探る。


 まぁ、パーティーを組む気は無いんだけどね。


「不動峰を中心として男女十五人位のパーティーよ。ほら、あそこにいるのがメンバー」


 そう言って里穂は部屋の中で一際数の多い集団を指差す。


 あー、クラスのイケイケ系が見事に揃ってるな。あの中に入れとか死ねと同義語だろ。


 そう答えるわけにもいかず、来栖は理由を考える。


「目的は何なの?」


「取り敢えずはレベル上げだって。鋼夜はある程度まであがったら魔王へ挑むつもりだと思うわ」


 おいおい、それ勇者の仕事だろ。自分が勇者じゃない事ひがんでんのかよ。


「そっか。俺とライは観光が目的だからそのパーティーには入れないわ」


 里穂は肩を落として暗くなる。


「じゃ、じゃあさ。私もパ──」


「わりー、俺らもう行くから。またな」


 あのグループに入るのは無理だっての。


 来栖は頼葉を引っ張ってそそくさとその場を去る。


「馬鹿‥‥もう、知らない」


 里穂は誰も聞き取れない程の声量で呟く。




 二人は王城から出る際に二百ペターを受け取る。


 二百ペターっつてもどんくらいかわかないからな‥‥まぁ、使いながら覚えるか。


 安そうな宿屋を見つけ、一泊する事を決める。その際に払った値段が二食付きで一人あたり二十五ペター。二人合わせて五十ペターを払うと、すぐに荷物(元の世界からの持ち込み物)を置く。


「この後どうする?」


「そんな事、聞かなくたってわかってるんでしょ?」


 やっぱりこいつと来て正解だったな。


「さぁ、図書館に行こう!!」


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