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十二話

 《真風 来栖》


 さーてと、格好つけたはいいけどどうすっかね〜。まぁ、この程度の魔物ならどうとでもなるか。それより気になるのが‥‥


 来栖は自分の近くにいるぐったりとした里穂と朱莉を見てから後ろにいる鋼夜達を見る。


 何でこんな状況になってるのかな?


 来栖は首を捻って考えてみるが、結論が出なさそうだったので里穂と朱莉を抱えて一度鋼夜達の所まで戻る。


「来栖、何でてめぇがこんな所にいるんだよ!! 早く里穂を放しやがれ」


 不動峰の奴、相変わらずうるさいな。ってか、こいつ弱くね? ‥‥何となくだけど。


「おい、何言ってんだ? 俺は死にかけてた浅野さんと朱莉助けたんだぜ? ただ黙って見てた奴が一丁前に吠えてんじゃねーよ」


 鋼夜に好き放題言って少し満足した来栖は里穂と朱莉を優しく下ろす。


「来栖‥‥何で、こんなところにいるのよ?」


 里穂が力を振り絞って立ち上がると来栖に向かって訊く。


 何で? 何で‥‥あー、確か情報収集だったっけ。でも、こいつらに説明してもなぁ‥‥


「んー、観光とかかな。そんな事より、今はあれをどうにかしようぜ」


 来栖は村に向かって来るスケルトンの集団を指差す。


「やりたきゃ、勝手にやってろ」


 マジでこいつ腹立つ〜。


「おい、でも最低限は手伝うのが常識だろ。俺はお前らの後始末するんだぞ」


 その来栖の馬鹿にした様な言い方が鋼夜の癇に障ったのか、来栖の胸ぐらを掴もうと手を伸ばす。それを来栖は素早くてを回避すると、ナイフを鋼夜の首に当てて鋼夜を睨みつける。


「てめぇ‥‥」


「やっぱり、お前‥‥弱いわ。もういいや、邪魔だから帰って。後は俺がやっとくからさ」


 鋼夜を解放した来栖は周りにいるクラスメイトを一通り見渡すと、使えそうなメンバーを厳選する。


 ‥‥ありゃ? まともなのがいねえぞ。困ったなぁ‥‥こんな雑魚の経験値は欲しくないから、うまくこいつらに倒させないといけないんだが‥‥


 予想外の弱さに来栖も思わず頭を悩ませる。


 まぁ、俺がギリギリまで弱らせてからこいつらに倒させればいっか。


 方針を決めた来栖はククリナイフを片手にスケルトンの集団へ向かう。


閲覧リサーチ




 スケルトン レベル27


 種族・・・・屍族アンデッド

 属性・・・・闇




 スケルトン‥‥アンデッドか〜。確か、アンデッドは頼葉の担当だったはず。属性は‥‥どうせ俺は使えないし、関係ないか。


 来栖が閲覧の結果を見ている間にスケルトンは来栖の目の前まで来ていた。


「おりゃ」


 スケルトンの斬撃を半身になって躱すと、首裏をナイフで叩きつける。


 こりゃあ、ヌルゲーだな。


 次に近くにいたスケルトン二体に決めると、一気に距離を詰めて頭部を殴り倒す。少し離れた位置にいたスケルトンが手に持った弓で来栖に狙いを定めていた。


「させねえーよ」


 スケルトンの手が弦から離れるより速く、手に持っていたナイフを投げつけ、弓ごとスケルトンの体を破壊する。


「あ‥‥」


 今、一本しか持ってないんだった。


 来栖は自分の浅はかな行動に後悔する。素手になった来栖を爪、剣、棍を持った三体のスケルトンが襲う。来栖はすぐに爪のスケルトンに近づくと、攻撃してきた手の手首を掴み、そのまま一本背負いを決める。


「ふぅー」


 同時に剣を持ったスケルトンと棍を持ったスケルトンが攻めてくると、棍の打撃を受け流し隙だらけになった体に素早くパンチを入れ、手に持った棍を奪い取る。


 レイラックで習った体術だけで事足りそうだな。


 奪った棍で剣とつばぜり合いをすると、力で押し切って吹き飛ばす。


「おい!!」


 来栖は突然、大声を出す。


「ここにいる弱ったスケルトンでも倒してレベルを上げろ。そうしたら少し戦える様になるだろ」


 来栖の言葉で何人かが動き出し、動かなかった者も少しずつ、つられる様にして動き出す。


 よし、これで雑魚の始末はやってくれる。後は‥‥こいつらを全部、倒すだけだ。


 来栖はボロボロの棍を構え、数十体といるスケルトンの群れに向かって行く。




 来栖が戦い始めてから半時間程が過ぎた頃、生き残っているスケルトンは一体もいなかった。


「これで、終わりか。随分と呆気ないな」


 来栖は敵から奪ったショートソードを投げ捨てると、村の入り口に足を向ける。


 ザッ、ザッ


 来栖の後ろで何かが土を踏みしめる音がする。


 まぁ、そんなに簡単に終わる訳がないよね。ってか、終わった試しがないんだよ。


 来栖が振り向くと、そこには通常のスケルトンの約三倍程の大きさのスケルトンがいた。装備は人間の大剣を片手剣の様に軽々と持っており、力の強さが伺えた。


閲覧リサーチ




 アークスケルトン レベル78


 種族・・・・屍族アンデッド

 属性・・・・闇




 おいおい、強くねえか?


 アークスケルトンは来栖と目があった途端に剣を振り下ろした。


 あっぶねえ〜、直撃したら死んでたぞ、これ。


 来栖は横に転がる事でどうにか回避するが、そのあまりの威力の高さにヒヤリとする。


 一旦、距離を取ってか──


 後ろに下がろうと膝を曲げた瞬間、アークスケルトンは剣でなぎ払いをする。来栖はどうにか上に跳んで避けきるが、空中では自由が利かずに追撃をもろに受けて村の入り口まで吹き飛ばされた。


「痛っ‥‥」


 どうにか、手を交差させて体を守ったけど‥‥


 門に叩きつけられた来栖は己の両手を前に出すが、肘から先でもう一度、曲がっていた。


 両腕が折れちまった。


「来栖、あんたそれ大丈夫なの?」


 力なく倒れている来栖を心配して里穂が様子を見に来る。里穂は口調こそいつも通りだがその表情は違い、いかにも不安そうな顔つきだった。


「あー、結構やばい」


 当初は、圧勝の予定だったんだけどな‥‥


 来栖は物思いに更けながらアークスケルトンに立ち向かって行くクラスメイトを眺めていた。里穂はそんな来栖には一切気にせず、黙って腕の治療を始める。


高位治療ハイヒール


 里穂の手が添えられていた右腕が、光と共にみるみるうちに治っていく。


「おぉ、浅野さんやるね〜」


 そう言えば回復魔法とか初めて見たな。何か幻想的だわ。


 治療を開始してしばらくすると右腕は完全に完治していた。来栖は右腕を持ち上げて、まじまじと見つめる。


 マジでくっついてる‥‥


「ほら、早く左腕も出して」


 来栖の右側に立っている里穂は手を伸ばすも左腕には届かず、差し出すように促す。しかし、来栖の頭には左腕を治すと言う考えは一切なく、クラスメイトを相手に一方的に暴れ回っているアークスケルトンを見ていた。


 片腕でいけるかな? レベルもかなり高いし、普通にやったら‥‥負けるよなぁ〜


 絶望的な状況にも関わらず来栖は笑いながら立ち上がる。


「ちょっと、来栖。まだ左腕が‥‥」


 里穂は来栖の正面に立ち、行く手を阻む。


 そういや、浅野さん、ナイフ持ってたな。


 来栖は里穂の身につけていた純白のナイフを掠め取ると、軽く素振りをして感覚を覚えた。


 光属性のナイフか。レア武器だな。


「浅野さん、これ少し借りてくわ」


 来栖は里穂の横を通り歩き出す。


 さーてと‥‥?


 ナイフを持つ右手を掴まれ、引っ張られる。


「行かせないから。そんな無謀な事をして死んだらどうするのよ!!」


 里穂は涙目になりながら必死で来栖の手を掴む。


「でも、俺が行かなかったら、浅野さんの仲間が死んじゃうよ?」


 来栖の目線の先にはアークスケルトンと傷だらけで戦うクラスメイトの姿があった。どうにか死人は出していなかったが、それも時間の問題であるのは里穂の目にも明白だった。


「でもっ!!」


 あまりに辛そうな里穂の表情に来栖の心が痛む。


 あんまり、見せたくないんだけどな‥‥浅野さんなら、いいかな。誰にも見せないって約束したのに破っちゃってゴメンね、ライ。


 来栖は掴んでいる里穂の手を強引に払いのけると、手を空中に伸ばす。


開示オープン


 来栖は自分のステータスプレートを表示すると、アークスケルトンへ向かって走り出す。


「えっ‥‥? 何、これ?」




 真風まかぜ 来栖くるす


 年齢・・・・・・17歳

 ギルドランク・・・・F

 職業・・・・・・ナイフ使いカプリシャス


 レベル47

 力・・・・324

 耐久・・・194

 魔力・・・105

 精神力・・・113

 敏捷・・・538


 スキル ナイフ投げ、刀剣現化ブレイド刀剣解放リリース

 

 称号 異世界からの来訪者、無謀者、旅人




 荒れ狂うアークスケルトンの目の前に立った来栖は指を二本立てて前後に動かす事で挑発する。


「さっきのは痛かったよ。やられた分はやり返させてもらうから」


 アークスケルトンは来栖に向かって素早く剣を叩きつけるが、すでにそこに来栖はいなかった。


 うん、本気でやれば十分に見切れる。けど‥‥


 アークスケルトンは離れた位置にいた来栖を即座に発見すると再び、剣で攻撃をしてくる。


「こっちが、攻撃する暇ないんだよなぁ〜」


 来栖は難なくアークスケルトンの攻撃を避け続けるが攻撃に転じる事が出来ずにいた。ラチがあかないと判断した来栖は一旦、アークスケルトンから距離を置く。


「しょうがねえけどせっかくだし、使ってみるとするか〜」


 振り下ろされる大剣をバックステップで回避すると、ナイフを正面に構える。


「初披露だ。しっかりと‥‥味わうんだな」


 来栖は手に持ったナイフを顔の前まで持ってくると、自身の大半の魔力をナイフに集中させる。来栖の魔力に呼応してナイフは光り輝き始め、その光は次第に強まっていく。


刀剣現化ブレイド、ルミナスソード!!」


 激しい光を放ちながら、ナイフに込められた魔力が型どり始める。里穂はまばゆい光の中で見えた光景に思わず声を漏らす。


「あれは‥‥剣なの?」


 真っ白な光の中から現れた来栖の右手には、真っ白な一振りの剣が握られていた。来栖は何度か剣を振って、重さを確認すると、剣の切っ先をアークスケルトンに向ける。


「さぁ、続きを始めようか」


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