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十話

 火の月の四十四日、来栖と頼葉は王都の図書館にいた。ここは本の持ち出しは原則禁止なので、知識は暗記するかメモを取るしかない。しかし、旅をする上でメモは邪魔になるので二人は手分けをして読もうと思った本を半分ずつに分担していた。


「うーん、やっぱり載ってないな〜。俺の方はなかったけどライは?」


「なさそうだ。どうやら王立図書館ここにはなさそうだ」


 ここのない情報とかあるんだな。こんだけ本があるんだから一冊くらいあってもいいと思うんだが‥‥


 王立図書館はアイザック王国にある図書館の中でも最も大きいが、十年程前に建てられたばかりなのでどうしても見つからない本がある。


「じゃあ、どうすんのよ? 他の街にでも行ってみるか?」


「それもいいかもな」


 勇者召喚により来栖らがこの世界に来てから軽く一ヶ月が過ぎている。すでにこの世界の文化にも慣れ、問題なく生活する事が出来ていた。


「適当に言ったんだけどいいのか?」


「ここいらで一度、情報収集をしておきたかったし、丁度いいか」


 情報収集、ね。確かにこの世界って情報量が圧倒的に少ないからな〜。特に昔の勇者の話とかはほとんど残ってない。


 頼葉は積み重ねられた本の山から一冊の本を出すと、一番後ろについていた地図を広げる。


「これはレギオンス大陸の地図だ。ここから近くて大きい街だと、南にあるブリュッセルか東のペルルウスだな。クルスはどっちがいい?」


 来栖が広げられた地図を見ながら地形などを読み取る。


 ペルルウスに行く場合だと‥‥山越えが必要か。途中も荒れた土地が多そうだしブリュッセルかな。


 ブリュッセルへの道は森と小さな山を越えるだけでペルルウスへの道に比べる比較的楽そうに見えた。


「じゃあ、ブリュッセルで」


「そうか、じゃあクルスがブリュッセルで俺がペルルウスだな」


「えっ?」


 ちょっと、待て。‥‥どういう事?


「どうせ今回は情報収集だけだ。別々に動いた方が効率がいい」


 まぁ、そうなんだけとさぁ‥‥


「別にそんなに焦る事なくないか? 二人でゆっくりと異世界を楽しもうぜ」


 流石に一人は寂しよなぁ?


「クルス、忘れたのか? 今、魔族と人間は戦争中だ。いつ襲われるかわかんない中、そんなに呑気な事を言ってられないだろ」


「そうだけどさー」


「そうと決まったら俺は旅支度をするわ。今日中に支度を終えて、明日の朝には出る」


 反論する暇もねえな。ライは一度言ったら絶対やるからな‥‥しょうがない、諦めるか。


「わかった。俺も明日中には出るよ」


「連絡はスマホでな。ある程度、情報が集まったら連絡してくれ」


「はいよ」


 頼葉は積み上げられた本を放置して図書館から出て行く。


「片付けは‥‥俺に押し付けるのかよ」


 来栖は深いため息を吐くと、本一冊ずつ本棚に戻し始める。


 でも、こないだなもライが来る前にボスを倒しちゃって、大した経験値貰えてなかったから焦ってんだろうな。何か、良いとこ取りしているみたいで気分悪いし。


 来栖は机の上にあった本を全て片付け、図書館を出るとどうしたもんかと考え出す。


 もう六時を過ぎてるし、準備は明日するかな? そういや、こないだの戦いでナイフかなり消費したっけ。補充しておこうかな。


 そう思った来栖はもう顔馴染みの武器屋に顔を出す事を決める。




 七時近くなり閉店しているかな、と思いつつも来栖は武器屋の扉を押してみる。すると、簡単に扉が開き奥にいた親父が顔を出す。


「はい、いらっしゃい‥‥って、あんちゃんか。久しぶりだな」


 親父は相変わらず元気な様で来栖の顔を見ると嬉しそうに笑い出す。


「そうだな、一ヶ月くらい来てなかったか?」


 以前に来たのがレイラック村に行く直前だから、そんなもんだろう。


「野たれ死んだかと思ったてたぜ。で、今日は何を買うんだ? どうせナイフだろうが、いろいろ入荷してるぜ」


 入荷、と言う言葉に来栖は反応する。


「新しいのがあるのか?」


「あぁ、上物だぜ」


 うーん、今回はメインで使うのを二本買えばいいかなぁ。そんなに金もないし、節約しておくか。


「一応、見してくれ」


「これだよ」


 親父は奥から一本のナイフを持って来る。ナイフは緩やかなくの字を描いた形をしており、他のナイフと比べるとかなり特徴的だった。


「ククリ、ナイフか?」


 この形状、元の世界にいた頃にゲームで見た事があるな。


「ほー、あんちゃんはこれを知ってるのか。そうだ、これはククリナイフだ。クルックス領の一部の地域で使われていた物だ」


「へー、ちょっと持ってみていいか?」


「あぁ、軽く振るくらいまでならいいぞ」


 来栖は早速、ククリナイフを手に取ると二、三度その場で素振りをする。


 おっ、いつもと少し勝手が違うけど‥‥使いやすいな。何か、手に馴染む感じがいいな。


「おっさん、これいくら?」


 今の所持金は、確か‥‥2,000ペターくらいだったか。500ペターくらいは残しておきたい、1,000〜1,500ペターくらいだな。


「そうだなぁ〜、5,000ペターが販売価格だが特別に4,500ペターにしてやろう」


 来栖の予想を上回る金額に思わず手が止まる。


 まじか、どうすっかな? 金が足りねえしな。


「‥‥ツケといてくれ」


「はぁ?」


「今はちょっと金がなくてな。次に来た時に払うからさ、頼むよ」


 おっさんなら、これで何とかなるだろ。


「小僧な〜、身元も知れん奴にそんな事出来る訳ないだろ」


「ほら、最初の時の約束だって守ったろ? 今回も守るから頼むよ」


 これくらいすぐ稼げるんだけど今は出来るだけ早く出発したいんだよ。


「そう言われてもなぁ、こっちも商売なんだよ‥‥」


 うーん、何かいい交渉材料ないかな? 微妙だけど言ってみるか。


「じゃあ、今度来た時に10,000ペター以上の買い物をここでしていくよ。それでどう?」


 10,000ペターくらいなら普通に稼げるだろ。


「‥‥まぁ、いいだろう。あんちゃん、絶対に返しに来いよ!!」




 やった!!


 来栖が心の中で思いっきりガッツポーズしていると親父が思いっきり肩を叩く。


「もちろん」


 そう言って来栖は手に持っていたククリナイフを腰袋に仕舞う。


「で、いつくらいに来れそうなんだ?」


「あー、少し遠くに行くから気長に待っててくれ」


 移動距離が約十日だったか? だとすると、一ヶ月以上はかかるのか。


「ほぉ、どこに行くんだ?」


「ん? 南にあるブリュッセルって街だけど」


「あんちゃんがブリュッセルに行くのか!?」


 親父は来栖の両肩を掴み、体を揺らす。


「そうだけど、もしかしてやばい感じ?」


「あぁ、俺も噂でしか聞いた事がねえがあの街はやばい。ここは比較的治安がいいが、ブリュッセルは桁違いに悪いらしいぜ。窃盗、殺人、強姦がしょっちゅうあって、警備団もまともに対応をしていないらしい」


 来栖は顔に手を当て、頼葉の顔を思い浮かべる。


 そういう事だったか。あいつが進んで厳しい道を行く訳がないもんな。パッと見で俺にブリュッセルを選ばせ、自分は安全なペルルウスに行く。ちくしょう、嵌められたな。


 思考にふけっている来栖を親父が怪訝そうな目で見ていた。


「どうかしたのか?」


「いや、何でもない。他にブリュッセルで注意しておく事とかあるか?」


「他か? 後は、人狩りの連中には気をつけたほうがいいぞ。あいつらは見境なく人を捕まえて、売っぱらってるんだ。あんちゃんも見かけたらすぐに逃げとけよ。頭領が恐ろしく強いって噂だ」


 ‥‥これ、イベントフラグだよな? ブリュッセルに行く途中で絶対襲われるパターンだよな?


「そっか、気をつけるわ」


 もうそろそろ、七時かな? 腹も減ってきたし、帰るとするか。


「おっさん、ククリナイフ、本当にありがとな。じゃ、また来るからな」


「おう、ツケ分は払えよ」


 来栖は笑みを浮かべると武器屋を後にする。




 来栖と頼葉が別行動を取り始めて三日目、来栖は山と山との間にある小さな村を探し、木々の生い茂る山をさまよっていた。


「地図通りだと、ここいら辺なんだけどなぁ〜」


 この辺りには目印になるものが一切なく、地図とコンパスだけを頼りに歩いていた。太陽の位置から推測するに後二時間程で日が沈む。夜の山を歩くのは危険なので、そうなると野宿をしなくてはならなくなる。


 野宿は昨日したしな〜。今晩はベットでゆっくりしたかったんだけど無理か。でも、地図的にはここであってるはずなんだよな。あ、そうだ。一度上から見てみるか。


 少し視点を変えるてようと、思った来栖は荷物をその場に置いて、周りにあった樹の中で一番高い樹の頂上まで登る。上から見ると可視範囲が広がり、目的の村を見つける。


「おっ、あった、あった」


 来栖は樹から飛び降りると荷物を拾い、村の見えた方角へと向かう。



ここまで、読んでくれてありがとうございます(≧∇≦)


気づいた人もいるかもしれませんが、今回はいつもより少しだけ短めでした。当初はもう少し書く予定でしたが、区切りの関係上ここで切らせていただきました。


一つ思ったんですけど、ほとんどスキルが活躍してませんね ((((;゜Д゜)))))))

いや、これからはどんどん使っていくのでよろしくお願いします m(_ _"m)ペコリ


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