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間章その1: ニアリー・コールと家族の団欒

とりあえず前編だけ。超絶久々に、とあるキャラ登場です。

 

 

 スキンヘッドに少しだけ、生え際の後退した毛が生えている、そんな頭。

 それが気にならないくらいには逞しく、凛々しい男。最近は肌が焼けてやや黒くなっており、ますます威圧感が強くなっている。しかし快活な笑みは相変わらずであり、目印のようなボウガンを背に背負い、今日も今日とて忙しそうに歩いていた。

「おい、幾ら何でもこりゃ暴利じゃねぇのか? 干し肉一つになんで銀貨何枚もかかるんだよ、普通に王都の宿屋行けるじゃねぇか」

「おあにーさん、そうは言ってもねぇ。最近、商会連の方でいくらか物資を蓄えているらしくて、取引だけだとあんまり収益が入らなくってねぇ」

「そうは言ったって、高けりゃ誰も買わねぇぞ?」

「以前はポーションとか作ってくれる、腕のいい錬金術師も居たんだけどねぇ。最近じゃめっきり見かけなくなっちまった」

「ここじゃ儲からないって踏んだんだろうよ。ギルドって言ったって、まずは己の生活第一だ、普通は。組織のために命をかけるってのを、決定するのは個人であって組織じゃねぇからな」

「おお、なんだかそれっぽいですね。ギルドの運営経験とか、おありで?」

「まぁ、昔少しな……」

 笑顔で会話を交わし、男はその店を離れた。

 路商のごとくテントが並ぶ石の遺跡“ストーンワイズの王宮”。ガンドレイにあるこの場所は、王都よりも魔族たちの生息域に近い。そういうこともあってか、時折獣人などが見えることもある。しかし、亜人相手に商売しているところにケンカをふっかけることはしない。誰しも、ケンカを売らなければ買われない相手ならば、平穏無事を守って商売したいためだろう。

 さてその日、“魔弾の狙撃手”ことニアリー・コールはそこに居た。

 数ヶ月ぶりの人里で、何をしに来たかといえば、主に補給である。

 王国の南西にある砂漠に程近いここガンドレイ。砂漠の遺跡にて、かつての仲間の遺品を捜しているニアリーがたどり着く場所としては、当たり前のような場所である。

 実際ここは研究者や冒険者、遺跡や近隣の森の探索者も少なくない。そのため大規模商会連合ギルド――通称“商会連”が根を下ろし、年中キャラバンを運営しているのだった。無論、外国からの商人たちも参戦して居たりはするが、絶対数で言えば微々たるものである。

 一定の収益が見込める場であり、持ち込まれた物資を時に高く売買することもできる。

 オルバニア王国では、まだ“考古学”という概念が薄い。

 王国誕生がほんのニ、三百年前だというのも、それに拍車をかけているだろう。

 最近でこそ、王国の遺跡からの発掘物資には魔術的な刻印を記述すべしと定められたものの、それ以前に失われたものはどれほどあるだろう。セラスト国王と、司祭デュオニソスの胃が痛くなりそうな話である。

 まあ、それが今回の話の本筋ではないわけだが。

「……甘ぇだけだな」

 遺跡の日陰で、携帯食と葡萄汁 (要するにジュース)を飲むニアリー。酒を飲めないのを代用品で我慢しようという腹積もりなのかもしれないが、残念、それにアルコール的な香りは一切含まれて居ない。ノンアルコールワインでもない代物で、彼の気分が満たされるわけもなかった。

 そんな彼に、ふと、二つの人影が迫る。

 大きい影と、小さい影。

 片方のシルエットは女性で、もう片方は少女だ。

 やがて二人はニアリーの前に立ち、心の底からニアリーを微笑ませた。

「ジョー、何してるんだ?」

「何してるんだじゃないってば。アナタがこっちに来る周期を考えてそろそろかなって思ってきてみただけよ?」

 大人の女性は、やや皺のついた笑顔を見せる。頭に巻いた鉢巻と、火傷に備えて両手に巻かれたグローブ。火の粉が体に当たらないように魔術的に調整された服装は、一般的な鍛冶師のそれに他ならない。

 女性の名は、ジョアンナ・コール。

 ニアリー・コールの、奥方である。

 とすれば、ニアリーに向かって抱きついた小さな少女の正体もうかがい知れる。

「お父さま! お父さま! ひさびさだぜ!」

「おう、イシュリーもな。だけど、女の子はもっとおしとやかな口調の方が、男をコロっと動かせるぜ?」

「おお、そうか! わかった!」

「子供に何言ってるのよ……」

「いや、そこは愛娘に世の中の上手な生き方ってものをな――」

「悪女でも作るつもりかってば。でも、可愛らしい喋り方のほうが、お母さん少し嬉しいかな?」

「わかったぜ! お母さま! ……あ、わかりましたですわ! おかあさま!」

 愛らしくもやんちゃっぽい十歳児、イシュリー・コールに両親はそろって微笑んだ。

 ちなみにイシュリーの顔立ちとかは、圧倒的にニアリーに寄っており、頭蓋骨とかは綺麗な形をしていそうだった。

 さて、親子三人で食事である。ちょっとしたピクニックだろう。

 三人とも葡萄汁を飲んでおり、イシュリーは大層おいしそうだ。

「ジョーはどうやってここまで来たんだ?」

「鍛冶関係でツテがあったから、しばらくそっちで厄介になってるわ。にしてもアナタ、またずいぶんと黒く焼けたわねぇ……。前すっごく白かったじゃない」

「あれはほら、キャストシューター(ニアリーのボウガン)作るのに色々資料漁っていた時期だったろ」

「お父さま! おかわりくれ!」

「下さい、でしょ?」

「わかった、おかわりください!」

 葡萄汁が大層お気に召したらしいイシュリー。

 その頭をぽんぽんとして、ニアリーははっはっはと大笑いした。

「やっぱ、一人は寂しいもんだよなぁ……」

 その言葉が誰に向けられたものなのか、何を言わずともジョアンナには理解できた。これでも一応、“黒の勇者”パーティーと面識がある一同である。当時はセイラが居なかったものの、最低限エースとカノンについての知識を持っているジョアンナであった。

「……エース君、死んじゃったものね」

「暗殺されるようなタマじゃないと思っては居たがな。……正直、俺があいつの骨くらい拾ってやるのが道理なんだろうが、王城の中ってのがいけないなぁ……」

 例の勇者暗殺事件以降、王城への立ち入りは以前にもまして厳しくなっている。ニアリーはエースとの付き合いを介して、家族連れで王女謁見とかもしたことがあった。エリザベート的にもイシュリーは愛らしい妹のようであったらしく、たいそう可愛がられた経験がある。

 しかし、そのニアリーでさえ現時点では王城への立ち入りができなくなっていた。

 カノンが失踪した後、一度王様へアポイントをとれないかと手紙を出したことがあったが――結果は、現時点の彼が物語っている。

 結局、なしのつぶてでしかなかった。

「カノンが失踪したっていうのも、案外よく分からなかったしな。もしかしたら、仇でも探しているのかもしれないが」

 そして、あの日以降ニアリーはカノンとも接触がない。

 多くの人物一同をして、カノンが何処へいったか知るものは居ないだろう。

 唯一、確実にカノンだといえる目撃証言は、アスターとレオウルが半年以上前に出会ったものが最後かもしれない。

 ……それ以降、国内のダンジョンで「謎の仮面の剣士が暴走するかのごとくボスモンスターを荒らしている」という噂とかもあったりするが、それはまた別な話。それを聞きつけた“王子珍道中”の作者が、取材のため各地を転々としていたりといったこともまた余談だ。

 カノンがエースの生存を信じていろいろやっていた、というそのことを、ニアリーたちは全くしらないのだった。

「そういえば……、カノンちゃんとエース君、結婚とかはしていたの?」

「まだだろうな。まー、してもしなくても殆ど変わりない気もしたが……。所帯を持ったら即行だったろ」

「あ、問題はそこだったのね……。結構しっかりしてたのね、あの子」

「あれで元々は、結構大きな村の村長候補だったらしいからな。根草なし筆頭商売の冒険者になっても、ある程度は考えるんだろうよ」

「そう……」

 当時のエースとカノンは、両者の間になんだか微妙な空気が流れていた。

 不仲とかではない。要するに、手と手が触れたらボっと赤面して、慌てて手を離したりといった感じのアレである。セラストが見たら、爆発しろと言われ冷やかされるくらいに、両者の距離感が迫り始めていた頃だ。

 ジョアンナとニアリーとの結婚にも、色々な紆余曲折があったため、素直に両者の仲を応援していた彼女である。エース暗殺とカノン失踪の報を受けて、当事者でなくとも胸を痛めたに違いない。そんな妻に、娘は「?」という顔を向けていた。

「あー、辛気臭い話はナシだ。そうだな、久々に会ったし、どこか遊びに行くか? といってもここら辺だと、ガンドレイの劇場くらいしかないと思ったが……」

「そう……ね。あんまり暗くしても仕方ないわ。イシュリーは、何処行きたい?」

「えっとな、えっとな! 体動かせるところがいいぜ!」

「射的場とか、どこかにあったか……?」

 そう考えるニアリーたちに、ふと、声がかけられた。


「そんなあなた方に朗報、でございます」


「……ん?」

 現れたのは、女中姿の少女。

 無表情な十代中頃。青い髪は大海のごとく深い色。

 酷く美しいが、同時に酷く人間味の欠ける少女でもあった。

 ニアリーは、そんな彼女に疑問が浮かぶ。

「何だって?」

「ですから、朗報でございます」

 少女は、一枚のチラシを彼らに手渡した。「こちらの施設ならば、家族で遊べて楽しいのでは、と進言するでございます」

「なんじゃこりゃ……?」

「ああ、これね?」

「知ってるのか、ジョー」

「ちょっと噂になってたのよ。信憑性は薄いんだけど、この、主目的が良く分からない商業施設があるって」

 両親の会話に、不思議そうな顔をするイシュリー。しかし、彼女の興味はそっちよりもチラシに描かれたマスコットキャラクターに集中していることだろう。

 そのチラシの上には、こう書かれていた。


“りゅーおーらんど”――大規模強化キャンペーン中!

 子供含む家族連れの方は、三割引で結構です!”

 

 

ちなみにニアリーの髪型は、本来マイコーみたいな感じでした。諸事情合って焼けてしまい、面倒だから剃った感じです。


エース「最低でも家は持ってたほうが良いかな?」

カノン「私は別に気にしないが・・・」

エース「その流れでどんどん落ちていくかもしれないってことを注意した上で発言しておこうか、おーけい?」

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