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二章四十四話:J to C(ジェットトゥーコースター)

掛け声ってどうするか、本気で悩みます。

そう考えれば、ライダーの演者さんたちは本当に頑張ってると思います



 “獣王”が声をかけた採決を、意外なことにエース自身が中断させた。

「いや、いきなり現れて『俺が後継者だ』と名乗ったって、普通は納得されないでしょ。というか、表面上納得ように見せて寝首を搔かれるほうが怖い」

「つまり、何だ?」

「これから、俺なりに『魔王』としてどういう活動をしていくのか、というか方針みたいなものは一応あるんだけど……、それに、何か疑問とかある奴が質問してくれ。出来る限り答える」

 既にご理解いただけているとは思うが、本作の主人公、かなりマイペースである。

 なんとなく場の空気を押していっきに片付けてしまおうと考えていた“獣王”の考えすら、軽くかわしてこう言う訳だ。無論その裏には主人公補正ではないが、余計なフラグを折る彼の特性があったりするものの、運命の女神でもない大半のものにそれがわかるわけもなく。

 肩をすくめた“獣王”は、その場に腰を下ろした。

「あー、じゃあ僕から聞いていい?」

 そういう彼は“深海王”。よく言えば爽やかな、悪く言えば軽薄な、なんともいえない顔をエースに向ける。

「“妖精王”とか“鬼長”とか気になってると思うから聞くけど……、そもそも君は、魔王になったら一体何をするわけ? それによって、たぶん採決は大きく分かれると思うけど」

 浮かべている表情に反して、なかなかに真面目なことを言ってくる男である。

 言いながら、右脇に居る人魚の耳に息を吹きかけたりしていなければ、文字通りかなり格好良い部族長であるだろう。エミリーでさえ舌打するのを我慢しているように見えるあたり、色々とこの男も男でアレらしい。

 エースは、そんな彼の態度に苦笑いを浮かべながら、言葉には真摯に答える。

「竜王が、戦争に積極的じゃなかった理由って、誰か聞いたことある?」

「……人間が憎かったから――関わるのも嫌なくらいに拒絶していたから。そう聞いている」

 “雷帝”が、代表して答えたが、おおむね場の部族長達も同一見解だ。

 かれこれ何十年前になるか――“竜王城”で開かれた部族長会議において、戦争の中断、王国との相互不干渉について竜王が語ったときの言葉である。

 エースと出会うまでの竜王は、文字通り人間を憎んでいた。

 共存を望まないほど嫌ってはいなかったが、しかし相互に協力を許せるほど、感情がその目的に追いついてはいなかったのだ。

 魔族の総意として平均をとれば、おそらく人間の殲滅に向かっていただろうその感情。

 しかしそれでも、あえて竜王は「もう関わりたくない」という意見を優先させた。

「『個々としてみた場合と集団としてみた場合、後者で簡単に踊るのが人間だ。だからこそ、そんな茶番に我々が巻き込まれてやる言われはない。幸い今の王は踊った民をいさめる術を持っている。ゆえに我輩、これ以上の戦争継続は無意味と考える』でございます」

 エースの知りえない竜王の言葉。代弁するエミリーのそれを聞き、我等が主人公は以外そうな顔をする。彼の知る竜王よりも幾分投げやりなその言葉は、おそらく、そのタイミングになるまで停戦ということを言えなかったということだろう。

 彼の知る、もう一人大いなる友人たる竜王がである。

 そして、竜王のその言葉を胸に刻み、今日まで強行に及ばなかったという部族長達の顔を改めて見回し――エースは、ふっと微笑んだ。


「とりあえず、場所を移しましょうか。せっかくですし――アミューズダンジョン、まだ未公開のものにご招待します」


 不思議そうな顔をする部族長たちの中で、エミリーが左頬を引きつらせた。



※   ※    ※    ※



 エースが現在予定している計画。

 T・T・Tたち情報部隊が持ってきた事柄。商会連の動きや軍部隊の遠征訓練の増強などといった事柄から魔族奴隷の使用傾向など含めて予想される、開戦のための計画。

 それを叩き潰すためのエースの計画には、必然、必要なものが多数あった。

 アミューズメントダンジョン……、我等が“りゅーおーらんど”である。

 現在公開されている場所は、シャルパン、ガンドレイ、近日設置予定と銘打たれているアケロマルバスの三箇所である。

 しかし、エースがこの三つで満足するわけがない。

 王国内に百あまりのダンジョンがある以上、最低でも二十数件の設置は、もはや義務である。無論彼の勝手な解釈であるが。

 そんなわけで、今彼が創造しているダンジョンは一つや二つできくわけがない。

「どうだった? このダンジョンの“ジェットコースター”は。立ち乗り式、色々考えたんだけど、オルバルだったら空晴れてるし、年中使えると思うんだよねー」

『……』

 一同、無言である。

 “幽鬼官”と“鬼長”は、そろって感心したように口を開いた。

「……つまりはダンジョンの、商業施設利用と」

「そそ。たくさん乗ってもらったけど、結局はそういうこと。とりあえず現時点で色々見てもらった“りゅーおーらんど”の数々は、非日常系施設という扱いにするつもり。好評だったら今後も色々、関連ダンジョンを作っていくつもりだけど、どうかな?」

「最初、あのトロッコのようなものに乗せられたときはこの世の終わりかと思いましたが、なんのことはない。楽しめるものも居て、修行になるものもいてと考えれば、悪くない施設なのではないでしょうか」

「……これを、獣王の娘は嬉々として乗り込むのか」

「底が知れんわい」

 妖精王のリリアンへの愚痴はさておき、彼ら一同に何があったのかというと。

 まぁ、アレである。

 “りゅーおーらんど”の洗礼――ジェットコースター試乗である。

 二章プロローグにてエースの作っていた立ち乗り回転コースター。あの後ディアなどからの意見も聞き、最終的には「コースターの回転と反対方向に椅子が回転し、視界が回らない」というタイプのコースターへと変貌した。これで回転を強めればまさに絶叫系になること必至であろうが、多少エースも気を使ったのだろう。

 これにはエミリーも、内心手放しで賞賛していた(普段の彼の暴走を踏まえた上で)。

 まぁとはいど、ジェットコースターはジェットコースター。例によって例のごとく、のせられた部族長以下関係者は疲弊していた。

 ちなみに“雷帝”、既に身長は3ルラ(三メートル)に達しようかというほどなので、彼の椅子だけ大型のものだったり、固定具がちょっと多かったりしたのは余談である。

 ポーション(品質:普通)をもった“りゅーおーくん”が、ベンチに背中を預ける部族長達の体調を確認している。

『だい じょぶ?』

「し、心配は要らないですきゅん☆ ……」

 少なからず、普段ほとんど語尾を取り繕えている“森姫”が押さえられないくらいに疲れるくらいには、ジェットコースターしているジェットコースターであったことは間違いないだろう。

『……色々やりすぎたんじゃないのか?』

 そして、いつの間にか帰ってきているディアであった。

「おー、ディアさっきぶり。カイネちゃんはどうした?」

『……とりあえず闘技場組に預けてきた』

「まー、妥当じゃない? ちなみに状況は」

『そろそろ“すーぱーりゅーおーくん”が出る頃だろう』

「あれ、もうベスト4まで行ったんだ。一試合一試合の間休憩も挟んでたと思ったけど」

 ちなみに闘技場の面々、ベスト4まで残った者たちにはそれぞれ“すーぱーりゅーおーくん”と戦う権利が与えられる。勝てば更なるレアアイテムを与えられるような敵であるが……。

 “りゅーおーくん”の頭を小さくし、身体を縦に伸ばし、すらりとしながらも圧倒的な筋肉量を誇る八頭身2ルラ(訳二メート)弱の“すーぱーりゅーおーくん”が、闘技場の聖騎士たちを震え上がらすのも時間の問題だが、本編では丸々カットとあいなった。

『……少し話したが、どうも致命的な勘違いをしているようだったな。トスカーレの――』

「あー……、ゲロっちゃえばいいのに、とっとと俺みたいにさ」

『……エース、わかった上で言ってるな? よりややこしくなるだろ。というか待て、そっちは正体明かしたのか? 彼ら全員に』

 ざっくりとエミリーとエースに経緯と目的を説明されて、ディアも納得はしたが、

『そういうことは、私のいる前でしろ』

 と釘を刺された。

 基本的にディアに迷惑をかけっぱなしなエースなので、ディアからの要望は大体守っているのである。今後はそういうことになるだろう。

 さて、ある程度回復した“雷帝”が、エースに物申す。

「……結局、お前は何がやりたいんだ?」

 コレに対するエースの回答は、シンプルなものだった。

「みんなでわいわい、楽しくやりましょう」

「……は?」

「このコースターじゃないけど、一応ここの施設が大人も子供も分け隔てなく、童心くすぐって遊んでもらえるように頑張ってる場所だってのは、判ってもらえたと思うんだ。なにせウチには『遊び心無限大』バルドスキーやら『発想の友』マルマルコとかもいるし」

「確かに、あれで“間断”殿は子供たちから人気があったな……」

「あのナリでプレゼントのセンスとか子供向けのセンスも高いし悪くないし、ホントね」

 マルマルコの名前に「あの子、再就職そっちいったのね……」と呟く“森姫”の姿が視界の端に映ったが、いつものようにエースは無視して話を続ける。

「で、まーさっきも言ったとおり、時間帯によって大人向けの施設が動いたり、それとは別に大人向けの施設自体がそもそもあったり、あと休憩所とかも常設してあったりと色々あるけど……、総合して俺が言いたいのは、それだ。手と手を取り合い、仲良くやりましょう。

 竜王は人間を憎んでいたなら――それは、竜王に許すことの出来ない部分があったってことだと思う。でもさ、そんな竜王が俺みたいな似非平和主義者に後事を託したということは――」

 エースの言葉に、竜王の遺言を頭に思い浮かべる“雷帝”。

「――少なくとも、荒事をしてくれってわけじゃないでしょ。確かに俺は、沢山ヒト殺してきたし、今更静かに、幸せに、愛する人と二人でゆったり暮らしたいとか思っちゃいけないけど。

 だからこそ、俺はそう思う」

 殺してきた分だけ、みんな幸せになってもらいたい。

「そこまでいくのが無理でも、せめて、ほんのの少しでいいから、心に愛とか、夢とか、希望とか――一つでも救いがもてもらえるような、そんな奴になりたい」

 エースの言葉を、しばし無言で聞く“雷帝”。見つめる先、“黒の勇者”の双眸を深く睨み、奥にある感情を探っているようである。

 対するエースも、口元だけで笑っている。口調に反し、両目は据わっていた。内心、どんな感情にかられているのかは他者には想像もつかない。

 この場にカノンが居れば、その内には彼の過去すべて、勇者になる直前に村を追い出されたときから、竜王を殺した後一月ほど二人でリハビリしていた時のことまで、その全てを振り返っての混沌とした感情が渦巻いていることがわかるだろう。

 そこまではわからなくとも――しかし、“雷帝”もエースの本気度合いを理解できた。


「――ならば、私から言うことはない。任せましょう、我が新たなる“魔王”よ」

「……とは言っても、各部族とか色々な部分はほとんど今までどおりだから、そのつもりではいてね?」


 基本的に遊園地のことしか頭にないエースの言葉と考えれば、本心は色々スケスケであるものの、しかし付き合いの短い“雷帝”には、自分たち部族長に対する信頼と受け取れた。

 そっと手を差し出す“雷帝”。

 ふと見れば、周囲の部族長も、“雷帝”のその手に目をむけ微笑んでいる。“幽鬼官”は表情までわからないものの一つ頷き、妖精王は「ふ、ふん!」と顔を背けたものの、周囲の妖精たちが「まぁまぁ」と宥めている様子から、おそらく意見は一致していることだろう。


 “獣王”がふふんと笑い。

 エースがその手をとろうとした瞬間。


「セイハァァァッ!」


 凶刃が、エースに向かって放たれた。



なんでこんなんで話がまとまるんだ! ということについては、一応既に実績があったからです。一応は。そしてダイジェストジェットコースターェ・・・

ちなみにエースとカノンのリハビリ中は、ほとんど新婚さん状態……世の中クソだな(足立感)


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