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二章三十五話: 事後苦得頭の前

地獄絵図と変換しようとしたらこうなったので、せっかくだから使います。




 どうしてこうなった。

 アルシルトは、眼前の悲惨な光景を見て思わず頭を抱えた。

 ことの始まりは数時間前。魔族が新に作り上げたダンジョンへ侵攻する際のことである。

『うん、よろしくねー』

「実際の行動としては、調査ということですね」

『そうそう。()経由のお話と、あとは「協力者」からの直接の情報と総合して、今日、これからさ』

 彼直属の上司であり、彼が想いを寄せる少女、聖騎士カイネと王国の司祭デュオニソスとの会話である。国で多く流通していない映像通信結晶を用いて会話されるそれを、アルシルトは黙々と聞いていた。

 アルシルトは、会話の詳細を教えられていない。今回カイネがどういった任務を請け負っていたかということを、さわりだけ聞いていた。

 カイネたちは、教会の派閥のうち「利益主義」に所属している。

 今回彼ら利益主義派閥は、人間至上主義派閥から協力要請を受けて、王国にはせ参じた。

 オルバニア周辺国での合同戦闘演習終了後、デュオニソス直々の指示で現在はシャルパンにいる。もともと表向きは「王国騎士団の侵攻サポート」や「失敗時のリカバリー」のために来たということになっていた。

 実際、王国に到着するまでカイネからはそういう命令を受けていた。

 だが、ついた途端少々行動が変わり。

『とりあえず、牽制になるように動いてねー』

「了解」

 そう言って通話をきるカイネ。

「……で、結局今回はどういった指示内容で?」

「簡単。脅す」

 言葉少ない説明であるが、彼女が聖騎士になる前のよちよち歩きの頃からの付き合いであるアルシルトである。ざっくり言われた内容を理解した。要するに、武力による牽制をするのである。

 時たま、教会に明確にたてついた相手などと戦ったりすることもある聖騎士団なので、その手際はなれたものであった。

 ちなみに以前王国で、不当な理由で権威のために決闘をした聖騎士が居たが、相手が「黒の勇者」と「魔術殺しの双刃」であり、彼女の逆鱗に触れたことから圧倒され、あえなく除籍されて居たりするのは余談である。

 アルシルトは、頭をかしげて問う。

「一応『人間至上主義』からの協力要請でしたけど、実際の指示を出すのはデュオニソス殿というのは何というか……」

「隠れ蓑」

 そして何というか、相変わらず抜け目のないデュオニソスである。

 デュオニソスの派閥もまた利益主義であり、人間至上主義は上手いこと利用されている形だ。別にデュオニソスから協力要請とかしたわけではなく、そちらに“りゅーおーらんど”の情報が回る速度だったり、他の関連情報だったりを色々付け加えたりといった部分をたくみに操り、現在の形に誘導したのだった。

 おそらく当人達は、自分らが利用されたことすら気付いていまい。

「情報源は、一番強い」

「おおむね同意しますね。さて……」

 そうこうして、シャルパン付近の森にいた彼らは行動を開始した。

 ステルス系の効果を発揮する結界を解除し、キャンプを片付けて戦闘モードに。

 肝心の聖騎士カイネは「別な仕事あるから」とアルシルトに指揮権を預け移動し、彼らもまた彼女の言いつけどおりアルシルトにしたがって移動した。

 王国におけるすべてのダンジョンが起動している以上、間違いなく敵首魁は竜王城にいると見て間違いない。

 その判断のもと、彼らは城に向かって移動したのだが……?


『==スぅペシャあルタ~イムッ! これより、闘技場を召還しま~す!==』


 この謎のアナウンスこそ、彼らに訪れる地獄の先触れであったことだろう。

 さて。コロッセオ、闘技場といって一体読者諸兄が何を連想するかは定かではないが、大体はローマにあるアレを連想するのではないだろうか。

 エースのダンジョンスイッチによって召還された闘技場……“りゅーおーらんど”のサイケタワー(面倒なので略)から通じる、ナードやらイニやらの趣味が反映された施設の外観も、ぱっと見はそんなものであった。

 ただし――。

「こ、これは一体……?」

「うぇ……、気持ち悪い……、」

 ただし、色使いだけは別である。

 サイケである。

 サイケタワーの流れを汲んでいることを象徴するかのように、色味がパステルで、入り交じって、混沌としていて、ネオンのように発光していて、要するに目が痛い。すべての壁面がそんな有様になっているのはバルドスキーの作戦であるが、そんなこと騎士団たちにわかるわけもなく。

 月夜の山に突如として現れた、“りゅーおーらんど”の混沌成分を極端に抽出したようなその施設に、内側へ閉じ込められた下級騎士たちは狼狽した。何人か狼狽どころか気分を害して、トイレに直行していた(何故かご丁寧に「お手洗いこちら」という矢印と看板が出ていた)。

 既に精神力=MPの半分くらい削られただろうアルシルトたちであったが、そこは十年来歴戦の騎士たちである。カイネに集められてからさほど日は経っていないが、それでも戦闘意欲自体は失っていなかった。

 そしてそこに、場を混沌とさせるコトダマが響く。


『さーさ、はじまってまいりましたよ~! 第一回、“闘技場”大規模トーナメント~ッ! 司会はこの私、ケティが勤めさせていただきま~す! 解説はこちらの~?』

『魔法剣士のナードと』

『“間断”バルドスキーです。微力を尽くしましょう』


 何とも軽いアナウンスが響く。見れば天井付近に巨大な映像結晶でも加工したような装置(まぁ大型ディスプレイだ)が何個かあり、そこにウサギの獣人族(ライカノイド)の少女がきゃぴきゃぴ映っていた。彼女の横にカメラ(?)がふられ、長髪イケメソな青年と渋い伯爵の姿が映る。

 盛り上がる歓声。よく見れば闘技場の上部には座席があり、多くの魔族やら人間やらがたむろして観戦している。

 騎士団たちは、それにただただ困惑するばかり。しかし、アナウンスは続く。

『あ、ちなみに場内で配られてる食品はマルマルコさんたち企画部の試供品ですので、食べ終わったらアンケート答えといてくださいね~?』

 おお~、と謎のカチドキが挙がる。

 謎の単語と謎の状況が、アルシルトたちを更に混乱させ、MPを減退させていくこととなる。

 ちなみにマルマルコとは、“りゅーおーらんど”企画部の主任で、“りゅーおーらんど”運営陣においてほぼ唯一、エースと完璧に趣味が合うという亜人の青年だった。これだけで色々ともうお察しな人物であったが、今回は食品部門の話なので深くはふれまい。

「――テイラン・ケリア――」

 騎士の一人が、面白くなさそうな顔をしてモニターに爆裂火球を飛ばした。困惑する周囲の中で唯一、色々と疲れた顔をしているあたり、茶番に付き合う気のない男なのかもしれない。茶番と片付けるにはあまりにも規模が大きいのだが、そんなことは大した問題ではないのだろう。

 だが、しかし。

 あろうことかモニター付近まで上昇した火球は、まるで()()()()()()()()()()かのように、攻撃を反らされた。

 驚く騎士であったが、その火球が観客席に向かうのを見て、驚愕どころではなくなった。慌ててスペルジャマーを発動しようとするが、もう遅い。あわや爆裂した火がヒトビトを襲うことになるかと思いきや――。

 彼らの手前で火球は爆裂し、火の粉が観客に降りかかることはなかった。

「「……は?」」

 アルシルト共々、口あんぐりな騎士。

 観客からは「花火じゃねぇか!」とか「曲芸もできるのか騎士様は!」とか訳の分からない言葉が飛び交っていたが、ある程度時間がたってようやく彼らも、観客席に「頑丈な、ガラスのように透明な板」があるのだと悟った。

『本日は、ゲストに聖騎士団の皆様もいらっしゃっておりま~す! みなさん、楽しんでくださいね~!』

 そして、これである。

 騎士団も大分わけがわからなかったろう。

 困惑している彼らだったが、そんな彼らの前に、あれよあれよと言う間に“りゅーおーらんど”制服をまとった少年少女たちが現れて腕輪をつけていく。別段、利益主義派の彼らは魔族に対して偏見も何もなかったが、流石に疑問くらいはぶつけた。

「……これは何だ?」

「『再生結晶』だそうです。……テストでは大丈夫だったので、問題はないと思います」

「いや、結局何だか分からないのだが……」

 彼に答えるソバカスの愛らしい少女である。そんな彼女がアルシルトの左腕の鎧の上からつけたのは、真ん中に白銀の結晶が埋まった腕輪であった。

 ふと、メイドだったり執事服だったりする少年少女たちが道を明ける。その間を通り、彼らの前に鬼族(ゴブリン)の剣士が現れた。

「いやー、悪いなアンタら。俺達も一応、仕事なんだよ」

「い、いや、別に何を言ってるのか――」

「いや、しらばっくれないでも構わないぜ? 脱出を試みても構わない。脱出できればの話だがなぁ……。ま、ルールを説明するぜ?

 単純な話だ。ここからすぐに脱出したければ、まず最初のバトルロワイヤルに勝ち残る。

 その後ベスト十六でトーナメントを行って、それに優勝する。

 最後にシード枠を倒せば、晴れて脱出となるわけだ。OK?」

「ふ、ふざけるなッ!」

 もっともなリアクションである。イニも半笑いで同情していたが、しかし結論は変わらない。あの“間断”が企画し、魔王が細部をよりエンタメ的にし、ナード(ぽんこつ)が張り切ってしまった以上、もはや彼一人で止めることなど出来るはずもなかった。

「ま、そうカリカリしなさんなよ。残念賞もあるし、優勝賞品だって、ほら――」

 イニが指差した先、コロシアムの下の方に設置されたディスプレイに、何やら映像が浮かぶ。


 優勝賞品:キャストヘッド・ボーン


 これは簡単に言えば、超貴重品である。

 これを手に入れるため、かつてとある国の領地がいくつか壊滅したという噂があるくらいであるが……。ちなみに現在、彼らの上司たるカイネが求めて止まない貴重品だったりするのは、全くの偶然であった。

「参加するのも、悪い話じゃないと思うぜ?」

「……」

 この後どうなったのかは……。あえて記述はしまい。

 本作はコメディを目指してるので、バトル描写は程ほどに。

 

 

ちなみにアルシルトは、カイネ命の紳士です。ええ、なんちゃらという名の紳士でござる。


カノンの逆鱗→エースの尊厳 もっとも常識の範囲ですが。

もう少ししたらまともな戦闘シーンある予定ですが、果たして本作的にはどちらの方が需要があるのやら・・・。まぁ両方ありますんで、そこはご容赦を;


次も一週間以内を目指すでございます。


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