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二章三十四話: 選べない以上、選べるものなど選ばない

カノン『へっくち』



「……はぁ」

 獣王によって書かれた部族長会議の一筆を見て、エースは無表情にため息一つ。

 手紙はエミリーに向けて当てられたものであったが、エミリー自身がエースに手渡したので、結果として彼が読むこととなった。

 書かれているのは別に変なことではない。

 日程と場所と、参加予定者 (というか手紙を配った相手)の名前が書かれているばかり。

 要するに、会議のお知らせというとおりの事柄しか書かれていない。

 が、その日程が問題だった。

「……明後日、か」

 日程は、ディアが危機を知らせたそれと上手いことかぶっている。

 状況が状況なだけに、作為的なものを感じるエースである。

「どゆいうことだ?」

「えっと……、リリアンちゃんと一緒に遊んでたら、なんか突然、治療術かかった包帯ぐるぐる巻きの獣王が現れて――」

「アスターとは案外、いい勝負したようだな」

「ちなみに包帯は上半身だけでした」

 獣王のその有様は、カノンがアスターに教えた技「炎景(えんけい)」によるダメージに他ならない。

 普通ならばアスターと獣王は痛みわけどころか相討ちというべきところであったが、そこは流石ハーフトロールというべきか。一月もかからず回復が見込まれている。基礎的な性能差により重態に陥ったアスターに、エースは軽く同情した。

 余談だが、もし「炎景」を使ったのがアスターでなくカノンならば、周囲も含めて確実に焼き斬られていたりするから恐ろしい。

「で、何?」

「あー、それで、『部族長会議の紙をオエリ』……げふんげふん、エミリー様ですが、『は受け取ったのか?』と言われました」

 流石に学習したのか、ケティは割りと上手に回避した。「で、探したんですけど、どうも“りゅーおーらんど”のポストに埋もれていたらしく……」

「送った日にちとかは聞いた?」

「大体、半月くらい前……?」

「十何日か前となると……。セィーブたちを運び込んだ前後でございます」

 エースは一度押し黙る。

『……“りゅーおーらんど”側のミスか?』

「いや、違う」

 ディアの言葉を即行で否定するエース。「そんな重要そうな書類を“りゅーおーくん”が見逃すはずはない。少なくとも一週間も放置はされないだろう。

 反対に獣王の側も、いくら脳みそ筋肉のようだといえど、そういうことをする相手じゃない。第一、する意味が見当たらない」

 あ、ノーキンって脳筋って書く感じですか、と現代語ボキャブラリーを増やすケティのことは、たいした問題ではない。

 エースの言ってることは、つまり一つの可能性を指し示している。

「……どこかで妨害が入った、ということでございますか」

「そういうこと。あと、もしかすると魔族側の情報を、教会に売ってる奴が居るかもしれない」

 エースが“りゅーおーらんど”の内部にもその裏切り者が居るかもしれないと口にしなかったのは、彼がもともとヒト自体をさして信頼しておらず、それを疑うというのも当たり前だという考えに基づいているからである。

 だがそんな事情を知らない相手からすれば、またその言葉は違った意味を帯びてくるわけであって……。マダラやバルドスキー、ケティは、三者三様に驚きで言葉を失った。

 ケティは「魔族の中にもそんな奇特なヒトがいるんですか?」というような、マダラは今までの流れから犯人に目星をつけて「意地汚ねぇ……」といった風に。

 そしてバルドスキーに関しては。

「……ふふっ」

 沈黙の後、彼はうっすらと微笑んだ。

 バルドスキーは、エースの言葉を多少はきちがえていた。

 彼が“りゅーおーらんど”に言及していないのを、“りゅーおーらんど”全体に対する信頼だと考えたのだ。

 それはつまり、バルドスキーに対する信頼にも置き換えられるものかもしれない。

 だからこそ、そう勘違いた彼は、心の中で少しだけ調子に乗っていた。

「……派手に宣伝しましょう」

 もっとも、それが悪いように作用しないあたり、出来るナルシーなオッサンであったが。

 突然のバルドスキーの発言に、周囲が思わず困惑する。

()()()よ。もしそのような動きが出たというのならば、それは間違いなく現在、竜王様の席が空白であるからに違いありません。そして、魔王様がその後に就任したとしても――普通にやったのでは、意味がありません」

 バルドスキーは、エースに囁く。

「……貴方様は、竜王様が認めた“魔王”の器でございます」

 無表情であるが、エースは内心「そんなもんでもないんじゃ……?」と思っていたが、この場においてその思考は斬って捨てられた。

「だからこそ、そこを主として宣伝いたしましょう。……なに、作戦は考えました。敵をどうやって倒すべきか、いえ、圧倒すべきかと言う策が」

「……聞かせろ」

「無論です」

 聖騎士の侵攻と、部族長会議。

 これらの双方の問題に対して、テンションの上がったバルドスキーは即座に対応案を思いついていた。

 それが吉と出るか凶とでるかは、後日の結果を待つほかない。

 ただ、少なくともエミリーは。

「……ロクなことにならなさそう」

 かつて竜王が部族長会議を開いた時のことを、その時のバルドスキーのテンションを思い出していたようであった。


 ちなみに隅っこでマダラさんが「俺、居る意味ないんじゃね?」みたいな顔をしていたのは、全くの余談である。


 




???「フラグですねわかってるわよっ」


お気づきかもしれませんが、エースパーティーはゲームでいうところのラスボス戦まで終わっているので、ある意味ステカン状態です。まぁだからといって今の主人公以外は、極端に超人的な身体能力持ってたりはしませんが・・・


次も一週間以内投稿を目指してファイトファイ!

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