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二章二十七話:羽翼既成とうそぶこう

イベント同時進行中(フラグ的な意味で)


そして見覚えのある顔(?)が。



「そういえば、セィーブたちの治療はどうなってる?」

「冗長、でございます」

「長そうか……。まぁ、あっちもあっちで自業自得な部分もあるし、そこは仕方ないか」

 竜王城には、謁見の間なるものは存在しない。

 強いて言えば、客間らしきものが何箇所かあるくらいである。王城のそれと比べるまでもなく一見すると豪華なのだが、ところどころ壁の色やら造形やらサイズやら何やらの採寸が合わなかったり、微妙な出来なのは仕様である。わりと体面をとりつくろっていた竜王であるが、すべての部屋の手を抜かなかったわけではないのだ。

 そんな部屋の一室で、色々と雑談中のエースとエミリーである。

 正面から見て左右にエミリーとディアが立っており、座って足を組んでいるエースを挟む形だ。

 そんな状態で、エースは肩をすくめながら話を続ける。「そもそも志願兵を募るくらいだったら、もっと慎重にやらないと駄目だろうにねぇ。奇襲とかすらできないじゃないか」

「部下の男いわく『正々堂々己の正当性を主張するためには、存在自体を顕示しなくてはならないと言われていた』とのことでございます」

「セィーブに?」

 首を左右に振るエミリーに、エースは眉間の皺を摘む。

 彼らが話しているのは、アスターの“獣人の砦”襲撃にあわせた、騎士団の義勇軍への攻撃に対することだ。最終的に両者の戦闘は、人間側はアスターの「えっと、逃げるなら追わないで下さい。深追いして死なれたら立つ瀬がないです」といいう言葉で引き、意識を失っていたセィーブに変わって場を取りまとめた獣王の「兵力を貯めろ。今、貴殿らの力を消費するのは軍として望むものではないだろうさ」という言葉で鉾を引っ込めた形になっている。その後、代表者として砦から戦闘し続けてきた二人が再度決闘し、アスター重態という事態を引き起こしたのだが、そのことについて詳細を記述するのは蛇足であろう。

 最終的に重傷者は、エミリーにより“りゅーおーらんど”サイケデリックタワー救護班に運ばれることとなり、現在入院中である。

 意識を取り戻したセィーブは、不干渉を貫くはずだったエースたちに助けられたことに、深く頭を下げたものだった。

「多少なりとも話が通じたって言うのは、幸運なことだよねぇ。頭に血が上ってどうしようもなくなったら、こっちとしても助けようがなかったし。で、どう見る?」

「兵装の内容の三割ほどに、“りゅーおーらんど”から売られたと思われるアイテムが使われていたでございます」

「あー……。うん、予想はしていたけど、ちょっと痛いなぁ。平和目的で考えてみたものだけど、やっぱり道具は使う人間次第ってところかなぁ……」

 半笑いで肩をすくめるエースであったが、表面上分からないレベルで結構落ち込んでいる。良かれと思って動いたものが、最終的にこちらへ悪い結果となって返ってきたのだ。いくら自由人な魔王であっても、多少は堪えるものがあった。

 もっとも初めから、道具の用途について限定していたわけではない。わけではないのだが、“りゅーおーらんど”内での武装などの販売の際、力のないヒトビトをカースモンスターなどから守るのに使ってくれ、と広告を打ってあったのだ。それが守られていないというのは、少し残念ではあるだろう。

 そんな彼の肩を、ディアがぽん、と叩いた。

「……うん、大丈夫だって。ま、でも“三割”でしょ? 残りの七割はどうなってる感じ?」

「…………予想するまでもなかったでございます。既に軍団長から、確約がとれているでございます。思想的な部分は同調姿勢のようでございますが」

『……何だ?』

 頭をかしげるディアに、エースは軽く続ける。「パトロンみたいなのが居るってこと」

『……支援者か』

「そ。経済的支援者ってことだけじゃなく思想も含めてね。あとたぶん、他にも色々、何か練ってる奴がいるんじゃないかなって話」

 戦争に限らず、何かを成すために必要なものは何であろうか。ヒト、モノ、カネである。例えば戦争であれば兵士が居るし、兵器が相手より弱ければまず勝てるはずはない。そして戦争を継続するだけの物的資源と、外部から供給しえる経済的資源がなければ、そもそも開戦することすらままならない。命知らずの特攻をするのは、それらの資源が尽きた後。必然、義勇軍などという体裁をとっているものでも、有る程度のまとまった資源が必要になるのだ。

 つまり、それらの資源を提供する何者かがいるということである。

「というかそれ以前の問題として、国家間? の紛争において、文化戦争経済戦争以上に武力戦争に訴え出るって段階で、その該当国家にとっての悪手だと思うんだけどなぁ……」

「勝てば官軍でございます」

『負ければ賊軍だな』

「いや、それ以前の問題として。国家とは、そもそも何であるかということを考えれば、戦争行為ってのはどうしようもなく追い詰められてしまった結果始めるものであって、そんな好戦的に武力に訴え出る類のものじゃないと思うんだけどなぁ……」

「でも、余裕がなければ戦争は継続できないでございます」

「ん~~~~、こういうの専門は、本当はセイラだったから何とも言えないかなぁ。俺、せいぜい村単位くらいでしか物を言えないもの。こういうのは」

 そうこう話しているうちに、エースの周囲を小さなコウモリが飛び回り始める。テーブルの上に着地し、深々と頭を下げた。

「バルドスキーかな?」

『……このような形で失礼を』

「気にしなくていいよ。武力関連は、いざとなればディアも居るし。知恵だけでおっけぃ」

(かたじけな)いです』

 更に深々と頭を下げた後、彼は再び周囲を飛び回り始めた。

「バルドスキーも今の話は聞いていた? ……ああ、なら何か意見とかある?」

『……誰が背後にいたかはともかく、どのような意図で行われたかは察しがついております。しかし、それは今検討すべきではありませんな。部族長会議の知らせが来たら、お話致しましょう』

「ふ~ん?」

 と、そんな風に話していると、扉が二度ノックされる。

「お、お客様をお連れ致しました」

「入れ、でございます」

 ゆったりとした動作で、扉を開けたのはケティとリザサ。

 そして向こうに居た相手は――。


「直接会うのは、久しぶりでございます」

「ふっふっふ。お力になれていれば、幸いです……。ヒュー」


 一章六話前後で見たことの有る青年と、その連れであった。

 ちなみにどちらも、ケープを被って全身は見えなかったりするが。

 エース達の手前で、腰を六十度に折って二人は頭を下げた。

「エミリー様の情報部隊および蛇人間の使者。私はT・T・Tと申します。こちらはT・T・K。双方とも以後、お見知りおきを――魔王様。……ヒュー」

「……いや、ちょっと待って?」

 頭を垂れる二人に、エースは思わずストップをかけた。

 顔を見せないことは、エミリーから事前に言われていたので疑問は抱いていない。なのでエースが思わず静止をかけた理由は、そこではない。蛇人間の二人をはじめ、室内の彼以外六人+一匹は、不思議そうにエースを見つめた。

「俺さ。何か君のこと、ものすごく見覚えがあるんだけど気のせい?」

 これは、T・T・Tがエース暗殺に関わっていたからだという話ではない。そもそもエースは実行犯を初め、己の暗殺に誰がどう関わっていたかを把握していない。なのでこの確認は、そことは違う話である。

 だが、その言葉に対してT・T・Tはあっさり答えた。


「おそらく、()()()様がまだ『勇者』だったころの話でございましょう。――ラニアールで以前、貴方様に本を販売したことがあります……。ヒュー」


 あー、なるほどねとエースは軽く納得した。

 納得したが、しかし、ちょっと待って欲しい。

 思い返していただきたい。この部屋には、一体、現在どんなヒトビトがいるかということを。

 いちはやく動いたのはエミリーだった。テレポートして扉を閉め、次に来るだろう事態が城中に響き渡るのを防止した。

 そしてそれを聞いていた一般人枠――情報格差の激しかったケティとリザサは、


「「ええええええええええええええええええええええええええええええッ!?」」


 前触れもなく突然明かされた情報に、ただただ絶叫するほかなかった。



TTTたちの読みは、普通にティーティーティーとかで大丈夫です。


そんなわけで、突如明かされた魔王様の正体! その時リザサは、ケティは一体・・・あれ、あんまり変わらない気がするぞー(棒


・・・次回も一週間以内投稿を目指す

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