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二章二十三話: 【速報】ビンタ終了のお知らせ

久々に連投です



「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」


「……いや、そんなに難しい質問だった?」

 エースの一言を受けた後、エミリーは硬直した。

 一切合切、微動だにしなかった。口をぽかんと開けて、呆けた表情のまま固まってしまった。

 やがてつむがれた言葉は、エースをして大層困惑せざるをえないものだった。

「……乖離してる、でございます」

「乖離?」

「エミリーとしての感情と、()としての感情とが、でございます」

 残念なことに、エース自身はエミリーの言わんとしてるところを理解できない。

 幸か不幸か、彼は個人の感情と建前とが対立した場合、前者を一時とはいえ()()()()()()ことが出来る。それはつまり、割り切らずに感情を一時自分の意識下に放り投げておくだけだ。ぶっちゃけれ納得なんてこれっぽっちもない。個人の中にある蟠りが、全く解消されていないのだ。諦めてるふりして、全然諦め切れていないのである。妥協? そんなもの野良犬にでも食わせて置け。

 本編では未だ一回のみしか使われていない思考法であるが、要するにこれはストレスフリーから程遠い。そんな状況であっても目的を遂行して、なお平時は普通で居られる精神性なのである。タフというより、どこか壊れている。

 対してエミリーが言っているのは、自分をあたかも別人のように考えて振舞うということである。ある意味においてそれは、竜王の納得の仕方に近いかもしれない。建前と感情が対立した際、感情で納得できないなら、最低でも建前だけ演技すれば良いということである。それを続けていけば、いずれその建前に自分の感情が説得される時が来ると、そういう妥協なのであった。

 こちらもストレスフリーからは程遠いが、根っこのところで両者は違う。

 後悔をする余地が有るか、開き直る構えがあるかといったところか。

 そういう意味において、エミリーの感情は複雑なところであった。

「……従者エミリーとしては、エース様は案外と好ましい人物だと思う、でございます。信賞必罰を何度体に平手で叩き込んでも聞きはしないけど、外れたことをするような人間ではないでございます」

「いや、平手については若干君の趣味も入ってるだろ」

「……」

「黙るなし、図星かよ」

 ただ我等が主人公は、あまりシリアスな空気を維持させるような男ではなかった。

 真面目に話してるのを遮られて、ちょっとむすっとするエミリー。そんな彼女に話しの続きを促した。

「少なからずお父様を思い起こさせる何かがあり、同時にお父様が求めていた何かを持っているヒトでもある。なるほど、お父様が気に入るのも頷けるというところでございます。でも――」

 ふと。

 エミリーは、顔を下に向けた。

 その表情は、目は、エースの視界に映らない。

 ただ、膝で握った拳の上に、雫がぽつりと垂れるのが彼には見えた。

「――だったらどうして、お父様は殺されねばならなかったというの?」

 震えるその言葉は、エミリーの――彼女(オエリシア)の本心の発露のであった。

 誰を恨む、恨まないではない。彼女の中にくすぶっていたのは、ひとえにそのことだけだ。

 父たる竜王の手紙に「エースを恨むな」と書かれていたことや、エース自身が竜王殺しに悔恨が残っていること。竜王の最後をバルドスキーから聞いたことや、()()()人物から聞かされたエースの竜王に対する思い。一部本編では省かれているのもあるが、概ねそういった事柄が。

 それらを受けて、なお彼女の胸に残る疑問が。

 決して爆弾にはなり得ないが、不条理な事柄に対する感情。

 怒りとも、悲しみとも、憎しみとも、諦めとも、何ともつかないその感情。

 自身にとって全てだった、己の父親を奪った運命に対するそれは、表面上わからないレベルではあったが、彼女の心を縛っている事柄に他ならない。

 しばし、無言が続く。

 震える彼女は、音もなく、ただ涙だけを流し続けた。

 さすがのエースもここで茶化すことはできず、ただ無言を貫いた。

 

 彼女が涙を流し終えた後、エースはエミリーのワイングラスに晩酌した。

「抗えないことには、抗わなくてもいい。ただ抗うということを忘れてはいけない。そのためなら、喜んで力になってやる」

「……?」

 赤くなった目元をこするエミリーに、エースが続ける。

「俺が、壊れそうだって。壊さないためだったら何だってするって。そのためなら一生付き添ってやるって、そういってくれた女の子に言われたんだけどね」

 というかカノンだけど、とエースが半笑いになる。

「それを聞いたときに、よく分からなかったんだけど重いと思ったんだよね……。たださ、それでも他の人がそういうようなことを言った時、王女様とか、ツナナギとか、他の子に言われたのとは違う何かがあったんだよ。

 少なくとも、カノンにも何某か、抗えなかった何かがあったんじゃないかなって、俺はそう思う」

 エースは、あえて語らない。

 カノンのその後悔を――彼女の故郷を、親友を、その仇の話を。エースに似ていたという、その親友の顛末を。語るのが難しいというのもあるが、それ以上に、カノンにとっては辛いことだと言うのもあるが。

 ただそれでも、彼は続ける。

「……何をどういいつくろったところで、結局竜王を殺したのは俺だし、竜王が俺をどう言っていたとしても、それは変わらないから。でも、望んでそうなったわけじゃない。過信してるわけじゃないけど、竜王もそれは同じだったから。だから俺は、そういう痛さとか、辛さだとかとはもう、オサラバできるような世界にならないかなーって、よく考えるんだけどね。

 ――見渡してみなよ」

 エースが、眼下の光景に視線を向ける。エミリーもそれにならって、“りゅーおーらんど”を見た。

 夜の平和に……、若干酔っ払いが暴走している気配はあるが、それでも共存している光景に、彼は思う。

「自分が楽しみたい、ていうのも動機としては大きいけど――」実に八割ほどを占める。「――それでも俺は抗うつもりだ。

 エミリーは、どうする?」

 トキター(シャンパンもどき)の入ったグラスを彼女に向けて、彼は誘う。

 エミリーは、赤ワインの入ったグラスをじっと眺める。

「……」

 無言でグラスを手に取り、エースのものに近づけようとする。

 接触しそうな一瞬で、その動作に躊躇いが生じた。

「……」

「どうしたの?」

「……誘導されているような気がして、少し腹立たしいから」

 だから、と言って、エミリーはエースの指し向けたグラスに、目を閉じ顔を近づけた。

 あ、とエースが言う前に、グラスの中身が飲み干される。

「……ほら、」

 そして、彼女は自分のグラスもエースに向ける。

「約束」

 飲むことを強要するように、彼女は続けた。

「貴方の目指すそれを――二番目でもいいから、私に見せること。それが条件」

 不敵に微笑むその言葉を聞いて、エースは目を見開いた。

 フラグを一つ潰して、何か重要な別フラグを踏んでしまったよう気がするものの、エース自身はそのことで驚いているわけではない。


 ただただ純粋に、エミリーが自分自身の要求を突きつけてきたことに驚いたのだ。


 彼女と出会ってから、思えばいつもエースのことばかり文句垂れてきたエミリーである。

 つきつけられるものは、生活の改善や遊園地の安全性などが主であり、こんなこと初めてのことだったのだ。

 だからエースも彼女にならう。

 流石に全部は飲み干せず、けほけほ咽りながら一口。

 何事もなかったかのようにグラスを戻し、無表情にそれを飲むエミリーに一言。


「……やっぱり、そっちの地の方が、個人的には付き合いやすいかな?」

「だが断る、でございます。――私は、従者(エミリー)でございます」


 そう言って微笑んだエミリーは、すぐさまいつもの無表情に戻った。



「さしあたって、私の収拾した情報を読んで、でございます」

「あ、あー、いや、それって一体どれくらい――」

「半年分、でございます」

「おうふ……」


 流れに抗うのは大変だよ、というお話。ただ、別に口説いたわけじゃねぇです。


 二章はまだまだ続きます。次はちょっと遅れるかも・・・? どちらにしろ一週間以内を目指します。

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