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二章十七話:護衛のお仕事

黒騎士ノットイコールディアさん。



『……そう何度も、いいように引き連れられても困る』

「まあまあそう言わずに。ほら、たまには遊びに行くつもりで。エミリーもついてこれないし、流石に一人で飛んで回るのもねぇ」

『そうは言っても、こちらは護衛なのだが……』

 こんな会話をしているのは、我等が主人公と全身鎧の剣士、ディアである。

 緑の発色をする鎧はどこか不気味で、かつ妖しい力を持っているように見え、周囲の注目を集めること必須であった。その腰には刀を一本差しており、戦闘スタイルが見た目通りの騎士タイプではないことを物語る。

 この人物の正体は、一見してわからない。全身鎧は顔面まで覆いつくし、発生される声はくぐもっていて、若干ボイスチェンジャーにかけられているような印象すらある。ただ目元から覗くまなざしが優しげなものであることを、エースは誰よりも知っていた。

 だからこそ、このディアがエースのことばを拒否することはない。

「じゃ、とりあえずまずはシャルパンのところから行きますか」

『……はぁ』

 軽くため息をついても、結局ディアはエースについていくようだった。

 広間を出た後、エースはディアの寝室にあてがわれた部屋に向かった。

 一人筋トレをしていたディアに「遊び行こっ!」と、まるでちびっこが友達を誘うようなテンションで声を掛けたのだ。一々外出時に鎧を着けなくてはいけないという誓約のあるディアが、渋面を作ったのは記憶に新しくない。我等が主人公が無茶を言うのは、わりと規定事項であるからだ。

 ディアが鎧を装着し終わるのを待って、二人は扉を何度も開閉。これにより、扉が入り口付近の場所に接続されるからだ。実際の空間的には結構距離が離れているため、ただしく、竜王城だからこその裏技と言える。

 そして二人が入り口に行くと、ちょうどウサミミメイドと遭遇した。

「あ、魔王さまお出かけですか?」

「そうそう」

「ししょーとデートはしないんですか?」

『……露骨に一体何を言ってるんだ?』

「あ、ディアさんチーッス。おつとめゴクロサマッス」

『別に何か服役していわけではないのだが……』

 なんとも変な体育会系ノリで挨拶され、ディアは目に見えて困惑した。それを見て、ちょっと楽しそうに笑うケティ。相手のリアクションを予想して意図的にやっているのだから、このメイド、大概いい性格している。

 ある意味では、だいぶこの職場環境に慣れたということでもあるだろう。

 最もエミリーに見つかれば「口調がなっていない、でございます」とディアに頭下げさせられるのも確定しているのだが。

「で、ケティはどうしてここに来たの? この間、新人教育もひと段落したと思ったけど……」

「流石に日中からサボリじゃないですので、そんな目でみるのはやめてください……。バルドスキーさんに頼まれていた『入場者数』の資料まとめたから、持ってきたまでですよ~」

「ほうほう、あれ、ケティがやってたんだ」

「ま、書いたのはリリアンちゃんですけど」

「結局仕事してないじゃん」

「いやん☆ です」

「語尾に『☆』をつけんの止めなさい。ハイエルフでもあるまいし、うざったい」

『容赦ないな……』

 獣人の砦に隠れて潜入している最中、どこぞの踊り子が「くきゅん☆!?」とくしゃみをしたか、その結果発見されて交戦しなければならなくなったかは、定かではない。

「ま、だったら早いところ行くといいよ。えっと……、二階に上がってすぐ行けるようにしておくから」

 言いながら、エースは黒いダンジョンスイッチを操作する。ケティがエミリーたちの話している部屋に行きやすいよう、調整してあげたのだ。彼女からすれば、せっかくゆっくり歩いていけるところを邪魔された形になってありがた迷惑ではあったが、エミリーにばれたら大目玉なのも確定しているので、営業スマイルを浮かべるだけに留めておいた。

「あ、あとたぶんナードたちにお使い頼まれるだろうから、頑張ってね~」

「うへぇ……」

『……女子がそんなうめき声を上げるもんじゃないぞ』

「ディアさんにそれを言われるのも何か違う気がしますけど……。じゃ、お二人ともごゆっくり」

「何がごゆっくりなんですかねぇ……」

 半笑いのエースの言葉を背に受けながら、肩を落として階段を上るケティであった。



※   ※    ※    ※



『……盛況だな』

「まあね~。そりゃヒトが入らなかったら、お給料的にまずいし」

『……そのしぐさは何だ?』

 親指と人差し指をつけて円を作り、三本指を立ててにやにや笑うエースをみて、ディアはちょっと困惑した。異世界で銭を示すジェスチャーが伝わっているわけではないが、彼の雰囲気からなんとなく嫌なものを感じたのかもしれない。

 それを意図的に無視して、エースは周囲を見渡す。

「まあでも、上手くいってるらしいってのを見れるのは、製作者として嬉しい限りかな?」

 親子連れを主として賑わう遊園地に、エースはどこか満足そうに笑った。


 遊園地やテーマパークと一言で言った時、果たしてその主な顧客層はどこか。

 我々のこの世界、実在の遊園地を前提に考えれば予想は難しくない。

 だがその知識がなくとも、施設のあらましを聞いた段階でどういったものにすべきかという部分は、論理的に考えて結論付けられる。だからこそ、バルドスキーが打ち出した基本戦略は、子供路線と家族路線。マダラもエースもそれに賛同した結果、“りゅーおーらんど”はそこに重点を絞った形になった。

 例えば“りゅーおーくん”をはじめとする、マスコットキャラクターの増強などである。「りゅーおーくん」「まかげー」「だんだん」「きゅーたん」「じんさー」「がいんがいん」など、それぞれ竜王、シャルベスター、竜王四天王をイメージして作られたキャラクターたちだ。

 戦争を知る世代は、マスコットたちの姿にかつての郷愁を覚え、新世代の子供たちはそれらのマスコットたちと戯れて楽しむ。そこのバランスは、玩具メーカーにつとめていた経験のあるマダラの器用さが発揮されているとみるべきか。もっともゆるキャラ一歩手前なのが多いところを見るに、今後新しくキャラクターデザイナーを募集する必要はありそうだった。

 戦火による爪痕がほぼなくなっていたとしても、その後の復興には並々ならない力が必要であったことだろう。そんなヒトビトにとって、“りゅーおーらんど”は正直、謎の施設と言ってよかった。ただし、悪感情を抱くことだけはないように運営されている。施設の利用者にはお金がかかるものの、日々の家計を圧迫しない程度に調整されている(強いて言えば、ポーションを何個か購入するくらいの金額か)。また、施設内部でもレストランをはじめとした普通の商売のみならず、ある意味異世界の遊園地だからこそな商売が行われていたりして、独特な洋装を呈していた。

 なにせ、ちびっこたちとムキムキな冒険者とかが一緒のアトラクションに入っていたりするわけである。

 まったくもって、独特な絵面といえた。

「ジェットコースターはナードの提案で、利用者がコロシアムに入るときの金額軽減させたり、逆に利用回数によって賞品出したりするチャレンジとかもやったりねー。あとは、そのうち大食いバトルとかもやるつもりだけど、そこのところどうかな?」

『……食べ物の無駄使いは駄目だろ』

「ま、そこは収穫量とかにもよるかな? 流石に貯蓄量に食い込むくらい消費しかねない場合はやらないさ」

 エースとディアは、今後の予定しているイベントについて話し合っていた。シハイニンとその護衛の二人はそれなりに目立っていたが、人ごみの中にあっては大声を上げられるほどではない。

 適当にぶらついている二人は、ふと、以前の“りゅーおーらんど”にはなかった石造りっぽい塔の姿を見る。

『……結局、あれは何なのだ?』

「“サイケデリックタワー”って、とりあえず呼んでる。由来知らないけど」

 ちなみに名付け親はマダラ・メイクトである。持ち込まれた異世界言語としては、酷く妥当なネーミングではあった。

 なにせこここそが。

「ナードに言われて作ったモンスター湧きの塔なんだけど、なかなかどうして倒すの大変みたいだしね~」

 二章十一話あたりで、かの魔法剣士が求めた施設だったからだ。

「せっかくだし、ちょっと覗いてみる?」

『……どうせ何を言ったって、覗く気のくせに』

「はっはっは、バレたか」

 どこか長い付き合いのようなものを感じさせるやりとりをしつつ、二人はその塔へ向かっていった。



ナード「切捨て御免ッ!」

スピーカースライム「くぁwせdrftgyふじこlp」

キャーナードサーンッ!

イニ「俺とやってること同じなのに納得できねぇ!」


次も一週間以内を目指したいところです。


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