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一章十九話:待ちわびたぞ、ジェットコースター!(後)

筆者「トキターでも飲んでリラックスしな? 君たちの事はしっかり書いてやるよ。ふっへへ・・・」

エース「面白い奴だ筆者、気に入った。ジェットコースターは最後に出してやる」




 つくりものみたいな青空の下、カフェテリアのような謎の施設のテーブルに、五人の冒険者パーティーは集っていた。

「……なあ、お前等。情報交換しようと思うんだが……」 

 リーダーの獣人の言葉に、項垂れた四人の男達は億劫そうに首肯した。全員の表情からは覇気がなく、どこか疲れた印象だ。

 数時間前、意気揚々と張り切っていた姿もどこへやら、である。

「まあ、とりあえずダンジョンの構造を整理しよう」

 言いながら、羊皮紙を取り出したリーダー。ゴブリン何人かの指摘を受けつつ、簡易の地図を描いていく。

「まず入った段階で見た時の構造だが、特にそれと違うってことはないみたいだな」

 竜王が残した秘密のダンジョン。

 わざわざ竜王直轄だったシャルベスターが攻略の依頼を出した段階で、気付くべきだったかもしれない。そのダンジョンが、おおよそ普通のダンジョンであるはずがなかったと。

「……部屋がない、というよりも、通路に対していくつか部屋が存在する、みたいな構造だな。いや、アレを部屋と言うかは知らなんが」

 まずこのダンジョンは、超巨大な敷地であった。その規模と言えば、まずもって彼らが経験したことのない広さを体感させる。いや、ダンジョンの総面積的には、一般的なダンジョンと大差ないのかもしれない。だが、普通のダンジョンにおける密閉間、閉塞感が全くない構造だった。

 吹き抜け――というよりは、まるでサーカスのキャンプか何かのような構造なのだった。

 そもそも天井すらはるか彼方上空にあり、閉所ですらないように感じる。

 そんな吹き抜けの敷地に、いくつものトラップ部屋のようなものが点在しているのが、このダンジョンの構造だった。

「これは何なんだろうな。……竜王様が、ダンジョンに設置するトラップを研究するためのダンジョンか何かってことだったのか?」

「リーダー、それにしてはこう、地面が舗装されすぎてやいないかい?」

「俺もリックに同意見だ。しかも芝生や街路樹まで綺麗に設置してあって、なんと言うか都を思い出すぜ」

「ゴブリンの都か」

「いや待て、むしろ都からちょっと離れたところじゃないか? 記念公園みたいな、そんな雰囲気に思う」

 酷く綺麗に整地されたこのダンジョンは、おおよそ彼らが体感してきたダンジョンの常識をぶちやぶるものであった。

 家畜ダンジョンのように食用モンスターが多数いるわけでもなく、かといってクエストダンジョン(戦士やモンスターハンターなど技能向上を目的とするダンジョン)のような強敵や凶暴なモンスターが居るわけでもない。むしろ生命の気配はほぼ無人と言っても良かった。

 だというのに、である。

 地面は無駄に綺麗に舗装されており、人が通行することを目的とした形状をしている。花畑は子供が好きそうな感じであり、カフェテリアのような何かをはじめとして、いくつか食料品やら武器屋やら何やら、とにかく人がここで生活するための施設のようなものすらある。ちなみにその大半に「テナント募集」という張り紙がされていたりするのだが、ダンジョン探索だけに集中している彼らの目には、そんな無駄な情報は入らないようだった。

 そんなわけで、現在全く稼動していないカフェテリアの一角を陣取っている彼らである。

 位置はそう、入り口からそう離れていない、しかし中央の噴水には程遠い場所だった。

「でも何だろうなぁ、この妙にゴーストタウンめいた街並み(?)は……」

「いやいや、ここダンジョンって言われてたでしょ」

「でもなあ、入るときに金とられるダンジョンなんて、聞いたことねぇよ」

 このダンジョンの入り口には、ポストのような物体が存在している。そこに「入館料:銀貨百五十枚」という指示が書かれており、従わないと施設に入れないのだった。

「生活費に食い込むほどじゃないとはいえ、今日の賭博分が全部パーになっちまったなぁ……」

「でも、やっぱりダンジョンだろ。一応、トラップ部屋……? クリアしたら、ポーション出てきたし」

「品質は?」

「良くなかったけど、多少は助かった」

「……お前はどういうトラップに遭遇したんだ?」

 書かれている地図の一角を、ゴブリンの一人は指差した。

「ここだ。ここにあったんだよ」


 その巨大なティーカップが乱立するような施設を目の当たりにして、男は頭をかしげた。

 一体これが何をするものなのか、一見して理解できなかったのだ。

 だが「まもなく動きますので、お乗りの方は急いでくださ~い」というアナウンス(!)がどこからともなく流れ、急いでカップの一つに飛び乗った。

 動き始めると、周囲共々、カップの乗っている巨大なお盆が回転する。

 なるほど、動き出すとはこういうことかと男は納得した。

 納得したが、これのどこがトラップ部屋なのかと頭をかしげる。

 しかし、その考えは甘かったと言える。

 ふと見ると、カップの中央には円形のテーブルが存在していた。

 そのテーブルの上には、両方向へ回すことができるという矢印(「⇔」を湾曲させた形)が描かれていた。

 もしや、これがトラップのクリア条件なのではないかと考え、彼はそれを動かした。

 クリア条件であるならばと、男はそれを力の限り、沢山回した。

 結果は……まあ、読者の皆様ならご想像できるだろう。華麗に花弁が散ることなどない。

 散々気分が悪くなった彼にとって、テーブルの上に現れたポーションはまさに救いの主だった。品質の良し悪しなど気にするのもおこがましいほどに。


「……で、そのトラップは品質の悪いポーションを出すためだけに、こっちが散々酷い思いをさせるものだったんだ」

「……まあ、船酔いとかには強くなりそうなトラップだな」

「リーダー、そう言うならアンタも一回やってこいよ」

「遠慮しておく」

 微妙な緊張感のあるやりとりを終えて、リーダーは次の報告者を募った。

「……誰も言わないか。じゃあ、俺が先に言おう。俺が行ったのは、この噴水向こうの丘の上にある――」


 巨大な船のようなそのダンジョン施設に、リーダーはまず浪漫を感じた。

 船のデザインが、その名に聞く「大海の魔獣」伝説に出てくる有名な船を模したものだったからだ。世界の海を征したとされるその偉大な船に、子供の頃の夢が踊った。

 だが、やはりその判断は甘かったと言える。

 確かにダンジョンの施設である以上、トラップを警戒してしかるべきであった。それでも形状が船であったため、せいぜい「この船が空中を飛び、空の怪物たちと戦うことになるのだろう」程度に考えていたのだ。

 その船が、巨大な二本の柱により大地に固定されていることに気付かずに。

 独特な固定具で体を椅子に(椅子?)しばりつけられ、リーダーの男は、船の挙動が自分の予想を超えるものだったことに驚いた。

 振り子運動である。

 そして、その運動が次第に膨れ上がっていき――嗚呼、なんともおそろしいことに、ゆったりと一回すれすれのところまで往復したのだ。

 現代人の価値観からすれば「その程度何だ」と言うかもしれないが、忘れるなかれ、ここは異世界。大地と共に生きる獣人族にとって、高所から空中に放り出されそうになるような感覚は、恐怖以外の何ものでもない。

 そして振り子運動が止まった後も、何一つアイテムが出てくることがなかったのが、彼にとって一番辛い結果でもあった。


「……お疲れ様です」「大変だったでしょうに」「ポーション飲むか?」

「まあな。安いのだけもらっとく……。あの船、大嵐でもないのに転覆するんじゃないかってヒヤヒヤさせられたぞ」

「ああ、さっき聞こえた遠吠えは、そういう……」

「狼なのに負け犬みたいなこと言うのも気が引けるがな」

 それ以前に船を支える支柱がミシミシいってたりしたのだが、どうやら乗っていた本人は気付いて居ないらしかった。

「……じゃあ、最後は俺達ッスね」

「残り全員か。何故バラバラに散らばらなかった?」

 三人は、顔を見合わせてため息をついた。

 一人が、地図の一角を指差した。その位置は噴水の向こう……現在位置から展望台のように見える、高い塔の方角だった。

「あれの、手前のちょっと曲がったところなんですけどね。それはそれは大きな建物でしたよ――」


 そのあばら家は、正直な話奇妙な出で立ちをしていた。

 一見すれば木造のオンボロ家屋なのだが、それにしては妙に大きい。しかも所々、石材を加工したような材質で出来ているようでもある。

 さらに、まだそれなりに暑い王国の気候から考えて無駄に冷えた建物でもあった。

 その建物の装飾――いたるところから、妙におどろおどろしい空気が流れ出ていたのは、気のせいではないだろう。

 この世界、霊魂や幽霊、悪霊といった概念は一応存在している。

 そう、「古いゴブリンの怨霊の呪いが~」とか、そういう話ならザラである。王都においても、女性や女の子ばかりが消えるという怪談とかがあったり何だり。更に言うと、何者かにとりついてそれを操る魔族「半霊族(バックノック)」がその代表例だ。いや、それでもバックノックはまだ生きているのだ。半霊と書くからには、半分生きている。だが同時に彼らは、半分幽霊でもあった。

 とうかそもそも、この世界における精霊という概念も一つの怪異に他ならないだろう。

 その建物は、広さよりも漂うわせるドロドロとした雰囲気こそが最大の障害と言えた。

 一人でこの大きさの建物を見て回るのは無理だ。そう判断した彼らは、全員で内部の調査をすることにした。だが見た目からして妙に恐怖心をあおる建物である。拒否感もかなりあったろう。だが、それでもきちんと挑戦するあたり、プロ根性があった。


「……で、中はどうだったんだ?」

「「「……」」」

 三人とも、一様に硬く口を閉ざした。

「「「……まあ、たいしたものはありませんでしたよ」」」

「そ、そうか……」「だ、大丈夫?」

「「「大丈夫だ、問題ない」」」

 三人とも、一様に死んだ魚の目で答える。コンマ一秒のラグもなく同時に口をそろえる彼らは、その言葉に追求を許さなかった。

 彼らがどんな醜態を曝したのかについては、筆者的にも誰得な描写を続けざるを得なくなるので、そんな苦痛とはオサラバさせてもらおう。

 さて、そんな色々と憔悴しきった彼らである。

 一通りの話しをまとめて、リーダーが口走った一言が、

「ここ、本当にダンジョンか?」

 これである。妥当な判断だと言えよう。

 ただしこの世界においては、この場所に該当する施設の名称が存在しない。

 ダンジョンスイッチにより構築されている以上、ここは混沌迷宮であると言うほかないのだった。

「……あるいは、トラップの実験場みたいなものかもしれないですねぇ」

「なんにしても、クエストとして見た場合、悪趣味すぎないか?」

「いや、わからねぇっすよ? もしかしたら、我々がまだ行っていない場所に、お宝が隠されてるかも――」

「どんな宝物庫だよ。いくらなんでも悪趣味すぎるだろ」

 言葉通り、彼らが巡ったのは、とりあえずこのダンジョンを入り口から見回したとき、三方に位置していた大型のものだ。まだまだ未知のトラップ……トラップ? はそこそこ存在しているようである。

 頭をかかえて唸った彼ら。そして、リーダーの男が決断する。

「……とりあえず、高いところから見下ろしてみるか?」

 その判断こそが、自分達の三半規管を地獄へ導くものだと知らずに。


 彼らの見据える先には――超巨大な鉄のレールが聳え立つ、トロッコのようなものが存在した。



エース「ジェットコースターが出てくると約束したな」

筆者「そうだ主人公、だ、出してやってくれ・・・」

エース「あれは嘘だ」

筆者「えええええええ!?」


次回は一週間以内に投稿できると思う、でございます。


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