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一章九話:さようなら勇者、こんにちは魔王

竜王「(伏線とか)投げっぱなしジャーマン」

「エースよ。蘇る気はないか?」


 精神世界に響き渡る竜王少年のそんな言葉に、エースの思考は完全に停止した。

 十秒ほどかけて復活したエースは、多少思考回路の回転が悪いものの、当然の疑問を口に――。

「……は?」

 あ、口に出来なかった。

 感嘆詞の方が、疑問文よりも構築しやすかったせいかもしれない。

「……えっと、何を言ってるの? 蘇る? そんなバンバン出来るものなの?」

「普通は無理だろうが、お前は我輩を殺しておるからの。……ん? バンバン? もしやお前、経験があるのか?」

「まあ――」

 正確には復活ではないのだが、転生だの異文化圏からやって来ただの説明するのを省いて、彼は軽くお茶を濁すことにした。

「――まあ、一回だけなら」

「となると、お前には別な神の加護でもついておるのか……? となると、破壊神様の加護で復活できないかもしれんなぁ、ううむ……。いや、まあ大丈夫か? あの方なんでもありだし」

「え、破壊神?」

 破壊神、とは。

 王国の国教として信奉されている「エスメラ教」、そのエスメラ教において、女神の巫女、聖女「エスメラ」の敵対者として存在するものである。

 勇者たち四人や聖職者、冒険者(ダンジョン探索を生業とするもの)たちは、この女神と聖女「エスメラ」の加護を持って、多かれ少なかれ体や能力を強化されている。

 それに対して破壊神は、主に魔族の間で信奉されているものだ。特に宗教として存在するわけではないが、魔族たちは破壊神へ、己が魂を誓っている。

 エスメラ教が先なのか、破壊神の教えが先なのか。その点は定かではない。

 しかしその宗教的対立構造が、結果的に現在の人間と魔族との対立構造に連なっているのは、想像するに難くない。

「……って、その話しから考えたら俺ってもう、女神様の加護を受けているわけだし……。復活は無理なんじゃね?」

「そっちは大丈夫じゃ。まあそれとは別に、お前の死体は『救済のための女神への祈り』は捧げられていないようだが」

「まあ、やっぱりというか予想はしていましたけどねぇ……」

 死者の魂に対して、女神へ祈りを第三者が捧げることにより、その魂は女神の元へいけると考えられている。祈りを捧げられなかったものは、死した後に破壊神の手で永遠の拷問に曝されることになるのだとか。

 要するに、天国と地獄である。

 陰謀で殺されたことから、自分がそういった処置を受けていない確信のあったエースであったが、それでも多少は落ち込んだ。

「まあ、気を落とすでない。なんか死体も滅茶苦茶酷いことになっておるようだが、気にするな」

「今、何だかサラっとすんごい情報を教えられたような気がすんだけどッ!?」

「あー、いや、まあ……。うん、お前も何というか……。ドンマイ」

「心底同情したような目で見られてる!? というかそれ以前に、ドンマイとかアンタ知ってるのかよッ!!?」

「まあそんな話しは置いておいて。で、どうじゃ? エース」

「急に話しを戻すなっての。……で、えっと? それは出来るか出来ないかじゃなくて、意志の確認でいいんだよな」

「うむ、当然だ」

「ん~」

 唸ること、一秒足らず。

「とりあえず俺が死んだとなると、カノンを泣かせることになるからなぁ……」

 おや?

 てっきり「ジェットコースターに乗っていないからなぁ」とか、そっちの理由が最初に来るかと思ったものだけれど。

 ここで名前が出てくる辺り、案外とエースにとって、彼女の優先順位は高いらしい。

 竜王もそれを意外に思ったのか、一瞬驚いたようだ。

 しかし、すぐに顔をニヤニヤさせる。

「うむ、お熱いなぁ」

「一年くらいしか一緒に居なかったけど、なんだかんだで一番、一緒に居たしな。どういう理由で俺なんかを好きになったかは知らないけど」

「それを聞くのは、無粋というものだぞ」

「そういうものなのか? まあ、アレが泣いてるところなんて想像も出来ないし、見たくもないし、あと絶対にないとは思うけど万が一、億が一、この世界でデ○ビタが自然発生するくらいありえない確率だけど」

「デ○ビタとは何だ?」

「カノンが」エース、ガン無視である。

「カノンが、他の男になびいたりしたら、それはそれでムカツク」

「はっはっはっはっは」

「……何だ? その馬鹿にしたような笑いは」

「いや我輩、馬鹿にしているのは間違っていないが、どちらかというと、お前の捻くれ具合が面白いというかな。はっはっは」

「捻くれ?」

「素直に好きだと言ってしまえば良いではないか、あの時のように。何をこまっしゃくれてる」

「……それに、」

 エースは強引にカノン関係の話しを終わらせた。

「セイラの命を奪った奴等を、そのまま野放しにしておくのも拙い」

「まあ、確かに。幼子の命を奪うというのは――」

「それも大きいけど、重要なことがもう一つ。……セイラが死んだら、たぶん、この世界の技術進歩が五百年は遅れるんだ」

「お? そ、そんなになのか?」

「うん。話した限り、そんな気がしたんだよね。直感じゃなく、論理的に」

 旅の途中、エースはセイラの開発する魔法具や魔道具、開発したいと考えていたらしいものを何度か聞いている。カノンはお姉ちゃんモードで取り合っていなかったが、元々が現代文明人だったからこそ、エースは彼女の先進性を見抜いていた。

 たとえ小学五年生の知識であっても、何のヒントもなくアニメーションの基本原理を発見している人間が、それを再現する仕組みを考えてしまえる人間が、どれほどすごいかくらいは理解できた。

「そんな大魚をみすみす逃すような人間が、貴族だのなんだの言って踏ん反り返ってるのは、あんまり世界的にプラスじゃないと思うからね。……王様が直にあの話を聞いて居たら、また違った展開になったかもしれないけど」

「まあ、な。あやつも変わっているから」

「というか、あのフランクさと柔軟さは日本人かと疑うほどなんだよなぁ……。まあ、それでもやっぱり微妙に違うんだけど」

「ふらんく? にっぽんじん?」

「あー、いや、こっちの話し。ともかく、色々理由はあるから、さ。生き返りたいのかと言われれば、当然生き返りたいよ」

「うむ。ならばよし。我輩からは、楽しい世界にしてくれというところじゃ。では、破壊神様」

「……は?」

 それは、唐突に現れた。

 空を見上げた竜王。

 その視線を追い、エースも見上げる。

 そこにあったものは――。


 目が潰れるほどの、閃光。


「ぎゃああああああああああッ! 目が、目がああああッ!」

「ほら、落ち着け。ここ魂の世界だし、我輩らは別に負傷しないぞ?」

「マジかよッ! いや、本当にマジかよッ!」

「コーラと同じじゃ。数秒でなれる」

「信じるからなッ! 復活して目が潰れてたりしたら、死んだ後またぶん殴りにいくからなッ!」

「その程度で済ませる辺り、我輩、お前の懐の深さに脱帽だ……」

 乱心気味のエースと、竜王との会話である。

 そんなやりとりを、くすくす笑う破壊神。

 エースが失明すると錯覚するほどに強烈な光を放っているその姿だと描写の仕様がないので、ここは筆者が特権的に、ある程度光量を落として描写することにする。

 といっても、全身像はつかめない。

 人型だというのは理解できる。

 翼はない。

 輝かんばかりの全身は、純白を通り越してやはり閃光としか言いようがない。

 破壊神は、エースに声をかけた。

『――大丈夫なようなので、蘇らせましょう。勇者エースよ――』

 その声は、破壊神という名に大きく反して、慈愛に満ちた女性の声だった。

 閃光で視界が麻痺していたエースだったが、徐々にその姿を捉えられるようになる。

 まあ、捕らえたところでさっき筆者が書いた通りなのだけれど。

 それでも、エースはその相手がにっこり笑ったような気がした。

『――頑張ってね~んッ!――』

 やけに軽い台詞と共に、破壊神は、間違いなく、右手の親指を上に立てた。



※   ※    ※    ※



「おはようでございます、魔王様」

 とにかくそんな感じで、エースは現世に復活したのだった。


破壊神「姿が見えちゃ、演出力不足よねッ!」

竜王 「我輩には普通に見えるようにしてあるあたり、破壊神様、趣味が悪い」


次は一週間以内に投稿できると幸せです。

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