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仲間

 二人は、噴水広場から少し離れたカフェテリアへ来ていた。少し奥の方へ腰掛け、レイドはコーヒー、女性の方は紅茶を頼んだ。端から見ればお似合いのカップルだろう。

「それで?君は何者?」

 何故か少し楽しげな口調で、カップを持ち上げ一口飲んでから尋ねるレイド。

「私は、シリア・マグレーナ。何者って程でもないけど、只の旅人よ。あなたは?」

「俺は、レイド・ナーグス。ハンターをしている。まあ君と一緒で旅人みたいなものかな。」

 このハンターというのは、凶悪なモンスターや指名手配犯などを倒して金を得る職業だ。殆どのハンターは世界各地を回る為、旅人となんら変わりはない。

「成る程ね。それであんなに強かったのね。武器は持たないの?」

「剣を使うんだけどね…、この前モンスターを斬った時に折れちゃってさ。」

 レイドは苦笑いを浮かべた。この世界では武器が主流になっている。魔法というものは比較的無い。

 そして、今度はレイドが質問する。

「それで…シリア、だっけか。何故俺に近付いた?なんの目的がある?」

 打って変わって真剣な目で尋ねる。

「意外と鋭いのね。結構、のんびり屋さんに見えるんだけど…。」

「まあ…、普段はね。」

 今度は笑顔に変わる。コロコロ表情を変えるレイドだが、一切隙を見せない。それがレイドの強さを表していた。だからこそ、シリアも何かを期待していた。 

「あなたに近付いたのは偶然だけど、あの動きを見て目的が出来たわ。」

「その目的とは?」

 シリアは少し間を空けてから口を開いた。

「私と一緒に、バージルーズを調べて、潰して欲しいの。」

「こりゃまた大きな目的だな!バージルーズといえば五大惑星全てで耳に入るが、一切謎に包まれた組織だ。噂によれば、ジェルラードと同じ程の勢力を持つ、って言われている。まあ一般人は知らない人が多いだろうけど。何故そんな奴らを敵に回そうとする?」

 レイドは何故シリアがバージルーズという組織を知っているのか、また何故敵対しているのかが解らなかった。バージルーズという組織は、レイドでさえ少し耳にしていた程度。しかし、このシリアは他に何か知っている、と確信出来た。

「それは……貴方には関係ないわ。」

 シリアが俯く。あの気の強そうなところが、今は全く感じられなかった。それを見たレイドは頭を掻く。

 

「一緒に潰せ、と言っときながら、目的は関係ない、か。そんなんじゃ今まで誰も納得しなかったろ。」

「……そうね。今の、無かったことにして。」

 そう言って、シリアは席を立ち、店を出ようとする。

「待て待て!誰も俺が行かない、なんていってないぞ!」

「え!?」

 レイドの意外な言葉に、シリアも驚き、振り返る。レイドは笑顔でシリアを見ていた。

「俺に会えた事を感謝しろよ。生憎俺は、厄介事は嫌いじゃないんでね。」

 シリアは、ゆっくりとレイドに近付く。

「本当に手伝ってくれるの?下手すれば死ぬかもしれないのよ!」

(死ぬって……そこまで危険!?)

 と、レイドは思ったが、口には出さなかった。

「……まあ、シリアが何を知っているのかは知らないけど、一人で行って死なれてもなんか俺の責任みたいだし。それに!こんなお姫様を危険に晒す訳にはいかないだろ。」

 その言葉で、シリアがレイドの前で初めて、小さな笑みを浮かべた。それにシリア自身が驚いた。

(笑顔なんて、2年振りかしら!)

「私はお姫様なんて柄じゃないわ。……でも、ありがとう。レイド。」

「うん!素直で宜しい!でも、そうなると俺も剣が必要だ。少し寄り道するぞ。」

「ええ、別に今すぐに、って訳じゃないから大丈夫よ。」

「じゃあ行くか!」


 二人は店を出て大通りを歩いている時、シリアが声をかける。

「それで?何処へ向かうの?」

「エルリールだ。」

「様々な鉱物が手に入り、年中極寒の惑星、エルリール、か。」

 そこはシリアも何度か行ったことがある場所だった。あまりにも寒くて、遠くまでは行かなかったが…。

「俺が行くのは、その中でも、闇商売をしている場所だけどな。」

「聞いたことあるわ。珍しい鉱物や武器を高値で売りさばいているスラム街があるって。」

 

「そこは、法なんてモノは通用しないからな。販売が禁止されている物も手に入れることが出来る。その分、厄介な奴らが多いから気をつけろよ。」

「平気よ。私なら。」

「…そうみたいだな。」

 レイドは何の不安もないような顔をしているシリアを見て、そう呟いた。


 エルリールへ向かうため、二人が向かったのは、五大惑星を行き来するための宇宙船の発着場、宇宙航空ステーションと呼ばれる場所。 

 ここは、商人やハンター、旅行者などの一般人が移動する為の場所だ。時折、ジェルラード戦艦などの特別な宇宙船も来るが、入り口はそれ専用の物が作られているので、一般人が乗ることは出来ないようになっている。

 レイドは受け付けに行き、エルリール行きの予約を済ませた。

「タイムゲートBから14時出発。あと1時間だ。どうする?」

 このタイムゲートは宇宙船まで一気にワープで移動出来るため、すぐに入っても、宇宙船の中ではやることがない。

「そうね。しばらくこの辺りを歩きましょ。」

「そうだな。」

 二人は、ステーションの中を散策し始めた。この宇宙航空ステーションは、大抵の星ではいろんな店を構えている。特に、人の多いこのテトランスでは、様々な店が並び、大体の物はこの中で手には入る。


 10分くらい歩いただろうか、後ろから、レイドを呼ぶ声が聞こえ、二人は振り返った。そこには、長い槍を持った、30代ぐらいの男が立っていた。

「やっぱりレイドじゃねぇか!」

 見境無く大声を上げる。近くを歩いている人も、何事かと振り返るぐらいだ。

 顔は怖そうだが、悪い人には見えない。

「フランか!久しぶりだな!」

 レイドもフランと呼んだその男を笑顔で迎える。

「知ってる人?」

 レイドの対応を見たシリアが尋ねた。

「ああ。こいつはフラン。俺と同じハンターだ。」

 

「オイオイ、レイド。いつからこんな美人な彼女が出来たんだ!?」

 フランは、マジマジとシリアを見ながら言った。それにシリアは困惑することなく口を開く。

「そんなんじゃないわ。レイドには私の用事を手伝ってもらっているだけよ。」

 シリアの言葉に笑みを浮かべたフランは、レイドの肩に腕を掛ける。

「何にしても、良い奴を見つけたな!コイツはハンター界でも一、二を争う強さを持つ。まあ少しのんびりしてる所もあるが、頼りになる奴だ。必ず役に立つぞ!」

「それはお前も一緒だろう。困ってる奴がいたらすぐ助けようとする。まあそのせいで何人の女に騙されたかは黙っといてやるよ。」

 レイドはフランの腕を振り払いながら皮肉った。

「んなことはいいんだよ!」

「それより、フランもどっか行くのか?」

「ああ。エルリールの部隊からモンスター退治の依頼が来てな。全く!もう少しそれぞれの惑星の警備部隊を強化してほしいぜ。弱い奴を何人集めてもなんにもなりゃしねぇ!」

「それは同感だな。」

 レイドは人質になったときの事を思い出し、大きく頷いた。

「そうね。実際にあの使えなさは問題ね。何かの争いを治めているのはハンターだって聞くし…。」

 シリアも二人に同意した。

 警備部隊とはそれ程のレベルである事は大体の人が知っている事実だ。

 

「まあ、そんな事より、俺達もこれからエルリールへ行くところなんだ。宇宙船の中までは一緒だな!」

「そうか!じゃあもう行こう!あと20分で出発だ。続きはその中で話そう!」

 フランがそう促した後、三人はエルリールへ向かうため、タイムゲートBへと歩いて行った。

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